第24話 レオ様を救う愛の行動計画書
翌朝
パトリシアの森、魔力の泉傍、キャンプ地内
「おはようございますにゃ!レオ様~」
まだ日の出が始まったばかりの早朝。テントから飛び出し、うたた寝をしていた俺に全力で抱き着いてくるネコ娘のミーア。
「お、おはよう」
寝ぼけ眼をこすりながら、朝の挨拶をする俺。
ほぼ寝てない朝の身体に、ミーアの肉付きの良いやわらかい感触はとても気持ちがいい。(特におっぱい)
……いけない。朝おっきしそうなので、一旦このホールド態勢は解除しよう。
「おはようございます!レオ様!ミーア殿!」
すでに起床し、ラジオ体操みたいなことをしていたクマオの大きな声が耳に響く。目覚ましにはちょうどいい。
ちなみに昨晩、神との漫才を終えた俺は、しばらくして急激な眠気に襲われたため、クマオと警護を代わってもらい、仮眠をとらせてもらった。
さすがになんだかんだ、疲れていたと思う。俺も。
「僕はいっぱい寝ないと力出ないのに~。こんな早起きとか無理だよ~」
なんかぶつくさ言いながらチチュもテントから出てくる。
まだ脳みそが働いていない状態の、ふわふわしている寝ぐせ銀髪少女はとても可愛らしい。
「レオ様、おはようございます」
テントではない方向から挨拶をされ、え?ってなる俺。
キザクラだ。どうやら彼女はすでに起床を終えていたらしい。
「朝食の準備ができましたので、どうぞこちらへ」
そういえば、さっきから妙にいい匂いがすると思ったら、そういうことだったのか。さすがキザクラだ。メイドの鑑だと思う。
ちなみに説明しておくと、このキャンプ地は魔力の泉の聖なる守りの効果が及ぶ範囲にあるため、魔物や蟲の類は入ることができない聖域となっている。
以前、エロンティーカ7世が魔力の泉の水を汲めないと言っていた理由がそれだ。魔を寄せ付けない不思議な力が、この地には働いている。
「ああ、ありがとうキザクラ。いつも、本当に助かってるよ」
「い、いえ。仕事です、から」
なんかちょっと顔赤くなってない?アマネではない状態だととても地味な彼女だが、照れる姿は普通にかわいいと思う。
あ、あっち行っちゃった。
「朝飯♪朝飯♪たのしみにゃ~」
朝日が少しずつ昇り始め、森に降り注ぐ日の光が明るさを増してくる。
旅に出て2日目の朝。目的地のカスパラ渓谷まで普通に行けば残り1日と半分程で到着する予定だ。
腹ごしらえをしたら、すぐに出発しなければならない。時間の猶予はあまりない。
〇●〇●
「今朝、アマネからある提案がありました」
「え?」
朝食のパンをほおばりながら、俺はそれを言ったのがキザクラであることに驚いた。確か、アマネはキザクラのこと知らないと言っていたはずだが……。
「キザクラ。アマネのこと、わかるの?」
率直に聞いてしまう俺。
「今朝初めて知りました。一応、自分が二重人格じゃないかと疑っていた節は元々ありましたので、受け入れるのに時間は必要ありませんでした」
キザクラは坦々としている。内心、本当は穏やかじゃないのかもしれないが、それを表に出すような彼女ではない。
……いや、そんなことないか。
「提案を紙にまとめましたので、皆さんご覧ください」
朝食を摂るために設置した簡易な机の上にその紙を広げるキザクラ。
パンを口に運ぶ動作を止め、その紙に書かれた内容を確認する。
【紙に書かれた内容】
拝啓。親愛なるレオ様とそのご一行様。わたくし、アマネでございまーす。いまわたくしはそちらには出られませんので、今後の行動計画をキザクラに伝えましたから、是非参考にして、というかその通りに動いていただけますと助かりますわ。以下、こんな感じの予定になります。どーん(原文ママ)
レオ様を救う愛の行動計画書(序章)
行動計画① レオ様とミーアさんをいちゃいちゃさせるため、これからなるべく二人っきりの時間を作ってあげること。
行動計画② わたくし(キザクラ)とチチュさんとクマオおじさまは、基本的にレオ様から先行して索敵、情報収集にあたり、暗くなる前に再び合流すること。
行動計画③ キザクラはレオ様にあんなことやこんなことの秘密を包み隠さず少しずつ暴露すること。なお、他のだれかに代わりにバラしてもらうことも可とします。
異論は認めませんわ。レオ様をお救いするために、やったほうがいいと思いますわよ。
ていうか、やれ。
ああ、大丈夫ですわよ。荷物の中にお互いの位置情報を把握する魔法アイテム、入れといてあげたから。何か察したらお互い駆けつけてあげてね♪
それじゃ、次もまた見てくれますわよね?じゃーんけーん……まったねー♪ウフフフフ
けいぐ
いや、キザクラちゃん。すごい真面目なのはわかったけど、一言一句言われたまま書いたでしょ、これ。
小ネタまでまぁ、ご丁寧に……。最後の文字だけちょっと力抜けちゃったのかな?
「異論はないにゃ!みなの衆!これは、絶対順守にゃ!」
ミーアのテンションが爆上がりしている。相変わらず食べながらしゃべるので、なんか色々飛んでいる。
「異論しかないでしょ!なにこの計画!ありえない!」
「私も書いてて泣きそうでした。特に、秘密のくだりは……いやん」
「先行してはレオ様をお守りできません!私は反対です!」
ミーア以外大反対だ。まあ当然っちゃ当然か。
だがこの計画、実は意外に悪くない内容だと思う。俺とみんなのスキルを少しでも上昇させ、これからの生存率を上げようという作戦。
ま、まぁこんなに計画的にやって、愛的なものを基本とする俺たちのスキルが発動させられるのかっていう疑問は少々ありますけどね。
ただ、やってみる価値はありそうだ。
「そもそも猫娘だけで獣王様守れるの?やられちゃったら本末転倒じゃない。しかもアンタも蟲嫌いじゃん」
チチュの意見はもっともだ。俺、なんも戦えないし。やっぱ不安だ。
「ラヴパワーがあれば、万事解決にゃ!」
俺の任務は重大らしい。溺愛パワーを作らなければ、俺たちに明日はない。
「不安はあるけど、俺はこの提案に賛成だ。やっぱりこの先の事を考えたら、リスクをとってでも戦力の底上げは必要だと思う」
能力の上げ方はお察し。具体的なやり方は未だによくわからんが、とにかく愛をばら撒くしかない。
「みんなで笑いあえる日々が続くように、いまはこれからのことを考えて、アマネの提案に従おう!」
かっこいい事言ってるように聞こえるかもしれないが、これ、ミーアとイチャイチャしたいから皆とりあえずあっち行ってて!という意味と同じだ。
ほんと、なんておかしなスキルにしたんだよ、あのじいさんは!使いづらくて仕方ない。
「獣王様がそういうなら…」
「クマオ様。私たち蟲ダメなので、守ってくださいね」
「ミーア殿!レオ様を必ずや、お守りください!」
いいんか、本当に。これでいいんか、俺。
「レオ様のお•ん•にゃーーー!!!」
まだ覚えてやがったか!もうそれ忘れろって!
「(あんなガサツな女、獣王様のタイプなわけないよ。絶対獣王様は僕みたいなロリっ娘超絶美少女が好きなんだから。顔見ればわかるんだよ。ふふふ)」
「(あんなわかりやすいバカ女がレオ様の好みのはずがないわ。レオ様は奥ゆかしくて聡明でちょっとエッチで大人な雰囲気の女性が好みのはずよ。あん)」
……チチュとキザクラの心の声は、聞こえない。
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