第10話 決着……なのか?

「うおおおおおおお!!!」


 クマオの超突進から、再び戦いの火蓋は切って落とされた!


「っとぉ」


 リゼは回避を判断していた。クマオの猛進を半身で躱す。


 バルゴスに対して先ほど繰り出したカウンターのような攻撃を選択しなかった。


 さすがに今の状態のクマオのタックルは危険だと判断したのだろう。


「ミーア!援護!」

「わかっとるがにゃ!!」


 ミーアの身体が一瞬光を発する!


「っが!!」


 ドォーンという雷鳴とともに、リゼを脳天から貫く雷撃が炸裂した!


 よし!入った!


 ミーアお得意の無詠唱雷魔法だ!威力も申し分ない!


「ミーア!連撃!」

「もうまとめていくにゃ!」


 当然一撃入った程度で倒せる相手じゃない!間髪入れるな!手数で圧倒するんだ!


「荒れ狂う雷神。無慈悲に猛り、狂騒の宴に鳴け」


 これは!範囲内の敵に無差別で雷撃を展開する、あの大魔法!


 ミーアの魔力が増大する!


流星雷撃爆ライジングスター!!いっけにゃー!!」


 流れる星のような雷撃が不規則な軌道を描き、強烈な複数の雷がリゼに襲い掛かる!


 あれだけランダムに降り注ぐ魔法攻撃だ!いくらリゼと言えども対応するのは苦労して……


「奪え。我が魔剣ドラム•アブソリュート!」

 

 発生したすべての雷がリゼの愛刀へと次々と吸収されていく!


 帯電した黒い刃が唸りを上げる!


「そら!お返しだ!」

 

 雷気を吸収しきった魔剣を一閃するリゼ!


 ドゴォーン!ドゴォーン!と直線状に俺たちに魔力の集中した強雷撃が迫る!


「わ!ヤバいにゃ!」


 ミーアが慌てる!

 防御が間に合わない!避けるしか……!


「任せろ!」


 バルゴスが叫ぶ!雷の軌道に立ちはだかる!


「はああああああああ!!!!」


 差し迫る3本の雷柱を、魔力の集中させた剣閃で全て消し去るバルゴス!


 雷切るとか、すごすぎぃ!


「余所見してんじゃねぇぞ、雑魚が」

「!!!!」


 いつの間に!?間合いに入られている!

 マズい!!


「まずは1人目」


 リゼの無常なる魔剣の一撃が、俺を真っ二つに裂き、血飛沫が輪舞のように舞う。


 と、彼は思っていただろう。


 だが、そうはならなかった。


「なん……だと……」


 振り切った魔剣。捉えたつもりでいただろう。


 だか、リゼの魔剣は、俺を切り裂く前に、粉々に砕け散っていたのだ!


「フッ。わたしの魔法を吸収しようなんざ、100年早いにゃ!」


 勝ち誇るミーア。

 雷になにか仕込んでいたのか!それともそういう性質なの?


 よくわかんないけど、ミーアさんもすげー!


「くそが!!」


 魔剣を金繰り捨て、俺に殴りかかってくるリゼ!だが、


「!!」


 すでに敵への接近を完了していたバルゴスの剣技・火炎斬刃バーンストライクがリゼへと襲い掛かる!


「ちっ!!」


 態勢を立て直そうと一度間合いを取り直すため、後方へとジャンプするリゼ。


 だが、それは悪手だ!蝙蝠野郎!


 ドゴォォォォオオオン!


「がはぁ!!!」


 激しい衝撃音とともにクマオの会心のタックルがリゼへと炸裂する!


 獣人化したときに喰らった一撃とは比較にならない威力のはずだ。


 さすがにダメージはあるはず!


 怒涛の攻撃で警戒を怠ったのだろう。それで、見落とした。


 先陣を切っていたクマオが気配を消し、最大の一撃を叩き込むチャンスを伺っていたことを。


 最初の突進が躱されることは折り込み済みだった。


 実はバルゴスの回復を待っているときに打ち合わせていたのだ。


 彼が身を隠す特技を持っていることを聞き、この作戦を思いついた。


 うまくいったのは偶然だ。だが、


 このチャンス、逃しはしない!


「兄さん!」

「ああ。我が愛剣マトリクス。開眼せよ」


 自身の剣に語り掛けるバルゴス。

 鋼色をした愛刀が、薄空色の刀身へと変貌を遂げる。


 ああ。そうだ。これは、俺が唯一このゲームで全滅した時のフラグ。


 彼の剣は二種混合剣。表向きは炎を操る炎剣。だが、その真の姿は


「集約せよ!」


 周囲の空気が一瞬で冷気を纏い、バルゴスの愛刀へと流れ込んでいる!


 そう、これこそが


「奥義!『氷尽乱舞アサルトブリザード!!』


 ヒュオオオオオオ!


 きた!この音!バルゴスの愛剣に氷点下の冷気が集結する。


 パキパキと音を立てながら、悪魔的な冬将軍が攻撃の合図を待っていた。


 さ、さみぃぃぃ!!


 そして、リゼへと向けて軽く下からその刀身を振り上げる。


 ヒュゴオオオオォォォォォ!!!!


 前方の全てを覆いつくすかのような暴風雪がいきなり発生し、俺たちの視界は真っ白になった。


「……捉えたようだ」


 なにも見えない。だが、バルゴスにはわかっている。


 そう、冬の嵐を対象者に向けて発生させ、相手を侵略するというのがこの技の特徴。


 ものすごく範囲の広い攻撃。


 だが、ただの激しい風と氷雪だけで敵は倒せない。


 この技のすごいところ。それは


「うがああああああ!!!!」


 リゼの絶叫が何も見えない冬の嵐の中で響き渡る。そりゃそうだろう。


 バルゴスの放つ奥義の氷雪は、のだ。触れた瞬間に凍傷となり、壊死させるおぞましい技。


 それは、通常の人間であれば到底、皮膚が耐え切れない。


「さあ、とどめだ」


 バルゴスが剣を真上に構える。すると、リゼを覆っていた暴風雪が全て上空に集まりだす。


 集まった氷雪は結合し、自身の形を禍々しき巨大な氷塊へと変貌させ、リゼの命を刈り取る準備をした。


 リゼは至る所に傷を負い、動きを完全に止めている。これは、勝てる!


「さらばだ、リゼ・シュナイダー」


 バルゴスが剣を振り下ろす。上空からまるで超巨大隕石のような氷塊がリゼに向かって降り注ぐ!そして


「キエエエエェェェェェェェ」


 蝙蝠のような断末魔。氷塊はリゼの頭上を覆い隠し、激しい衝突音とともにメキメキと地面へとめり込んでいくのであった。


————————————————————


【●あとがき●】


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