第5話 過去⑤ ~銀色の光~
茂みから姿を現した兵士達はどうやら四人組のようだった。
「っ!!!」
俺は彼らが出てくると同時に走って逃げようとした。
しかし、ここまで逃げ続けてきた疲労と足場の悪さも相まって足が絡まり、盛大に躓いた。
「うあっ!」
うめき声を上げて地面に倒れ込む。
当然、兵士達がその音を聞き逃すはずがなく、彼らはこちらを見つけると銃を向けて叫んだ。
「止まれ!撃つぞ!」
俺はその声を無視して立ち上がると、再び逃げ出そうとした。
兵士達と俺の間にはそれなりの距離があった。
だから俺は、子供と大人とは言え、走れば森の中に逃げ込めると考えていた。
だが、ガァン!と一発の甲高い炸裂音が山の中に響いた。
それが銃声だと認識する前に、背中に思いっきり蹴られたような衝撃が走り、逃げ出そうとした俺は再び地面に倒れた。
(えっ!?な、何が・・・!?)
突然の衝撃に訳が分からずにいると、今度は腹部からじんわりと痛みがこみ上げてくる。
そこに手を当ててみると、生暖かくて赤黒い液体がべったりと手についていた。
「はあっ、はっ・・・!」
動揺と痛みで自然と呼吸が荒くなった。
その間に倒れた俺を兵士達が取り囲んだ。
彼らは俺を確認すると話し始めた。
「銀髪でもないし、女でもありません。ただの子供ですね」
「そうだな。だが子供が一人でここまでこれるとも考えにくい。このまま探索を続行するぞ。先に行け、俺はこいつを始末してから合流する」
「了解」
兵士達の話し合いが終わると、隊長と思われる兵士を一人残して、他の兵士は森へと向かっていった。
俺とその隊長らしき兵士がその場に残される。
「・・・」
「はっ・・・!はっ・・・!」
隊長は、荒い息遣いで地面に横たわる俺を無機質な瞳で俺を見つめると、手にしていた銃を突きつける。
引き金に指を掛け、今にも俺の頭を吹き飛ばそうとするその寸前―――― 森の方から叫び声と銃声、
そして、銀色の光が輝いた。
「なんだ!?」
隊長が俺から異変のあった方向へと顔を向け、銃を構え直す。
その間も叫び声と銃声は止まず、何度か山の中に響いた後、静かになった。
「オイ!どうした!返事をしろ!」
隊長が警戒しながら森の中に入っていった兵士達に呼び掛けるが、彼の声だけが辺りにこだまするだけで応えはない。
「ちっ!」
理解不能な状況に隊長が舌打ちするが、その時、また銀色の光が輝いた。
「これは・・・な、なん・・・うおぉぉー!」
隊長が光に困惑の声を上げようとしたその瞬間、彼の身体が一気に十数メートル浮きあがり、そのまま頭から地上に落下した。
グチャっという何かが潰れる音がして、隊長の身体が地面に叩きつけられる。
そのまま彼が起き上がる事はなかった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・うっ!」
一連の状況を地面に倒れて黙って見ているしかなかった俺だったが、撃たれた箇所の出血は続いていて、段々と意識が遠くなっていってた。
そして、意識が完全に闇に落ちる前、「ウィロ・・・」という、俺の名前を呼ぶ弱々しい声を聞いた気がした。
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