第4話「王家の交渉:愛と義務の狭間で
仲が良くて結構だが、もし結婚を反故にして、バルトス国が攻めて来たらどうする?
とお父様は議論を本筋に戻した。
気まずいのだろうなと私は、思った。
それをさせない様、お父様と外交の責任者が
交渉するのです。と私は言った。
セレナお前が私と一緒に交渉に行けば説得出来るだろう。私は今確信したのだ。
お父様それはちょっと…難しいかと。
何故だ?
私を言い負かしたお前より、優秀な外交官はおらん。姉の為に一肌脱ぐべきだろう。
私より優秀な方がおられないのは、政略結婚で、まともな外交交渉に力を入れてこなかったからです!
いやそうではない。うん…まぁそれもあるが、それより、行くのか?
行かないのか?
はっきりしてもらおう。
私はお父様だから強く言えるのです。
私の様な小娘の言う事など聞くでしょうか?
これはおかしなことを言う。そんな事は小さい事。バラゴン殿に娘の発言は、私の意見と伝えておこう。それでいいな?
そこまで仰るならば行きます。エレノア、留守を頼みますね。
はい、お嬢様。すぐに馬車をご用意いたします。
そしてライナ姉様に事の経緯を話し、馬車に乗り、バルトスに向かった。
馬車に揺られながら、私は不安と戦っていた。
果たして上手く説得出来るだろうか?
私にしか出来ないのよ、と自分を鼓舞した。
バルトスは海に隣接しており、魚介類が豊富に取れる国だ。
大国ではないが、それでもかなり繁栄している。
いくつもの家々はとても目を見張るほど、優雅だ。
その家々に見惚れていた。お城に着いたとの知らせがなされ、メイド達一同に招かれた。
わが国へようこそ。して、私になんの様かな?
久しぶりですな。私の娘がバラゴン殿に話したい事がある。
娘の意見は、私の意見と思って聞いて欲しい。
バラゴン国王様お初にお目に掛かります、セレナでございます。
早速結論から言います。ライナ姉様との結婚取りやめて頂きたいのです。
ほう?
いきなりそうきたか。
断る。これはもう其方の国と決まった事だ。
決まった事を覆す、それが嫌と?
約束事は守るのが礼儀ではないか?
国家間の約束事も守れない国は信用ならんとなる。
これは当然の事だ。違うかね?
バラゴン国王確かに仰る通りだと思います。しかし国家間の約束事が必ずしも、全て正しい訳ではありませんね?
例えば、国家との約束事が世界の安定の為ならどうですか?
約束事を破れば世界が平和になるなら、それは破るべきなのではありませんか?
む…それはそうだが、しかし今回の婚姻とは関係のない事だろう?
むしろ約束を守る事が我が国と其方の国の平和に準ずるのではないか?
この結婚が其方の国に、繁栄を与え、経済や文化交流が活発になるであろう。
その約束を破り、国民を不幸にする選択は、間違いではないか?
まず、政略結婚の愚かさを明らかにするメリットがあります。
その様な事をしなくても、私達が協力しない法はないはずです。
むしろ先程仰った国家間の約束事。
これは必ずしも守るべきではないと、バルゴン様はお認めになりましたね?
それは…確かに認めたくはないがな。
ところで政略結婚とは失礼ではないか?
お互い納得した結婚だ。
それは親同士の勝手に決めた事です。我が姉は納得してはおりません。もちろん親族である私も納得しておりません。
バラゴン様政略結婚ではないと仰るのなら、姉がその結婚に納得していなければ取り消しても構わないと言っていると、受け止めて宜しいでしょうか?
む…それは無論だ。其方の娘が納得していないのならば、致し方ない部分もある。
しかし私がその約束反故を納得したとしよう。しかし、他の者はどうかな?
必ず反発する者が出るであろう。
その者が暴発したらどうなるか?
其方の愛する平和が崩れるのではないかな?
それにこちらは結婚に納得している。其方の国のみ納得していない。
つまり約束を反故にした国と、また付き合っていこうと、おもうかね?
バラゴン国王は笑って言った。
私は約束を反故にしろとは言っておりません。お互いがこの約束は無しと決めれば良いだけの話なのです。
一つ質問が、バラゴン国王は何故この結婚に納得しているのでしょうか?
と私は微笑んで言った。
それはバラゴン国王の納得する理由を変える自信があっての事だ。
納得する理由…なるほど読めたわ。私の主張を挫くつもりだな?
確かにお互いが、この結婚を取りやめる事に納得すれば、其方の国は約束を反故にした事にはならない。
あっぱれだな。感心するわい。国王は微笑を浮かべ、其方の知恵の深さを認めると言った。
これはもう私の負けだな。納得する理由を言ったところで、其方が納得するはずがない。
ありがとうございますバラゴン様と、私は感謝をした。
王は反論も出来たであろうが、それをせずに負けを認めた、王の器の大きさを切に感じた。
良い娘を持ったな。バラゴン国王は、私の隣に大人しく座っていたお父様に言った。
娘は能力が大したことがなかった。その事で思い悩み、必死に努力してきました。
私は娘の能力に失望しました。しかしその後の頑張りに、娘ながら尊敬の念を抱きました。
娘は私の誇りです!
とお父様は言った。
その言葉を私は聞き、エレノアの事があったので心中複雑であった。
それは来る前に、お父様が妾になれとエレノアに言ったことが、頭にあり、褒められても素直に、喜べなかった。
それでも、努力を見ていてくれた事に心でお父様にありがとうと言った。
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