(三)-6

「貴様、名をなんという」

 兵士が問うてきた。

「拙者は元久留米藩士にして足軽二見寿久の息子、二見盛久だ!」

 二見は刀を向けた。

「やっぱり……」

 兵士がそう言うと銃を下ろした。そして「盛久兄さん」と言った。

 まさか、と思った。どことなくかつての弟のような面影があるような気がした。しかし、その顔だちはどの若者も似たような雰囲気を持っているものだ。弟と似ているといっても、その若さのせいだろうと思っていた。

「兄さん、俺だよ。弟の豊久だよ。橋本家に養子に行った俺だよ」

 それを聞いて二見は頭の中が真っ白になった。


(続く)

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