(三)-3

 二見は兵舎の部屋の中の寝台の陰で身をかがめて隠れ、外を観察する。

 兵舎は横に細長かった。長い側面の片側は廊下になっているので、そちら側の壁には窓はなかった。しかし、逆側は全て窓になっていた。もちろん外から部屋の中は丸見えだった。隠れる場所は柱の所くらいだった。

 そこへ廊下側ではなく建物の外側から部屋に入ることのできる入口を開けて、陸軍の兵士が一人、銃を構えながらゆっくり入ってきた。ズボンは履いておらず、帽子も被っていなかったが、上着だけ着ていた。詰め襟の上から裾の所まで全てのボタンをきっちりと留めてあった。


(続く)

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