第46話 人形のような整ったお顔の美少女との小さな変化

「よぉ~蒼、今日も死にそうな目をしてるなぁ」

「一言余計だよ」

「いやいや、余計じゃないでしょ」

「悠里……お前まで」

「蒼はいつも死にそうな目をしてるからなー」


 明人にイジられたかと思いきや、悠里が一緒になって追撃してくる。


 この二人を組ませたら妙な連携というか、ウザさが倍になるので厄介だ。


「それで、なんだよなんか用があるんだろ?」

「そうそう、この間のお疲れ様会を週末にやるって言う事を伝えに来た」

「そのついでに、俺のことをからかおうとしてきたわけか」

「大正解だよ」

「正解したくなかったかな」

「イジりがいがあるんだよなぁ」

「ないだろ!」


 俺が声を大きくして否定すると、明人と悠里はケラケラと笑っている。

 こういう反応がこいつらにとって面白いのだろう。

 まんまとハメられた気分になった。


「それに、体育祭の次は文化祭があるからな」

「本当楽しみだよねー」

「まぁ、大半の男子のお目当ては蒼井さんだろうけど」

「はぁー、本当可愛いよねお人形さんみたい」


 別のクラスの女子からも可愛いと言わせる蒼井の美貌はどれほどの物なんだ。


 いつも家で見ている時も可愛いや整いすぎているとも思っているが、学校に来るとより考えさせられる。


「すごいんだな、蒼井幸奈の人気は」

「そうだねー、その分、嫉妬の目とかも多いらしいけどね」

「嫉妬?」

「そりゃあ、女子からしたら男子の人気とかを一人で持っていくのはいい気分ではないだろうな」

「大変……だな」

「でも、付き合った人とか、いい感じになった男の子すらいないって話だよ」


 悠里は「そこが不思議だよねぇ~」と言いながら、窓の外を見る。


「噂をすると……」


 俺も悠里と同じ窓の方向を見る。

 すると、俺のクラスの横を体操服姿の蒼井が通っていく。


 いつもとは違い、髪の毛を結んでいる状態だった。

 すぐに、クラスの主に男子の視線が窓の外に集まる。


「こんなに視線を送ってたら、本人も気づくだろ」

「そうだろうねー」


 そんな話をしていると、窓の外を歩いていた蒼井とパチッと目が合う。

 すぐに目を逸らすと思いきや、ジーっと俺のことを見てくる。


 俺が首を少し傾げると、蒼井はすぐに目を逸らした。

 すると、俺と同じく蒼井のことを見ていた男子生徒が「俺の子と見てた!」などと言っていた。


 俺はなぜか蒼井が自分をを見つめていると勘違いしていた。

 しかし、あの目線は絶対に自分に向けられていたものだと確信がある。


「すげー人気だな」

「ほんとほんと」

「いや、悠里も一部から大人気だろ」

「い、いやー私なんてそこまでだよ」

「そうなのか?」


 明人が悠里のことを褒めると、照れながらも否定をする。

 話を聞くと、悠里は部活をしている男子たちに人気があるらしい。


 普段とは違う、部活をしている時の雰囲気や真剣な表情に定評があるらしい。


 悠里も蒼井とは違う方向での可愛いが多い女の子である。

 これは男子でもそう言う男が多いだろう。


 まぁ、蒼井とは違い、女の子らしからぬ部分もあるが……。


「蒼? 失礼なこと考えてる顔してたよ今」

「…………まさか」

「怪しいけど、今回は見逃してあげる」


 悠里はプイッとそっぽ向きながら、髪の毛を手ぐしでといている。

 こういう時の悠里は女の勘というものが優れている。


「とても怖いなぁ」

「本当に悠里は怖いぞー」

「やめてよ、人を優しくないみたいに言うの」

「明人の場合はお前が全般的に悪いからなにも擁護ようごできない」

「そんなぁ~蒼~」

「ほれ! 蒼だって私の味方!」


 味方になった覚えはないんだが……俺はそう思ったがもう割り込める雰囲気だはなかった。


 たまに思う事がある。二人の間に割って入れないなという事が。


 こういうことをもしかしてお似合いの二人って言うのかもしれないと感じていた。

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