第43話 過去のトラウマ
体育祭のお疲れ様会が別日に変更になっていたことについて、俺が把握していなかったため、蒼井に負担をかけてしまった。
ていうか、俺に連絡をくれる友達がいないという事の方がヤバいだろう。
「あの……」
俺が自分の友達の少なさに悲しんでいたところ、蒼井が話しかけてくる。
「ん? どうしました?」
「いや……その話したくないのなら、別にいいのですが、どうしてバスケ部に入らなかったのかなと」
「えっと……それ知りたいですか?」
「あ、ごめんなさい」
俺の口調が少し荒くなってしまい、蒼井の眉がちょっぴり下がる。
「いや、知りたいのかな~的な感じで、別に言いたくないわけじゃ……」
「言いたくないわけじゃないんですか?」
「……聞かれなかったら言わないですね」
「それは遠回しに言いたくないって言ってるようなものでは?」
そう言われたら、確かに……と納得してしまう。
蒼井になら話してもいいと自分自身、感じている部分もある。
「でも、どうして急に……って急ってわけでもないか」
「そうですね……体育祭であそこまでできるのなら、うちの学校でも通用したというか……」
「うちの学校バスケ部強いですもんね……」
俺がそう言うと少しの間、沈黙が流れる。
「中学の時のトラウマがあるんですよ……それのせいで、バスケも人も苦手になってしまったというか」
「あ……ごめんなさい」
蒼井はトラウマこの言葉を聞いてわかりやすく眉毛をシュンと下げる。
「いや……蒼井さんには話しておこうかなっても思ってたので」
「え? いいんですか?」
「はい、いいですよ。聞いてくれますか?」
「はい、大丈夫です」
そう言いながら、蒼井は座りなおす。
姿勢を正されると、話しにくいと感じてしまうが、気にしないように深呼吸をする。
「あれはですね――――――――」
俺は中学時代のことから、今に至るまでを蒼井に話した。
自分の話の中で、盛ったりすることもせず、ありのままのことを話す。
「――――ていうことで、今に至りますね……」
俺が話をし終えると、重い空気になってしまい、顔を上げることができず自分の膝を見ていた。
恐る恐る、視線を上げると蒼井は大きく綺麗な瞳に大粒の涙を浮かべていた。
涙が出るのを必死に堪えているかのようだった。
「ど、どうしてですかっ!」
慌てて、俺がティッシュを蒼井さんに渡そうとした時に蒼井さんが俺の頭をぎゅっと抱きしめてくれる。
とてもいい香りが広がる中で、自分の心臓の音が良く聞こえ、持っていたティッシュをポトッと床に落とす。
「辛かったですよね、頑張りましたね」
「いや……もう終わったことなので」
「それでも、された方にはずっと残るんですよ、された方にしかわからないモノがずっと、心の内にあるんですよ」
「それは、そう……ですね」
自分の心臓が早くなり、この雰囲気なら何をしても許されるんじゃないだろうかと思ってしまいそうなほどには危なかった。
それに、抱きしめられていることにより、たわわな二つの果実が俺の身体に当たっているという事も重大である。
自分の気持ちを静めることと、この心地よさにずっと埋もれていたいと思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます