第31話 人形のような美少女のクラスTシャツは周りの人間に悪影響です
球技大会初日、教室もうるさいのだが、廊下の方がもっとうるさい。
その理由は……
「おい、蒼井さんだ」
「幸奈ちゃんのクラスTシャツ姿、眼福すぎる」
「天使だろ、いや女神か」
などと蒼井のクラスTシャツの姿に男子一同盛り上がっている。
まぁ、俺も期待していなかったわけではない。
アレだ、女優さんとかモデルさんを見るときと同じ感覚。
「あ~、蒼井幸奈かわいいなぁ~」
「勝手に俺の頭の中の声をナレーションすんな」
「うぉ、まじか」
「なんだよ」
勝手に驚いている明人を俺は睨みつける。
別に俺だって、蒼井を可愛いと思うさ。
「いや、お前女子のことトラウマになってるのに、よく可愛いなんて言葉が出たなと……」
「全員に嫌いになるというか、苦手意識があるわけじゃない」
「へぇ~? 蒼井さんはいけると」
「なっ!?」
たしかに、蒼井のことは家での過ごし方や、今まで関わってきて信頼できるし、少なくとも俺のトラウマとなった女子のようなタイプではないと確信している。
だからといって、こんなへんな風にみられるのは危ない。
もし、明人になってバレたら、悠里にばれ、学年、学校中にすぐに噂が……。
「ち、ちがうわっ!!」
俺は慌てて声を荒げて否定する。
かなり大きな声だったので、教室の大半俺の方を見ていた。
「あ……」
「ぷぷっ……ど、どんまい」
「クソがっ……」
顔が熱くなるのが分かる。
ジンジンと恥ずかしさで、教室に居たくないと心から思う。
廊下の方を見て、教室から出ようかと思った時、俺の荒げた声なんてどうでもいいと思うくらい、可愛い美少女が通った。
人形のような、いつもは制服だが、今日はクラスTシャツという着せ替えイベント。
そんな人形のような美少女を知らぬ間に目で追っていた。
そんな彼女とパチッと目が合う。
すると、あははっ……と苦笑いされる。
絶対さっきのこえを聞かれてた。
あれは明人が言っていた蒼井なりのドンマイだ。
すると、今度は両手でグーを作り、胸の前でガッツポーズを作っている。
これは一緒に頑張りましょうってことでいいんだろうか……。
「お、おい……いま蒼井さんがガッツポーズしてたぞ」
「俺にしてくれたんだ」
「いや、女神はみんなにだろ」
俺はクラスの男子から、妄想の話を聞いて、自分だけの優越感みたいなのはすぐに消えた。
しかし、蒼井が心を許した相手にしか応援とかはしないことを知っているし、男が嫌いというのも知っている。
蒼井のあのガッツポーズは俺にしたってことにして、今日も一日頑張るかー。
「あ、そうそう」
今日の俺はどんな剛速球でも避けれる気がする。
「お前、バスケの補欠に入れておいたから、お昼のミーティング来いよ」
「ほうほう――――って、はぁっ!?」
「大きな声出すなよ、響くわ」
「お前なに勝手にバスケの補欠なんか入れてるの?」
俺はそう言いながら、明人の胸倉を掴む。
「バスケの試合とかぶってないのがドッジボール選んだ奴しかいないんだよ」
いやいや、ドッジボールとバスケの二刀流はさすがにきついですぜ。
「まぁ、補欠として登録するだけだから、座ってればいいよ」
「あーそうかよ」
「な? いいだろ?」
「……よくねぇ」
俺はそう言いながら、そっぽ向く。
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