第25話 太陽のような笑顔の女の子はテストの結果が悪い

「うげぇ~テストの点数やばぁー」

「悠里どのくらいやばかった?」

「バスケ部で決められてる、点数よりは上」

「――――ってことは50点以上か」

「そうそう」

「点数が決められてるのか?」


 俺がそう聞くと、二人はうんうんと頷く。

 しかし、表情は笑っていない。


「もし赤点をとったら?」


 俺がそう言うと、二人とも顔が青ざめ、近づいてくる。

 ガシッと両肩を二人に掴まれる。右が悠里、左が明人。


「そんな怖いこと言うなっ!」

「恐ろしいこと言わないでっ!」

「わ……悪い」

「本当、学校生活はちゃんとしろって、一番厳しいんだから」


 悠里は愚痴を溢すように、口をとがらせて言う。

 俺はその姿を見て、ふっと笑ってしまう。


「なぁんで、笑った~?」

「いや、子供っぽいなと……」

「身体がか?」

「今のは勝手に明人が言いました」

「うん、聞いてた」


 まーた、一言、明人は余計なことを言う。

 俺のことを助けてくれているのかと前に思ったことがあったが、明人のアレは、面白がっているからやっている。


 悠里の反応が面白いし、接しやすいのは認めるが、そろそろ大喧嘩しそうで怖い。


「明人~?」

「ごめんごめんっ」


 まぁ、俺としては悠里の標的が明人に移ってくれて助かるが。


「そういう、明人はテストどうだったの」

「俺か? 俺もギリギリでセーフだからいいとは言えないな」

「そっか、じゃあ蒼は?」

「ぼちぼちかな」


 テストの結果は、蒼井と勉強してたし、普通に自学もやっていた。

 二人とは違い俺は部活をしていないし、時間がある。


 この学校では50位以内は校内の張り紙に名前が張り出される。

 40位くらいだったので、張り紙を見ればどのくらいなのかわかる。


 ちなみに、蒼井は学年一位だった。

 蒼井は順位とかそういうの、あまり気にしてなさそうだけど。


「ぼちぼちとか言ってるけど、コイツ学年50位以内だぞ」

「……は? それでぼちぼち?」


 まずい……再び悠里が俺のことをロックオンした。


「蒼はさぁ~これがぼちぼち……?」

「わ、わかったっ。今度、一緒に勉強しよう」

「えっ! いいのぉ~?」

「わざとらしい演技はやめろ」


 悠里がくねくねとわざとらしい演技をする隣で、俺のことを見つめてくる男が一人。


「大丈夫だ、お前を仲間はずれにはしない」

「さっすがぁー! だ・い・す・き」

「きもいからやっぱりやめようかな……」


「今日、テスト返却の結果が出ましたけど、50位以内なんてすごいじゃないですか」

「み、見たんですか?」

「張り紙に張り出されている時に……ごめんなさい勝手に」

「いや、順位とか気にしないかと思ってて」

「自分の順位なんて気にしてません、でも蒼さんはしっかりと頑張っていたので、報われていてほしいなと、思って……」


 蒼井が俺のことを気にかけてくれていて、とても嬉しかった。


「俺頑張ってましたかね……?」

「もちろんです。朝起きるのも苦手なのに、朝も頑張って起きて勉強してましたもんね」


 そう言われて、頑張ったな俺と心の中で褒める。

 いつからか、自分のことを褒めることをあまりしてなかった気がする。


「じゃあ、ご褒美とかっていいんですかね」

「それはもちろんいいと思います」

「じゃあ、一緒に映画を見てくれませんか?」

「……映画ですか?」

「はい、映画です…………ダメですか?」

「いえ、でもどうして一緒に?」

「蒼井さんは学年一位をとったんです。俺がご褒美なら、蒼井さんもってことです」


 俺がそう言うと、蒼井はぽかんとしていた。

 あれ? 自分が学年一位なの知ってるよな? と不安になる。


「なんの映画を見るんですか?」

「前に言ってたホラーを観ましょう」

「……ほ、ホラーですか?」

「でも、ホラー大丈夫って前に……」

「はい! だ、大丈夫ですよ?」

「了解です」


 絶対に怖いのが苦手なのに、見栄を張る蒼井がとても可愛らしい。

 蒼井がビクビクしている姿を想像してしまう。


 クッションを抱きしめたり、フルフルと震えたり、時にはびっくりしすぎて声が出たり……。


 ま、楽しみに取っておこう。

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