第22話 番外編 人形のような美少女とパンケーキ

 自分の家の最寄駅から20分程度で、そこそこ栄えているであろう町に来る。

 二人で歩いていると、視線がすごい。


 二人と言っても、すこし距離をあけている。


 わかっていたことだが、隣を通過する人、店から出てくる人など、ほとんどの人が蒼井に視線を送る。


「おねぇさん、美人だねぇ~」

「そうですか? ありがとうございます」

「ほんとほんと、お人形かと思ったよ~」

「あっ……そうですか」


 俺が隣に居るというのに、その男はナンパをしている。

 すごい度胸だな……と感心しつつ、気持ち悪いなとも感じていた。


 そしてなにより、本当に興味がないんだろうなと思う蒼井の対応だった。

 ツンとした表情、態度を貫き通していた。


「――――あのっ!」

「……?」


 なんだこの男……俺が声を荒げて、ナンパ男を呼ぶと、首を傾げて、俺のことをきょとんとした表情で見ていた。


 コイツ、俺が居たことに今気づきやがったな?


「急になんなんですか? 嫌がっているのわかりませんか?」

「あー、お兄……いや弟さんかな? ごめんごめん。邪魔はしないよ」


 そう言って、ニコニコと笑顔を振りまきながら、去って行った。

 いや、そこよりも、お兄さんじゃなくて、弟?


「ふ……うふふっ……」

「笑いましたよね?」

「わら……って、ないです」

「笑ってるじゃないですかっ!」


 俺が恥ずかしがりながら、そう言うと、蒼井は笑いを堪えながら、謝ってくる。


「ごめんなさい……可笑しくて」

「そうですか? まぁ、俺の方がお兄ちゃんっぽいからですかね?」

「でも、私の方がお姉さんだと思われてましたよ?」


 そう言われては反論ができない。

 もう仕方ないが、どちらが年上に見えるかは論争は保留にすることにした。


「――――でも、ありがとうございますっ」


 蒼井はそう言うと、にっこりと笑った。


「ここです、ここですっ!」

「ここが、あの写真の……」


 暖色系の外装で、とても綺麗でオシャンティーな場所だった。

 絶対に一人では立ち寄らない場所だなと俺は感じていた。


「ささっ! 中に入りましょうっ」


 蒼井は尻尾をふりふりとする犬の様に、どんどんと中に入っていく。 

 明らかにいつもより気分がいいのが目に見えてわかる。


 ちゃんと年相応の反応がある時も普段のギャップで可愛い。


 中に入ると、周りのお客さんはカップルか女性客がほとんどだった。

 そして、蒼井お目当てのパンケーキが運ばれてくる。


「こ、これが……くまさんパンケーキ」

「あれ? でもシロクマ的なの頼んでませんでした?」

「凄いんですよ? 見ててください」


 そう言って、蒼井は小瓶のようなものに入っている。白い液体をパンケーキにかける。


「なんですか? それ」

「これはホワイトチョコレートです」

「あっ……なるほど、それをかけると」

「そうですっ! シロクマさんになるんですっ」


 大きく綺麗な瞳をキラキラと輝かせている。

 今日の蒼井の瞳は一段と綺麗に見えた。


「蒼さんのはハチミツがたっぷり使われてますね」

「えぇ、とても美味しいです」

「本当ですか?」

「はい。結構甘党なので、すごく美味しいですよ」


 俺は甘党だと思っているので、ここのパンケーキもハチミツや砂糖がとても使われていて、美味しい。


 甘いのが苦手な人は、コーヒーなどの種類も豊富なので、そちらで楽しむか。ブラックチョコをつかったデザートもあるらしいので、甘いのが苦手な人でも大丈夫だ。


「おいひぃですっ~」


 蒼井の顔がとろけている。

 本当に幸せそうに食べるなぁと、ふと思う。


 俺も蒼井のとろけそうな表情を見ながら、ものすごく甘いパンケーキを一口。

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