第18話 人形のような美少女は頑張りすぎている?
「それでは、勉強を始めますよっ」
「よろしくお願いします」
蒼井と向か会いながら、お辞儀をする。
まぁ、教わる身として、こういうところはしっかりとしていきたい。
「今日は、前回の続きからやっていきましょう」
「そうですねー」
「じゃあ、またわからないことがあったら言ってくださいね」
「了解です」
そう言って、各々自分のペースで進めていく。
俺も蒼井も、とても集中しているのでリビングにはシャープペンのカリカリという音が良く聞こえる。
わからない問題があった時は、まず背伸びをして、もう一度考える。
しかし、やっぱりわからないので、蒼井の顔をじっと見つめる。
すると、蒼井が気づいて「なんでもっと早く言わないんですかっ」と多少怒りながら言われる。
そんな、端から見たら付き合いたてのカップルなんじゃないかと思われるやり取りをしていた。
「もうっ、わからない所があったら言ってくださいっ」
「はーい」
そんなこんなで、ざっと2時間くらいは勉強していただろうか。
しかし、集中力なんてものはそんな長く続かない。
俺はもう限界に来ていた。
ゲーム、漫画を読みたいとか脳内では考えていた。
「すこし休憩にしましょうか」
「へ? いやいや、やりますか」
気を遣わせないように、俺は姿勢を正して、もう一度ノートに向かう。
しかし、頭がパンクする寸前でそのままテーブルに頭を突っ伏した。
「休憩だって大事ですよ?」
「……ははっ、そうですね」
俺は小さく笑いながら、蒼井に言われるままノートを閉じる。
「――――結構進みましたよね?」
「まぁ、そうですね……これも蒼井さんのお陰です」
「そんな、蒼さんが頑張ったからですよ」
そう言いながらも、蒼井はどこか嬉しそうに見える。
見えるだけで、本人が本当にそう思っているかは知らない。
「蒼井さん……疲れてないですか?」
ふと、母さんの蒼井をよろしくねという言葉が頭に浮かんだ。
それとなく、蒼井に体調などを聞いてはいる。
しかし――――
「大丈夫ですよ、体力はある方ですから」
大体こんな感じの言葉を言われて、流される。
絶対に無理してるでしょって時も同じだ。
「本当に、何でも言ってくださいね? たくさんしてもらっているので、そろそろ恩を返さないと……」
「私の方こそ、もっと頑張らないといけませんよね……すみません」
「いやっ! これ以上頑張らないでください」
「でも、私が今ここで生活できているのは……」
蒼井はそう言って、言葉に詰まる。
とても悲しそうな表情をする。触れたら壊れてしましそうな、これ以上近づいたら、離れて行ってしまいそうな、そんな感じの表情だ。
「それでも、疲れたときはちゃんと休んだ方がいいです」
「はい……」
自分でもわかっているが、気持ちが休ませてくれないんだろう。
俺は蒼井の体調が壊れないか、心配だった。
「それじゃあ……再開しましょうか」
「そう……ですね」
「もうすこし、休憩がほしいですか?」
「いやぁ……いきますか……」
俺は重くなってしまった腰を頑張って持ち上げる。
リビングのテーブルにもう一度向かい合って座り、勉強を再開する。
「あ、明日は雨みたいですね」
「うわ、傘持って行かなくちゃいけない」
「朝降っていないからって、持って行かないのはなしですよ?」
「はい……ちゃんと持っていきます」
そんなやり取りをしつつ、勉強を進めていき、気づけば10時を過ぎそうだったので、続きは明日にすることにした。
外はぽつりぽつりと雨が降り始めた。
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