第3話 人形のような美少女と今後の話

「電車かぁ……乗り過ごしたら終わりだな」


 俺が独り言のようにボソッと言うと、呆れたような顔で俺のことを見てくる蒼井の姿があった。


「なんだよその目は」

「いや、別に……あ、そのなんで蒼さんは葉城高校に?」

「あー、あ……えっと、色々と理由はあるけど、実際に学びたいと思ったからだよ」

「なるほど、ちゃんと勉強したんですね」


 え……? 今、俺褒められてたの?


 しかし、そんなことを考えることとは裏腹に俺の胸はチクリと針に刺されたような痛みがあった。


「今、俺のこと褒めたんですか?」

「褒めてないです、勘違いしないように」

「あ、はい」

「これは葉城高校だけのことではないですが、しっかりと勉強した人ですらどうなるかわかりませんからね」

「そうだな……」


 全員が思い通りの結果になることなんてわからない。

 だからこそ、俺が葉城に入学することってことで、あの言葉を言ったんだろう。


「蒼井さんは部活とか考えてるの?」


 葉城高校は部活も盛んな高校なので、部活目的で入りたい人も結構多いと聞く。

 明日入学式はあるので、部活のことを聞いておくにはいいタイミングだ。


「私は別に……蒼さんは部活入るんですか?」

「いやー? 部活には入らないかなー」

「私は中学の時も部活に入っていなかったので、部活というものにすこし憧れもあります」


 憧れか……俺も中学の時はあったなぁ、ここから楽しいことが始まるってかんがえてたな。

 そんなことをフワフワと思い出していた。あの出来事と一緒に。


 はぁ、っとため息を吐く。


「まぁ……いいものだよ」

「蒼さんは中学生の時は部活に入ってましたか?」

「……中学二年生までね」

「そうなんですね」


 蒼井は雰囲気を悟ったのか、ラインを見極めたのか、それ以上は深く聞いてこない。


 蒼井からしたらどうでもよく、聞く必要もないと思うが。

 俺、個人としては、助かる。


「逆に、蒼井さんはどうして葉城に?」


 俺が蒼井に聞くと、ムッと整った顔をしかめたあと、悲しい表情を見せる。


「あ、別に言いたくないこととかあったら言わなくていいから」

「あ、ありがとうございます……ですが、言いたくないことではないです」

「そですか」


 俺がそう言って、チラッと蒼井の方を見る。

 先ほどのような、悲しそうな表情をムッとした顔でもなく、ただスンッといつもの表情に戻っていた。


「私は一人暮らしをさせてもらえるものだと思ってて、葉城の近くのマンションを借りようと考えてました」

「反対を食らったと」

「はい……。女の子一人はダメだって言われました」


  まぁ、こんな可愛い娘を日本に置いてくんだからそれは仕方ない気もするけどな


 ――――と、俺は蒼井の父親の気持ちもわかるなぁと考えていた。


「電車通学というのも、高校生らしいといえば高校生らしいので悪くはないですけどね……」


 しかし、蒼井の顔は納得していないような表情だった。


「クラスは別々の方がありがたいですね」

「それもそうだな、なにかと面倒くさいことになったら嫌だからな」

「そうですね」


 お互いが相手に迷惑をかけないように学校生活を過ごさなければいけない。


 もし一緒に住んでいることがバレたら……想像したくはない。


「まぁ、もしトラブルになったら仕方ない」

「し、仕方ないですか……」

「納得いってない様子ですね」

「迷惑をかけてしまいますよ」

「まだ、トラブルになるって決まってないんだし、気楽に行こう?」

「は、はい……」


(あれ? 俺いまフラグ立てた?)


 自分でフラグを立てたかもしれないことで、不安になった。


「なにか飲みます?」

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


 蒼井はペコリと一礼すると、自分の部屋に戻っていった。


 聞きたいことは、聞けたから十分かなぁ……


 そう思いながら、明日の入学式の準備をするために、俺も部屋に戻った。

 結局、準備をする前にゲームをしてしまい、準備を始めたときには日が変わっていた。

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