天国からきっと見ている

あめはしつつじ

 祖父が死んだのは、

 本来、私が帰る日の、翌日だった。

 小学生三年生の夏休みだった。

 台風の影響で、飛行機が飛ばなくなり、

 二日間、家に帰る日程が伸びた。

 まだ、おじいちゃんの家に居れると、

 喜んだ翌日、

 おじいちゃんは死んだ。

 お通夜や、葬式の準備で、

 家に帰る日程は更に伸びた。

 私は喜べなかった。

 人肌でない温度の人肌が、

 冷たかったことを憶えている。

 田舎にこんなに人がいたんだと思うほど、

 人が集まったことを憶えている。

 火葬され、お骨拾いの時に、

 これが、おじいちゃんだよ、と、

 渡された、金属のどんぐりのようなものが、

 まだ、温かかったことを、

 憶えている。




「あんら、だー、まーた、おっきなって。

 遠かったろうにー、よーきたねー」

「お正月にもあったじゃん、おばあちゃん」

「やー、ひさーしぶりらって、

 すいか、くうろー?」

 とりあえず、先に、

 ご先祖様に挨拶してくるよ。

「ほうけー、じーちゃんも、喜ぶって」

 お仏壇の前、

 おりんを鳴らし、

 手を合わせる。

「おじいちゃん、

 僕も記憶種実ナッツを読み込めるほど、

 大きくなりました」

 お仏壇に外付け神経を接続する。




「ねえ、おじいちゃん、

 台風の目って、どっちを見てるの?」

「そりゃおめ、おんらのほうらろ」

「地球の方ってこと?」

「そーら」

「明るい方を見ればいいのにね」

「どーことら?」

「だってこっちは暗くなるけど、

 お空の方は、真っ白で明るいでしょ」

 私の目はまーるく、私を見ていた。

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天国からきっと見ている あめはしつつじ @amehashi_224

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