詩文まとめ

アーカムのローマ人

三の戴冠

雨と涙の区別もつかないままに

上履きのままであぜ道を走った

雷雨の香りが暗く立ち込め

稲田の向こうには白いものがうごめき

眼鏡を袖で拭いてそれを見た


風に揺れる稲葉の間にあなたは見たことがあるか

名付けられたことのないものがくねくねと動くのを

黒い湖水が鏡として玉座を映すのを

森が迫り来て遠い校庭を飲み込むのを


そして三の巫女たちが告げ、九の呪文が唱えられたので、

私はランドセルを泥の中に捨てて王となった。

三枚の黄金の月が冠となって中天を行き来した。

カルコサの月、カルコサの月、ハリ湖に影落とすカルコサの月。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩文まとめ アーカムのローマ人 @toga-tunica

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ