エピローグ

第28話 九里四里うまい十三里(1)


「まさに『魔王国』――そんな風景になってしまった……」


 正確には、聖王国のイメージする『魔王国』だが――と陛下。

 軽く溜息ためいきく。


 報告はいつもしていたので『問題はない』と思っていたのだけれど、私の食糧問題に対する回答は間違っていただろうか? 首をかしげる私に対し、


「いや、君だから出来た政策だよ……」


 感謝している――と彼は微笑ほほえむ。

 その一言で、なにやら胸の奥が熱くなるのを感じた。


 人からほめめられることは少ないので、素直に嬉しい。

 フフン♪――と胸を張る私。


 晴れ渡る青い空。流れる白い雲。

 広大な土地のためか、空と大地の距離が近く感じる。


 私たちの目の前にある広大な畑。

 それをたがやしているのは、横一列になった大量の骸骨兵スケルトンたちだ。


 骸骨兵スケルトン――といっても本物の骨ではない。

 戦う相手に恐怖を与えるために、模造品レプリカによって構築されている。


 軽くて丈夫、汚れにも強い。それが骸骨兵スケルトンなのだ。

 パーツごとに分解することも出来るので、持ち運びにも便利。


 女性の私でも、簡単に運べます。

 複雑な命令を実行するのはむずかしいけれど、掃除くらいならやってくれる。


 そんな骸骨兵スケルトン。今なら十体以上、購入の方に隊長リーダー機もお付けします。各個体への指示は隊長リーダー機がやってくれるので、個体ごとに命令をする必要がありません。


 まあ、便利!――ということで、愛好家の間では赤や青、黒などに塗装した隊長リーダー機に角を付けたりもしている。


 勿論もちろん、カスタマイズは別料金だ。このあいだ、ドルミーレ商会へ顔を出すとエントランスに金色の骸骨兵スケルトンが置いてあった。


 骸骨兵スケルトンといっても、中々に奥が深いらしい。

 一方で、陛下はあごに手を当て、なにか考え込んでいるようだ。


 すぐに答えは出たのか、


「この分なら、あの計画を前倒しにしても良さそうだ」


 と告げる。相変わらず、十代前半の子供の姿だけれど、思慮しりょする時の目付きなどは中々にカッコイイ。


 ちなみに説明するまでもないが、ドルミーレ商会主催の人形愛好家たちによる会食。

 そこで美顔器と野菜クッキーを提供したのだが、中々に好評だった。


(まあ、キルデベルトの容姿による効果も大きいのだろうけれど……)


 手応えをつかんだ彼は、次にペットによる品評会を開催する。

 可愛らしい動物を飼っているのは、やはり女性が多いようだ。


 そこで今度は、化粧品の試供を行う。

 この時はアルテミシアにも協力してもらったのだが、こちらも評判になった。


 当然、シグリダにも活躍してもらう。

 やはり、容姿に優れた二人が勧めると売れ行きが違うようだ。


 今は薬師の女性たちをやとい、化粧品のお店を準備している。

 また、材料を確保する目処も立った。


 魔迷宮ダンジョンの栽培に適している一部の野菜と薬草が判明したからだ。

 陽の光は届かないが、湿度や気温は安定している。


 そのため、天候や季節に左右されない栽培が可能になった。

 採取できる量は決まっているのだが、これで素材には事欠かない。


 品評会での意見をもとに、薬草を使ったペット用の『シャンプー』も開発中だ。

 また、ペットと一緒に食べることの出来る『お菓子』も欲しいとの要望があった。


(もしかして、ペット事業ってもうかるのかしら?)


 キルデベルトからすると予想通りだったようで、冒険者を雇い、魔迷宮ダンジョンの探索を勧められた。


 私は早速、シュリーと専属契約をする。

 また、クラムを『プラントハンター』として雇い入れることにした。


 結果を残せば、シュリーを『王宮錬金術師に任命できる』と伝えておいたので、彼もヤル気を出してくれているようだ。


 ドルミーレ商会の骸骨兵スケルトン貸出レンタル事業も順調なようで、当面の間は化粧品部門との二本柱で運営していけるだろう。


 ここに大規模農業における収入も加わるので、私としても安泰あんたいである。

 素直に『税収もアップ♪』と喜びたい所だが――


「ああ、でも……」


 今度は輸送面を考えないと――上機嫌になった私だが、先のことを考えて落ち込む。都市や港をつなぐ街道の整備には、お金が掛かってしまうからだ。


 まあ、魔王様と勇者の戦闘では、街を壊される事はなかったので、既存の道を修復すればいいのだろう。なるべく、安くおさえたい所である。


 そこで再び、骸骨兵スケルトンの活躍となるのだが――

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