第26話 腐敗しにくく保存性が高い(2)
商談に使う部屋の中では一番豪華な部屋なのだろう。
きちんと
「ようこそ、ドルミーレ商会へ」
そう言って、こちらへ歩いてきたのは、
瞳の色は
私も大人陛下と会っていなければ、危なく
シグリダはあまり興味がないらしい。
イルルゥは
まあ、彼女の場合は普段から
普通の女性だったら、思わず
彼の名は『キルデベルト』。今回の取引相手である。
「わざわざ出向いて頂き光栄です、エレナ様……」
キルデベルトは手を前方で払うように大きく動かし、
頭を下げたまま「イサベラも
チラリと彼女を
(――て、バザンじゃない⁉)
思わず、声を出しそうになったが、ここで取り乱すワケにはいかない。
彼としても、雇い主より先に私たちと会うのは想定外だったのだろう。
工房で会ったのも偶然ではなく、私たちの情報を集めていた可能性がある。
あまり動じた様子がなかったのも、そのためだろう。
彼としては
イルルゥも気が付いたのか、少し
『またな』とは、こういう意味だったらしい。
イサベラも知っていたのだったら、最初から教えておいて欲しいモノだ。
しかし、肝心の彼女は明らかに嫌そうな顔をしていた。
思ったよりも、今日のイサベラには余裕がないのかもしれない。
私としてはイサベラの知人ということで、気楽だったのだけれど、当てが外れたようだ。けれど――
(百戦錬磨の商人を相手にするよりはマシかもしれないわね……)
と考え直す。まずは分析が先だ。
変わり者だが若くて野心家。古い魔族の社会に不満を持っているタイプだろうか?
甘いマスクの裏では、
油断は出来ないが、どちらかといえば、気が合いそうだ。
「今回は話を聞いて頂けるということで、このような場を
私は片足を引き、カーテシーを行おうとしたのだが、イサベラがそれを制した。
「こんな変態にエレナ様が
まず、わたしが殴ります――と物騒な言葉を
正直なところ、イサベラの戦闘能力は高い。
もし、本気で殴ったとしたら――
(この人、死んでしまうのではないかしら?)
いつでも動けるようにバザンも身構える。
「はっはっは、相変わらずだね、イサベラは……」
だが、そんな所もかわっ、ぐほっ!――キルデベルトは
(商人なのに空気を読まないの⁉)
いや、分かっていて自分から殴られるような発言をした気がする。
イサベラはイサベラで、完全に本気の目だった。
幼馴染みだというので『もう少し仲が良いモノだ』と勝手に思っていたのだけれど、違ったようだ。
それとも私が知らないだけで『世間一般の幼馴染み』というのは、皆このような関係なのだろうか?
「さあ、エレナ様、こちらに座りましょう」
イサベラがソファーへと私を誘導する。だが、
「待ってくれ」
と別の男性の声。バザンの声だ。
いつの間にかシグリダに抑え込まれ、床に
もしかして、とは思っていたけれど――
(シグリダって、実は強いのかも……)
どうやら、イサベラがキルデベルトを殴った際、反応したようだ。
完全にバザンの注意が雇い主であるキルデベルトの方へ向いていたのだろう。
そこをシグリダに抑え込まれたらしい。
いつもの愛らしい少女の顔ではなく、狩人の目付きをしている。
一方でキルデベルトは床に手を突くと、
「ふっふっふ、ご
そう言って、バザンへと視線を向けた。だが、
「お前と一緒にするな!」
と言い返されてしまう。どうやら、この二人の方が仲はいいようだ。
キルデベルトはダメージが大きかったのか、まだ立ち上がれずにいる。
知らない人が今の状況を見たら、私が悪役令嬢みたく映るのだろうか? 仕方なく、
「シグリダ、
と私は指示をする。彼女は
あわわわ!――とイルルゥ。慌ててバザンに駆け寄ると、
「だ、大丈夫ですか?」
と声を掛ける。バザンはそんな彼女を手で制しながら、
「ちっ、オレとしたことが――」
そう言って、立ち上がる。だが、ダメージは残っているらしい。
腕を痛めたようでグルグルと肩を回す。
「彼の名はバザン。
これでも、かなりの腕利きなのだが――とキルデベルトは立ち上がる。
こちらはダメージが深刻なのか、フラフラとしていた。
どうやら、シグリダにも興味が
バザンに肩を借り、キルデベルトは私の向かいに座る。
(私の知っている商談とは違うのだけれど、大丈夫かしら?)
イサベラとは幼馴染みだと聞いていたが、男女の仲ではないようだ。
興味はあるのだけれど、彼女の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます