第18話 美容にオススメ?でも食べ過ぎは危険!(1)
「この〈ショルダーカノン〉からは水を散水するの!」
水球が勢いよく発射されて、爆散! 周囲に
作業台の上に広げた魔道具の絵を「むふんっ!」と得意気に説明する私。
「この腕の部分は
とシュリーは冷静に質問した。
素人の絵のため、分かり
「よくぞ、聞いてくれたわ♪」
これは〈ドリルアーム〉! 回転するドリルが、どんなに
「エレナ様――」
とイサベラに名前を呼ばれた気がするけど、気のせいね。
段々と調子が出てきたので、更なる説明をしなくはいけない。
「そして、この大車輪は高速回転で土を
〈グランドスピナー〉! 土をドンドン掘り起こすのよ!
これで畑を耕すのも楽々だ。
「
この腰の
後は頭部にある、この穴からも種を連続射出する仕組みだ。
「
エヘン!――と胸を張る私に対し、
「
とイサベラ。
圧倒的じゃないか、我が魔道具は――
「これでは
戦争でもなさるつもりですか?――と
うっ! そう言われてみると、そんな気がしてきた。
(夜中にテンションが上がって、イメージを絵にしてみたのだけれど……)
どう考えても
「名前も『デスファーマー』に決めたのに――」
ガクリと落ち込む私に対し、シグリダが「元気を出してください」と
「そうですね。この装備ですと、重量に関して脚部が貧弱です……」
安定させるためにも、
「畑を踏み固めしまっては意味がないのでは?」
分離、合体機能で――とイルルゥもアイディアを出してくれる。
(みんな、ええ子や……)
「皆さん、エレナ様を甘やかさないでください……」
すぐ調子に乗りますから――とイサベラ。
その通りなので、返す言葉もない。
「いいですか? 今、魔王領は聖王国の占領下にあります。こんなモノを造っていては『反乱の意思あり』と
そう言って「わふぅ~」とイサベラは溜息を
確かに、その通りかもしれない。
聖王国が魔王国へ勇者を送り込んできたのは、勢力拡大する帝国を恐れてのことだ。帝国が介入する口実を
勇者による短期決戦を
本来は国民の不満を外へと向けさせるため、聖王国にとって魔王国はなくてはならない存在だった。
千年の歴史ある聖王国だが、その政治は既に腐敗しているのだ。
勇者という名の人間兵器を造り出す研究にも手を染めていた。
この時代の勇者はまだ『第一世代』。
つまりは使い捨ての勇者である。
試験段階であり、イサベラが心配するように、
恐らく、魔王様を倒した勇者はもう、これ以上戦うことは出来ないだろう。
私と陛下は、そのことについて知っているのだが、他の魔族は知らない。
そのため、勇者を警戒するのは当たり前の反応である。
逆に――そんな今の状況を利用する――というのが私と陛下の考えだ。
少なくとも勇者がいる前提で考えるのなら、魔王国側から聖王国側へ大規模な戦闘行為を行うことはない。
国民には屈辱に
また、聖王国の目は帝国に向いている。
この間に魔王国を立て直すのが、私と陛下の作戦だ。帝国の存在が脅威である以上、聖王国を倒したとしても、次は帝国を相手にしなくてはならない。
そうなると現状の戦力では
帝国が
聖王国には帝国から魔王国を守る盾になってもらわなくてならない。
現状、聖王教の立場からも、勇者の力は魔族に対してのみ使える。
人間との争いに勇者を投入しては、ただの
聖王教の教義からも『勇者を戦争の道具にする』とは考え
恐らくは『戦況が悪くなった際、少年兵として勇者を投入するだろう』というのが陛下の推測だ。時を見て『勇者が見付かった』と公表するのだろう。
聖王教としては『知らなかった』という免罪符となり『勇者が味方してくれていた』という大義名分が出来る。
帝国との戦いを『聖戦だ』とすれば、不利ともいえる戦況を変えることが出来るかもしれない。
(それだけに『敵も多い』と陛下は
魔王国に出来るのは、極力大人しくして、協力的な姿勢を見せることだ。
下手をすると聖王教が魔王国民を使って、戦闘兵器としての勇者の実験を行う可能性もある。聖王国に、その口実を自ら与える所だった。
(危ない、危ない……)
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