第17話 耐寒性のあるベジタブルフルーツ(2)


「そう身構みがまえなくても、お城じゃないし、簡単な料理よ?」


 安心してね♪――と私はウインクで返した。「左様ですか」とイサベラの反応は薄い。いつもの事なので、私は気にせず、


主食メインはナスを使ったホワイトソースのクリームパスタよ!」


 と料理の説明をする。流石さすがに白ナスは手に入らなかったので、黒ナスをで、皮をいたモノを使用する予定だ。


 勿論もちろん、ナスとベーコンのスパゲティも候補こうほがっていたのだけれど、今回はナスのかしたい。


 キノコとコーンを使用し、いろどりも全体的に白っぽくする。

 見た目もそうだが、優しい味になるだろう。


 だが、これでは食べている途中できてしまう可能性がある。

 しかし、そこは計算済みだ。


 まずは残ったナスの皮。これはベーコンといため、濃いめの味付けにしよう。

 次に買ってきてもらったブロッコリーとトマト、レタスのサラダを用意する。


 ゆで卵を切って、可愛く盛り付ければ完成ね♪

 大事なのはドレッシング。基本は食べる人の好みに任せる。


 けれど、今日はピリッとした辛味とマイルドな酸味のマスタードドレッシングで食べてみて欲しい。これで味と栄養のバランスが取れるわ♪


 そうそう、デザートに果物も買ってきてもらったのだ。

 食後に切って、出してあげよう。


 ガサゴソと紙袋の中身を確認――イチゴとキウイフルーツ?


「相変わらず、食べることに関しては手際がいいですね」


 とイサベラ。それ、めてないよね。なにを作るのかは説明したので、動かすのは手だけにして欲しい。私は気にしないことにして、


「さあ、早速、調理に取り掛かるわよ!」 


 腕まくりをした時だった。どうやら、シュリーの言っていた同居人が帰ってきたらしい。てっきり女の人かと思っていたら、青年だったのでおどろいてしまった。


 黒髪黒瞳で人間族の剣士のようだ。グラキエス領では珍しい特徴である。

 旅の冒険者なのだろう。


 魔物との戦いで負傷し、森で動けなくなっていた所を、素材集めに来ていたシュリーに助けられたそうだ。


 以来、怪我けがのリハビリを兼ね、護衛兼素材集めを手伝っているらしい。

 ニヨニヨとするシグリダとイルルゥ。


 こういう話は好きなようだ。私も嫌いではない。

 ただ、その顔は気持ち悪いのでめた方がいいと思う。


 彼は『クラム』と名乗った。元は帝国の人間で貴族だったらしい。祖父が権力争いに敗れて一家離散。今は冒険者となり、生計を立てているそうだ。


 魔王国と聖王国で小競り合いは度々たびたびあったが、国境付近の村や街はお互いに交流があったため、彼のような冒険者は珍しくない。


 魔迷宮ダンジョンでは魔石が採れるので、帝国に持ち帰れば結構な額になる。

 危険だが一獲千金も夢ではないようだ。彼もそんな冒険者の一人なのだろう。


 冒険者の間では『流浪るろうの魔剣士』の二つ名で通っているらしい。『勇者と魔王の戦いがある』とのうわさを聞き、仕事があると思って魔王領へ来たらしいのだが――


 結果は勇者一人による魔王様の殺害である。

 魔王国内は混乱。聖王国は魔王国からの入国者を全面的に禁止した。


 加えて、聖王国と帝国との間で、きな臭い動きもある。

 よってクラムは魔王国にとどまり、冒険者として生計を立てていたらしい。


 今日はシュリーの代わりに、他の工房へ手伝いに行っていたようだ。

 簡単な力仕事だったようで、組合における助け合いの範疇はんちゅうなのだろう。


「お礼に『ヨーグルト』をもらった」


 とビンをシュリーへと手渡す。私たちには「ゆっくりしていってください」と頭を下げた。元貴族というだけあって、教養もあるらしい。


 シュリーは否定していたが、一つ屋根の下に若い男女が二人暮らし。

 これはニヨニヨしてしまうというモノだ。しかし――


「それ、使わせてもらってもいい?」


 私の問いに「どうぞ」とシュリー。結局、私は色気よりも食い気らしい。

 これでデザートが一段階進化する。シグリダにも手伝ってもらう。


「私の錬金術を見せてあげるわ♪」


 勿論もちろん、使用するのはイチゴとキウイフルーツ。

 キウイフルーツはマタタビ科マタタビ属の果実だ。


 猫にとっては、神経の麻痺や呼吸困難など危険をおよぼす可能性もある。

 でも、私の仲間に猫はいないので安心!


 イチゴも使って、ここは2種類のフローズンヨーグルトを作ろう。

 作り方も簡単、材料を混ぜて冷やすだけ。


 暑い日にはオススメのデザートだ。

 早速、お昼の調理と一緒に取り掛かる。


 赤いイチゴは、すでに見た目が美味おいしそう。

 バランスの取れた甘味と酸味は、果肉が緑色のキウイフルーツの特徴だ。


 それぞれをすりおろして、ヨーグルトに混ぜる。

 ただし、出来上がりに切ったモノをえるので、全部をすりおろしたりはしない。


 生クリームを加え、イサベラにお願いして、き混ぜてもらう。

 氷の魔法はシグリダが使えるので、冷やすのも簡単。


 ただ、固まるまでに何度なんどき混ぜる必要がある。

 空気をき込むことで、口当たりが良くなるのだ。


 後はお皿に移して、切った果実をトッピング。

 ミントの葉を乗せれば完成である。


 さっぱりとした甘さの2色のフローズンヨーグルト。

 食後の楽しみだ♡

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