第一章 タケノコと食糧問題
第3話 初物を食べると75日寿命が延びる(1)
「エレナ様、準備が整いました」
と私の名を呼び、知らせてくれたのは
私より一つ年上の専属メイドだ。
寒さに強い種族で白い肌に銀色の髪が特徴的である。
頭部から伸びた長い耳が愛らしい。
可愛かったので拾った――というと私が変態っぽくなってしまう。
行く宛てもなく
普段はおっとりとしていて、温和な性格である。
だが、身体の発育はいい。放っておくと別の意味で食べられてしまいそうだ。
「時は来た、それだけだ」
私は集めてもらった精鋭たちへ向け、言葉を放つ。
目の前にいる女性たちは『
人間の容姿に近いシグリダとは違い、全身が毛で
この場合は人間よりも、犬に近い見た目をしている。
ここ『ノヴァランチ辺境伯領』に住む多くの
大型種もいるらしいのだが、私はまだ会ったことがない。
魔族ではなく、亜人として
そして、今立っている場所は彼女たちの暮らす村の広場であった。
『
「あらやだ、姫様カコイイ!」
「いやねぇ、もう姫様じゃないわよ」
「そうだったわ、王妃様になられたのよね♪」
「エレナ様、結婚おめでとうございます」
などと
終わるまで待っていると日が暮れそうだ。
「お静かに」
わふっ!――と
本能だろうか? どちらが上か理解しているようだ。
(効果は抜群のようね……)
彼女が『可愛いモノ好きだ』という事を知っている私としては、
まあ、
ピンと尖った狼の耳。髪はナチュラルブラウンのミディアムヘア。
目付きは
男性よりも女性に受けしそうな見た目をしていた。
私の護衛も兼ねているため、戦闘能力も高い。【無限書庫】に幽閉されていた時間を差し引くと同い年になるのだが――
そんな私と比べてみても、
しかし、彼女のフサフサの尻尾に触れる権利は、主人である私だけのモノだ。
「朝早くから皆に来てもらったのは、他でもないわ」
タケノコ狩りよ!――私は持っていた
そう、今の私は
これから山に入るための格好である。基本は長袖長ズボン。
首にはタオルを巻き、足には長靴を装備。
紫外線対策も兼ね、農作業帽子も忘れない。
「タケノコって
「ほら、竹林で採れる、アレよ」
「エレナ様、あんなモノが欲しいのかしら?」
「わたしたち、お弁当のおかずの相談をしただけよね」
と
いまいち、伝わっていないらしい。
魔王国――いえ、元魔王国の食糧問題。陛下の話によると聖王国『ヴォイドザーム』と大陸最大の国家である帝国『ルーチェンバーン』との関係が
聖王国が
軍事演習と
だが、規模からしても『春になると帝国が小競り合いを仕掛けてくる』と聖王国は分析したらしい。
それに備え、聖王国は食糧を始め、物資を多く集めていることにした。
食糧の値段が高騰しているのも、それが理由である。
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