第30話 出ていったら?恨まないよ、悲しむけど。(完)

「無事に帰ってきたな。」

「何を今頃言っているの?」

「いや、こうして風呂に入っていると、あらためてそう感じるんだよ。」

「そうね・・・同感だわ。」

 そう言いながら、シウンとトマホークは、浴槽で体を密着して寛いでいた。彼らの腕は当然、相手の腰に回っていた。


 突然、新生魔王を名乗る一団が現れ、魔族・人間・亜人の別なく、彼らの国々、土地に侵攻し、略奪の限りを尽くし始めた。

 アラサーに2人はなっていたし、もう一人の勇者ヒエンも同様だったが、若い勇者2人認定されていたのだが、彼らがまだ若すぎ、経験も浅いこともあり、それを助けるために、アラサー勇者達にも召集がかかったというわけだ。もちろん、彼らのパーティーメンバーも、ヒエンとトマホークのだが、はせ参じてきた。


 人間・魔族・亜人の軍の先頭にたち、彼らは新生魔王の軍を次々に破り、その12魔将達を次々に倒していった。大所帯のパーティーだったが、トラブルもなく進んでいた。そんなある日、

「シウン殿。トマホーク殿。夜は・・・若い勇者様達の目の毒、耳の毒ですから、謹んで下さいよ。」

と夕食の後、ため息をつきながら窘めようとした。

「ヒエン殿だけには、言われたくないですね。」

「それに、私達は一緒に寝ているだけで、慎んでいますよ。」

「わ、私は場所と一目をわきまえていますよ。」

そう言いながらも、シウンとトマホークからは、哀れな声と振動を感じさせられることが何度かあり、夜営の最中に、ヒエンは、パーティーメンバーの賢者と結ばれていて彼ももちろん参加しているのだが、場所と立場をわきまえているというのは、彼女達だけの主観でしかない。ちなみに若い勇者達とそのパーティーメンバー達、やっぱり若い、は顔を赤らめるばかりだった。


 危険な場面もあった。後半はそれが多くなり、敵の本拠地での戦いでは、新生魔王とその親衛隊相手に、かなり苦しい戦いを演じることとなった。それでも、何とか新生魔王を倒した。その凱旋の道のりで、若い勇者のパーティーの中に新生魔王の娘が、パーティーメンバーにすり替わって潜入しているのが発覚、それでひと騒動ということもあったが、最終的に無事凱旋となった。

 なお、新生魔王達は、ベアキャットに従っていたホモンクルス女達と同種の連中が作りあげた、色々な経緯で、ものだったらしい。ベラスケスの調査で判明し、それを産み出したダンジョンそのものが完全に破壊された。その方法もベラスケスが時間をかけて考えた方法で、念入りに実行された。

「ああ、何となく奴に感じたものを魔王にも感じたように思いますよ。」

とシウンはベラスケスに言った。


 そして、全てが終わると、再び二人は領内統治、経営にいそしむこととなった。

 もちろん、まず最初に6つの墓の前で無事な帰還を報告した。

「だから、こっちの方から崩した方がいいと思うけど。」

「いいえねこちらの方がいいわよ。」

 土木関係で使う魔法でのことで議論したり、設置する風車や水車の型をどうするかでもめたり、果ては菜園の手入れのやり方で議論をしたりする毎日に戻った。

「ちょっと腕が落ちたんじゃない?」

「そっちこそ動きが遅くなっているぞ。」

と剣、拳、魔法の鍛錬を試合のようにして怠らなかった。

「あなたの支援魔法・・・これだけは腕前が上がっているわね。」

 自分の力、魔力の向上をトマホークは確かめて褒めた。

「まあ、相性がよくなっているんだろう。」

とシウンは答えるのが常だった。

 領地は、人間も魔族も受け入れながら、遅々として全ての面で豊かになっていった。二人は、善政をしている領主夫妻といわれていた。そういう日々が続いていた。周囲からは、仲が良すぎるという評判だった。 


「じゃあ、そろそろあがろうか?」

 トマホークが頷くと、シウンはお姫様抱っこで彼女を抱き上げ、そのまま浴室を出て、寝室に向かった。

「彼がさ、離婚したらどうする?俺を捨てて、どちらかの方にいくか?」

 トマホークが思いを寄せた男達、彼らも彼女に想いを寄せていたが、待てなかったし、彼女がベアキャットのものになってしまっていて、色々複雑なことがあったが別の女性と、あの戦いの以前に結ばれていたし、彼女も自分を許せなかったし、もちろん彼らは彼女の救出に尽力したし、勇者としての彼女への経緯は忘れず、その後も本当に心配していた、と今回の旅で過ごしたり、凱旋式で再会もした。

「そうね・・・。どうしようかしら?私がいなくなったら、あなたは死ぬ?怨む?」

 もしかすると、そうしてしまうかもしれない、と彼女は思った。

「死ぬほど強くないさ。まあ・・・恨まないが、泣くだろうな。」

「もっと若い美人の女の子を娶って、慰めて貰えば?」

「一応、考えておこう。」

 そういう女では、だめだろうな、とシウンは思った。

「そういうのは・・・私から言ってだけど・・・なんか嫌。」

と言ってトマホークは、彼の首に腕をまわした。その時には、寝室に入りベットの真ん前だった。そのまま濡れた体で、2人では少し小さいベットの上に倒れ込んだ。

「多分、君だけにしかできないよ、俺の傷を嘗めるのは。」

 二人は、そのまま唇を重ねた。お前だけを愛する、あなただけを愛するという言葉も、想いも彼らにはなかった。ただ、温もりが欲しかったし、他の誰にも代用できないと思っていた。長い口付けが始まった・・・。

「あなた以外では、私は自分を許せないわ、こんな汚れた自分を、多分。」 


 その二人にも、その後数年して子供達が生まれた。

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劣化ハーレムと交換されたけど 確門潜竜 @anjyutiti

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