第16話 魔王との決戦
魔族の精鋭も含めたシウンの一隊、既に軍といえる程度になっていたが魔王城の要の砦に攻めかかっていた。シウンは、投石器、投槍器、大型石弓、そして魔導士、魔法修道士達の魔法の援護の中でシデン達とともに、飛び込んでいった。周辺の防御施設を、既に破壊していたし、城壁もかなり破壊していたから、あっという間に城壁の中に突入してしまった。
「なんだー、これがシウン殿の力かー。」
勇者ヒエンが、驚いたように叫んだ。そして、大暴れするぞーと戦い始めた。
「負けられないな。」
と言ってそれに続き、
「これ以上はいかせん。」
「ここがお前の墓場だ、勇者よ。」
と立ちふさがる魔王軍の幹部?らしき男女?の魔族騎士が立ちふさがった。
猿顔や鹿頭の巨漢の二人は、何故かシウンの前に、ヒエンの前ではなく立ちふさがって、挑んできた。
「ヒエン様。先に行って下さい。ここは私が引き受けます。」
とシエンは言ったものの、どうして自分の前に来たのかな、やつらの本能かな?とも考えていた。
「主様。ヒエン様まで支援して大丈夫ですか?それに、遠くまでいかれましたが、それを支援しても。」
シデンが不安そうに、剣を構えながら囁いた。
「それほど負担はないよ。それにヒエン殿には、相性がいいのか、勇者故に負担が少ないのかもしれないな。」
「それならいいのですが。」
「?」
不機嫌そうなシデンだった。その顔はなんか焼きもちを焼いているように見えて、すねているようで、ひどく可愛いな、とシウンは思ってしまった。思わず、彼女を抱きしめてしまった、その場で。
「主様。こんなところで。皆が見てますよ。」
と言いながらシデンは逃れようとはしなかった。スピット達が膨れて、睨んでいるのに気が付いても、すぐにはシウンは彼女を離さなかった。
その日の内に、その砦は完全占領した。が、その後が大変だった。
流石に、本拠地の守りの要の砦を落とされたのである、魔王は陣頭指揮で、持てる兵力を集められる限り集結し、攻勢の構えを取っていた。出陣は、そう遠くないと感じられた。
それに対して、人間の各国軍は集結しつつあった。魔王に敵対している魔族の部族は既に全軍がはせ参じていた。人間達との同盟軍が敗れれば、自分達の未来はこの上なく絶望的だからである。勝利か死か、なのである。亜人の各部族長も集まりつつあった、少し動きが鈍かったが。
さて、その人間諸国の一部が、多少の兵力しか提供せず、その部隊が勇者に従って参陣してきた。その勇者というのが、ベアキャットだったのだ。
そして、魔王討伐の先頭には、そのベアキャットがなり、他の国々、全ての部族の将兵は彼を助勢することを要求してきたのでする。各国は、当然難色をしめした。勇者シウンのチームに顔を向けた。
「魔王さえ倒せば、それでいいのではないですか。私はかまいません、誰の下にいようとも問題はありません。」
彼は、立ち上がって、そう言って頭を下げた。皆がほっとする空気が漂った。
ベアキャットは悠然とした彼らの前に現れた。サイウン達もいた。彼女らは、表情を変えなかった。
"前より強くなっているな。"シウンにはわかった、わかったような気がした。無表情だった。
「あれが主様の・・・かつての最強のチームメンバーか?」
シデンは、聞かせるように呟いた。スピット達は、何も言わなかった。頷きもしなかった。シデンは勝手に小さく頷いた。
「何人に見える?」
「?」
「3人?」
「3人?4人かな?」
「う~ん。はっきりわかりません。」
「シウン様は何人に?」
「5人だが・・・6人?」
「?」
「え?」
「馬鹿な・・・。」
「どうして・・・。」
「本当ですか?」
「一体何が・・・。」
魔族の騎士達も加えて、シウン達は魔王城周辺の砦の攻略、索敵に多用されることになった。そして、いよいよ魔王城への総攻撃となった。
「それはどういうことだ?」
シデンが作戦会議で思わず叫んだ。シウンが、すかさず彼女を抑えた。シウン達が魔王城の攻撃の先頭に立つことが求められたのである。まるで、彼の犠牲で、ベアキャットを魔王の前まで速やかに進めさせるというものだった。
"なんでこんなことが、あっさり決まったんだ?"
「申し訳ない、勇者様。何故か、あのような意見に同意、賛成してしまったのです。まるで操られていたかのように・・・。」
シオンの後見の国々の将、修道士騎士団長達が、魔族の将、エルフの戦士長までが会議が終わると駆けつけてきた、シウンのところに。
"6人目か?"シウンの直観。
「魔力の働いた形跡はないね。臭い、匂い?無臭だったようだが、無臭の臭いかな?そうだな、それだ。誘導する物質が漂っているようだ。」
ベラスケスは、興奮するように説明した。
「すると、これが6人目の力かな?今まで、彼の周囲ではこのようなこと言われていなかったようだし・・・。最初の2人が結界と力のアップ、支援、3人目が性行為を通じた洗脳、支配かな?君のチームを乗っ取る時現れたとして・・・。勇者トマホークの時には、それのパワーアップで一人が追加かな?もう一人は・・・魔王との戦いでかなり深手の怪我重傷や瀕死の重傷だったという噂もあったから、それが短期間で活動を再開しているから、その時点で回復の使い手かな・・・。それも彼だけ専属の・・・増えている・・・興味深いな実に・・・。」
とベラスケス。本当に愉快そうだ、という顔だった。
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