第14話 先を急ぐぞ
ベアキャットは、トマホークをしきりに凌辱するように抱いた。毎日ではなく、その間に四人の誰かを抱いた。それが、支配をより完璧にできると思っているかのように。そして、その考えが間違っていないことを、彼女らは実感していた。
「遅れを取り戻すぞ。今度こそ、魔王を倒す。先を急ぐぞ。」
その彼の姿に、?を感じてならなかった、サイウン達は。勇者をもう一人、戦力に加えた。サイウン達も高位の聖剣やらの強力な武器を持たせることができた、他から奪ったものだが。戦力は、以前魔王に後れを取った時に比べて確実に、大幅アップしている、誰もがそれには同意していた。
だからといって、これで魔王との戦いで万全というのにはほど遠いというまが、元勇者トマホークも含めた5人の考えだった。魔王だけならば・・・それでも難しいかも・・・、魔王の周囲には、その親衛隊もいる。上手く、例えば魔王城内部、魔王の寝所にまで忍び込んで、寝込みを襲えたとしても、そこには側近、身辺護衛の、多分、精鋭としかいえない戦士達がいるだろう。彼らと戦っている内に、次々に手強い連中が駆け付けて・・・。
もちろん奇襲、潜入は一概に悪い手ではないが、それしかないと追い込まれて行う場合は、無理が出るし、とかく無理は勝利の女神から嫌われがちだ。一国の軍の先頭に立つ、その支援を受けるのが得策だろう。正攻法も選択にいれてこそ、奇策も奇襲も潜入も生きて来るものなのだ。ベアキャットを、勇者認定した、後援する国々はどうしたのだろうか?資金などの支援はしてくれているようなのに、あまりにも消極的なように思われる。魔王を倒すことで、発言力、威信、もしかすると覇権まで手に入れられるかもしれないというのにだ。それとも、ベアキャットが、それを拒否しているのか?自分一人だけの功績にしたいのか?それなら、ベアキャット一人の功績にしてよいのか、とその国々の王侯貴族に問いたかった。ベアキャットは、彼女らをして、未だに分からない男だった、周囲の3人または4人の女達のように。
「前は二人に見えていたのに、最近は三人に見えることが多くなってきたよね。」
「でも、まだ二人にみえることが多いね。」
「不思議な連中だけど、まだ、はっきり特徴が分からないわね。」
「整理しないといけないわね。」
「お前達は、前の男・・・勇者シウンのことが・・・彼が、ベアキャットと再度戦うことになったらどうするのだ?シウンと戦うのか?」
割り込んできたトマホークが心配そうに尋ねた。四人は悲しそうな顔をした。慌てたトマホークを見て、
「シウンは元気でいる?」
とレイカンが尋ねた。内心では、しまったとようやく言えたという正反対の叫びが心の中でおこった。他の3人は、やめてよとよくやったと心の中で叫んでいた。どうするか、とトマホークは一瞬戸惑ったがね言葉が止まらなった。
「ベアキャットとのことは多少とも伝わっていたから、彼の話になると自然に関心が向いた・・・。彼も、魔王討伐の旅に出たと聞いているし、その途中で魔族に襲われている村や都市を救っていると聞いたな。それから、5人の女達を連れていると・・・。4人はベアキャットの女、一人は魔族の女・・・その魔族の女を介して、魔王と対立している魔族の部族と提携を図っているとも・・・。」
“あの人らしいわね。”
“魔族との和解?提携?本当にすごいわ。”
“私達がいなくても、彼はすごいのね。”
“私達は、彼のために何もできていない…。”
何となく4人の考えていることが分かるような気がしたトマホークは、言いづらそうにしながらも、言わなければならないような気もしたので、
「そのベアキャットに捨てられた4人の女たちと魔族の女とだが、仲は良いようだぞ…。も、もちろん無責任な噂ではあるが…、男と女の仲で…捨てられた女達や魔族の女とやれるなどと…。」
“私は、彼女らに何を言いたいのだろうか?”と思い至って、彼女は言葉を呑み込んだ、でてこようとする言葉を。恐る恐る、彼女らの顔を見ると、
「彼女らの気持ちは分かるわ。」
「彼だから、受け止めたのよ…。」
「分かっているわ、分かっているわ。」
「彼を恨まないわよ。」
“私達の場所はないかもしれない、そんなことは分かっているわ。”という顔にも見えた。
「そうだな。これからどうするか、だな、お互い、考えることは。」
それから、つい、
「そのベアキャットからの中古女達だが、彼がベアキャットと再選することになったら、彼、シウンのために戦うと思うか?」
口に出してからしまったと思ったが、遅かったし、気になっていたことでもある。それは、目の前の4人にも当てはまることだったからだ。
「た、多分…ベアキャットのために戦うと思うわ。」
「私達と同様に…。」
「彼女達が、彼を真に愛するようになっていてもよ。」
「あなたが、彼のために戦うだろうということと同じよ。」
彼女達は今にも死ぬような顔で、淡々と答えた。トマホークにも、彼女達の言葉通りになるだろうということが何となく分かっていた。
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