第10話 お前らは俺の女なんだ!
「あいつら、大丈夫かな?ひどい扱い方を受けてないかな?」
とシウンは、あれからいつも思っていた。ただ、ヒエンのチームとの戦いぶりから考えると、少なくとも体力は大丈夫そうだと思えた。
「ごめんな…。」
時々、そう呟いて、シデンには隠れて、涙ぐんでいるシウンだった。
その頃、ベアキャットはというと、かなりあ荒れていた。ただ、人目につかない、野営の天幕の中であった。
「おい、どういうことだ?あのブス女勇者のヒエンは生きているそうじゃないか?お前らは言ったよな、奴が死んでいるとな?他のチームの連中も死んでいると言ったよな?」
サイウン達は、無言でうなだれているしかできなかった。半裸の、見事な容姿がわかる状態で、館の一室でベアキャットに見下ろされていた。
「何か言え。何が不満だというんだ?お前達は、俺の女なんだ。俺はお前達を屑野郎から救って、愛を与えてやっているんだ。それが、どうしてわからないんだ?」
"どこがだ?"四人はそう思っていたが、反論も抵抗もできないでいた。これから、凌辱的に、乱暴に"愛される"ことになるのもわかりきっていた。
でも、抵抗できなかった。涎を流してぐったりして、いるだろう自分の姿が見える思いだった。
「姦婦…。」
4人は唇を噛みしめた、その言葉を口にして。ノロノロとして立ち上がって、彼の後に、彼と2人、いや3人?の後に続くしかなかった。
「勇者様に、食事の支度をなさい。」
時々2人にも、3人にも見える、ベアキャットの周囲にいる女の一人が言った。それに従う彼女らだったが、彼女らの正体を暴く、暴こうとすることで、救済がもたらされるような気がしてきていた。
「でも、もう戻れないのよ、シウンのもとには。」
「多分、彼は迎いれてくれるだろけど…、できないわ。」
「せめて、彼のためになって死にたい。」
「そうね。でも…私達、彼に…いえ、彼女らに支配されてしまっている…。」
「シウンを平気で殺すかも…。」
「そんなことしたくないけど…。」
「もう、本当に…駄目なのかしら?」
「殺す前に死ぬ…その前に…。」
食事の支度しながら、彼女らは目で語り合っていた。そして、準備している今日の料理は、シウンが作ってくれていたものだった。諦めたような思いを吐き出しながらも、彼女らは心のどこかに、もう一度シウンとともに生きる希望を捨て去れない自分がわかっていた。舌鼓をうって、彼女らの料理を食べる4人?を見ながら、女3人?は無表情だったが。
「4人よ。ようやく見えてきたわ。」
まだ遠いが、少し近付いた気が彼女らは、残りの食材で作った食事を食べながら思っていた。その夜も、また、彼女らは彼に抱かれる、ということは分かっていた。
「ベアキャットを、後見しているのはどちらの国でしょうか?」
シオンは、再洗礼派の高位の司教に尋ねた。教会も、神の教えを伝えるだけでなく、魔族との戦いに加わっているから、各国、勇者達の動向には耳目を動かしていたから、そのことは当然わかると思ったからだ。競争相手でもあるから、情報を集めているはずなのであるが。勇者を後見していることで覇権を握ることもできる。
「それがな・・・、それが分からない、よくわからないのだ・・・。」
「そうなのです。何故かはっきりしないのです。」
同派の副聖修道女騎士団長が補足した。
「は?でも、勇者認定を受けているということは・・・。」
「運命決定論教会が認定しているのだが、・・・。」
「口ごもっている、という感じなの。」
また、副騎士団長が補足した。
「後見の国々についても?」
「彼らも言わないし、名乗り出ない。」
今度は、司教自ら最後まで言った。
「ただ、全く情報がないではない。」
「?」
「証拠はないのですが…。」
副騎士団長が、声を小さくして言った。
「その国と言うかですが。」
その国名、人物は意外だった。
「グラマ帝国?タイガ王女?ロキド神聖王国?ライニン王子?・・・。国単位ではなく?認定は国なしにもできますが・・・認定の責任者は?」
シウンの質問は続いた。
「勇者を選ぶ大会を主催したらしい。」
「どんな?」
「死合と言った方がいいものらしい。」
「タイガ王女様がそんなことを?」
タイガ王女以下、日頃、民思い、博愛的な、賢明な人物と言われている。シウンも、その噂を聞いていた。
「あくまでも、タイガ王女様達が、というのではなく、ドレドノート地方の国々の、国としての合意で…。」
「では、タイガ王女殿下達の意志ではなく?」
「いや…、それが、タイガ王女殿下方の主催、主唱だったとか…。」
「はあ~?」
自分で言いながら、半信半疑の2人の話に、シウンは頭が混乱していた。
「あの方々か?兄弟姉妹を追放していると聞いているがね。何人かは、そのうちの、密に殺されているとも、噂されている。」
それは、パラケウスが、この後、シウンに言った言葉だった。
「そのタイガ王女の領地に魔境と呼ばれる古代の遺跡があって、ベアキャットの最初の仕事が其所だったそうだ。夜な夜な、そこからでてくる魔獣退治ということだったらしい。その後のことは聞いていない。」
“そこが核心か…。しかし、調べに行くわけにはいかないしな。”とシウンは悩んだ。
「ねえ、あの3人は何者なの?わ、私よりいいの?」
サイウンは、ベアキャットに荒い息を整えながら、彼の下で甘えるように、拗ねるように言った。何としても、少しでも、3人の秘密を、と思っていたのである。
「3人に見えるようになったか?いや、そんなことどうでもいいだろう?お前の体でわからせてやるよ!」
と言って、彼女の体に挑みかかった。快感を感じつつも、体が勝手に反応しながらも、本当にほんの少し、また、わかったと彼女は自分自身を納得させていた、他の3人と同様にだった。
4人の情報交換は、ベアキャット達に気づかれないように、密におこなわれなければならなかった。彼の目の前で、他の2人が彼に抱かれている前で、彼の命令で体を絡み合わせながら、互いの耳元で囁きあうこともあった。
「3人目は、栗色の髪の黒い肌の女?」「私が見たのも同じ。」
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