二日目 恩返しにて 前編

「ふぅ……暑い……」


「申し訳ございません、アナタのお手を煩わせる事になってしまって……」


「生まれつき肌が弱くて……暑さにも慣れていませんし……体力も……」


「まあ、お水を汲んでくださったのですね。ありがとうございます」


「……んっ……んぅ……はぁ」


「結局、全ての作業を任せる事になってしまいましたね……」


「どうぞこちらへ……少し遅いですが、木陰でお昼ご飯にいたしましょう」


「ええ、体調の方は大丈夫です。日が傾いて来ましたし、陰に入ってさえいれば落ち着きますから」


「サンドイッチです。簡単な物ですが、その分今晩の食事は頑張らせていただきますね」


「……あっ」


「ごめんなさい……私ったら……はしゃいでしまって……」


「先を急ぐようでしたら……お邪魔してはいけませんよね」


「これから出発すれば夜更け前までには街へ行ける筈です……」


「私の事はどうぞお気になさらず……え?」


「今晩も……泊まってくださるのですか?」


「そんな、迷惑だなんて。ええ……ええ、是非とも休まれていってください」


「…………嬉しい」


「な、なんでも無いです。お気になさらず」


「ささ、どうぞ召し上がってください。タマゴもお野菜も、街で買い出しをしたばかりですから新鮮ですよ」


「はい、あ~ん」


「……? どうされました?」


「遠慮なさらず。これは私からの恩返しなのですから」


「たくさん、お世話させてくださいまし」


「お恥ずかしがらずに……口を開けて……」


「美味しいですか?」


「ふふっ……良かった」


「今晩は精の付く料理をたくさんご用意いたしますね」


「楽しみにしていてください」


「また照れて……お可愛らしい……」


「今晩もどうか……ゆっくりと寛いでください……ね?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る