妖しい雰囲気のシスターが住まう教会に駆け込んで~あら?こんな夜更けにどうしました?~
本庄缶詰
一日目 雨の夜更けにて
「……あら? こんな夜更けにどうしました?」
「……雨で街道が塞がっていた? まぁ、それは大変でしたね」
「獣道を歩いていたらこの教会が見えて来たと……うふふ、それは運の良い事で……」
「ささ、これでお身体を……んっ……風邪を引いては堪りませんから」
「お恥ずかしがらずとも良いのですよ。今は自身のお身体の心配をなさってください」
「くすぐったいですか? うふふ、お可愛いこと……」
「よろしければ今晩だけでも泊まってはどうでしょう」
「部屋も空きがありますし……ほら、あまり動かないでください?」
「泊まるのでしたら、拭くよりもお風呂に入る方がよろしいでしょうね」
「街までの距離ですか?」
「この辺りは獣も多いですし、それにこの雨です。旅を続けるのはあまりにも危険かと」
「遠慮なさっているのでしたら不要です」
「泊まっていただけるのですね。嬉しい」
「何故、嬉しいのか……ですか……?」
「街からも程遠い場所で一人、生活をしていると」
「人が恋しくなるものなのです」
「元々人のお世話をするのが好きな性質でしたので」
「まずは浴室でお身体を温めてください」
「まだお湯も温かいでしょうから」
「何故って……私が使った後だからですが……」
「嫌でしたらお湯を入れ替えますが」
「……? どうしたのですか、そんなに慌てて」
「早く入った方がよろしいかと……はい、温かいスープを用意してお待ちしています」
*
「ふふ……頬が赤くなっていますよ?」
「湯加減はいかがでしたか? 少し熱かったでしょうか?」
「丁度良かった……なら、良かったです」
「スープと……パンをどうぞ。生憎食事は夕刻に済ませてしまいましたので、質素な物になりますが」
「人に料理を振る舞う機会に慣れていませんので……味が薄ければ言って下さい」
「すぐに別の物を……美味しい……?」
「……良かった」
「おかわりもありますから、遠慮しないでくださいね」
「……………………」
「あまり見ないで欲しい……? 何故ですか?」
「恥ずかしい……」
「申し訳ございません。気が付かなくて……」
「ただ、美味しそうに食事をするアナタが可愛らしくて……つい」
「また顔を赤らめて……本当に、可愛らしい……」
「あら、ごめんなさい。私ったらまた……」
「お気になさらないで。久し振りに人を招き入れたから、年甲斐もなくはしゃいでしまっているだけですので」
「…………」
「もし、アナタがよろしければお願いを頼みたいのですが」
「庭の畑が獣に荒らされてしまって……お手を借りてもよろしいでしょうか……?」
「一日中かかってしまうと思うのですが……」
「……! よろしいのですか?」
「……良かった」
「お優しい方なのですね。迷い込まれて来たのがアナタで良かった……」
「ありがどうございます。では、明日……よろしくお願いいたします」
「今日はお腹をいっぱいにして、ぐっすりと眠ってくださいね」
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