ゲーム
「なあ、ゲームやらない?」
「私最近のゲーム知らないよ?」
それは知ってる。お前幽霊だもんな。
「マ◯オカートなら知ってるだろ?」
「……… テレビゲームはやったことないの」
「……あーうん。とりあえずやってみない?やったらハマるかもしれないし」
この類のものをやったことがないと言うのは予想外だったけれど、今まで俺が学校に行ってる間にゲーム機に触れた様子がなかったのを考えると当然なのかもしれない。というか、ユリアの家は結構厳しい家庭だったのだろうか?
「そういえば、何でいきなりゲーム?」
「ユリアは俺がいない時やることなくて退屈だろ?」
「知ってる?結構掃除って大変なんだけど」
すぅぅう、と冷たい目線を向けられ、ちょこっと怯む。
「う……。確かにそうなんだろうけどさ、一日中かかるわけじゃないだろ?」
「そうだけど.…」
「だから暇つぶしの道具くらいあったほうがいいと思ってさ」
そう言って、俺はゲームを起動する。機械は今流行りのス◯ッチじゃなくて、一つ前のW◯Uだ。
「ほい、これコントローラー。操作は結構簡単でボタンがアクセルになってて、方向の操作はコントローラーを傾けるとできる」
「ありがと」
ひとまず、最初は一番簡単なステージを選びプレイを開始する。
「あ!体当たりで落ちた!」
「ああ!大樹君亀ぶつけないで!」
「やった!ミサイルで3位まで上がった!」
隣で十センチほど浮かびながら、はしゃいでいるユリアを見ていると自分も楽しくなってくる。
それに、カーブの度に自分ごと傾いてるのも見ててほっこりする。
そして最後の急なカーブで事件は起きた。
「おーもう少しで追いつくぞー」
「その前に私がゴールするか、ら……?」
――ぽすっ
とコントローラーを持つ俺の腕と胸の間に挟まったのだ。
その瞬間ユリアの頬が真っ赤に染まり、車はクラッシュ。当然俺もクラッシュした。
そのまま、ユリアは瞬間移動のように後ろに下がった。幽霊だからできる軌道だな。
「あ、わ、へ、えっと、」
「お、え、ん?」
そう、たまたま腕の中にすっぽりおさまってしまっただけなのだ。他意はないはず。なら恥ずかしがることなんてないのだ!
そう言って勢いで誤魔化そうとしているあたり俺も結構動揺してたりする。
「あ、ゴールした。……そ、そう!これは大樹君を動揺させてその間に勝つさくせんだったんだ!」
「そ、そうか!そう言う作戦だったか!いやーやられたなぁ!」
とんでもない、茶番を繰り広げた気がするが気にしない。気にしないったらしないのだ。気にしたら負けだ。
「それにしても、このゲーム楽しいね」
「だろ?これで寂しくないんじゃないか?」
「は、はぁ!?誰がそんなこと!」
「いや、だって俺が帰ってくるとすっごく嬉しそうにするじゃん」
俺がバイトを終えて帰ると、満面の笑みで迎えてくれるのだ。しかも浮いてるのにちょっと上下するという幽霊版スキップをしていたりする。
「そ、それは違うもん!えっとほら!あれだよ!あれ!」
「わかってるって。人恋しいだけだろ?3年間も一人でいたんならそうなるわ」
焦ったように否定するユリアを見て少し苦笑しながらそう言う。流石に俺も会ってまだ一週間そこそこの俺を好きになるとか思わんし、向こうからしたらただのダメ男だろうから、良くて弟認識だろうと思ってる。
「う、うん?……うん。その通りだよ」
「それじゃあ次は別のゲームやらないか?【大乱闘シュタットブラザーズ】って言うんだけど、爽快感が病みつきになるゲームなんだ」
「うん!一緒にやろ!」
そう言って目を輝かせるユリアを見て、俺の
「大樹君、ゲームは一日2時間までだよ?」
残念。仲間にはなってくれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます