学校

「よーし。行ってきます」

「いってらっしゃーい。あ、ちょっ」


 ユリアに見送られて俺は制服に身を包み家を出た。今日は4月9日。始業式である。


「いやー久しぶりに輝夜と久志に会えるのか楽しみだ」


 俺の幼馴染の輝夜と久志。俺が親父の転勤について行かなかった理由の一つだ。

 竜胆りんどう輝夜は黒髪ロングの和風美人ってやつで、イメージぴったりの江戸から続く神社の一人娘。春休みは巫女さんとして大規模な修繕で忙しい神社を手伝っていたのだとか。ちなみに天然がちょっと入ってて普段の静かな雰囲気と相まって浮世離れした印象を与える。

 近藤久志は打って変わってとにかく軽い。クラスに一人はいるお騒がせキャラって感じだけど、実はあいつも明治から続く寺の一人息子。ちなみに今年の春は爺さんに連れられて山籠りをしてたんだそうな。南無阿弥陀。


「んーこう見るとなんで俺みたいな普通の奴が二人と仲良いのかわかんねえな」


 ほんと、神社と寺の跡取りって社長令嬢、令息みたいなもんじゃ………「神社」と「寺」?……これ結構やばくないか?俺は霊感とかからっきしだからユリア以外見えんけども、というかなんでユリアが見えるのか謎ですらあるんだけど、あの二人の血統ならワンチャン霊感持ってるかも……?はっはっはっは。笑えねえ。万が一家に連れて行こうものならユリア速攻で消されるぞ。これは、二人を近づけないための口実が必要かもしれーー


「大樹おはよう。いつもに増して可愛い」

「ううぉうぃ!?」


 いきなり、後ろから抱きつかれ思わず変な声を出してしまった。やわい、やわい感触が背中に……ッ!?


「スンスン……臭くない?何があったの?」

「え?ちょっと待って。俺って臭くないと疑問になるようなキャラだったの?」

「だって、大樹自活力ゼロだから一人暮らししたら絶対に臭うと思ってたんだよ?」


 さすが俺の幼馴染、完璧だよ。ユリアがいなかったら確かに制服とか臭ってたかも。


「はっはっは!俺も成長したのだよ。と言う訳で、俺一人でもやってけるから家来ないで大丈夫だよ」

「まだ私何も言ってないけど?……もしかして何か隠してる?」

「い、いいいや?な、なな何も隠してないけど?」

「ふーん……まぁいいけど。……確認しにいこう(小声)」


 ほっ…ごまかせた。(出来てない)ユリアよ安心してくれ。君の安寧は保たれた。


「よっ!お二人さん。朝からお熱いね!」

「お前は親戚のおっちゃんか」


 いつの間にか腕に抱きつかれながら歩いていた俺たちに、茶髪のイケメンが話しかけてきた。言うまでもなく、こいつは俺のもう一人の幼馴染である


「久しぶりだな久志」

「大樹に輝夜も久しぶり」

「わたしあなたみたいなチャラ男しらない」

「ゴフッ」


 うん。いつも通りだ。輝夜がなぜか久に対して塩対応なのも、それで久志がオーバーに崩れ落ちるのも。やっぱなんか


「お前らと一緒なの楽しいわ」

「お?なんだ?1週間でホームシックか?大樹君?」

「それなら家に来る?お母さんは歓迎してくれるよ?」


 はは……お父さんが怖えよ。


 △▼△▼△


「クラス一緒でよかったな」

「去年はバラバラだったものね」

「俺すっごく寂しかったんだぜー」


 今年は2-Bで三人同じクラスだった。

 クラスは大体去年のメンバーで固まって話していて、俺の席は一番後ろの窓から2列目だった。


「よーし席につけー」


 全員が席についたが、風邪でも引いたのか俺の席の隣だけ空席だった。


「あー。今日からこのクラスに転校生がやってくる。と言う訳で入ってこーい」


 先生の言葉に騒ついた教室に、ガララと扉を開けて一人の生徒が入ってきた。


「初めまして。レイエス・アリアよ。クォーターで日本の血は四分の一入ってるわ。だけど日本生まれ日本育ちだから、ほとんど日本人みたいなものよ。これからよろしく!」


 そう言った彼女は、銀髪赤眼の超美人で、首に十字架を下げているなんか気の強そうな感じの子だった。ちなみに胸はユリアと輝夜が圧勝してる。というか、もはやウォールマリアだ。


「よし、レイエスさんはあそこの一番後ろな。森山ー。隣なんだから面倒見てやれよー」


「へ!?」


 ちょっと待って!?いきなり外国人美少女と仲良くとか無理だよ!?こっちは年齢=彼女無しだぞ?あんな美少女前にした事ないから緊張してそれどころ………輝夜とユリアがいたわ。あれ?じゃあ意外といけるかも?


「森山 太樹です。よろしくレイエスさん」


 そう言って俺が隣に座ったレイエスさんに声をかけると彼女はこっちを見、下からの上まで見た後何故か二度見をし――


「……ぷっ。こちらこそよろしく」


 ――笑った。


 コイツ……ッ!今確実に俺のフツメン&平均スタイルを見て笑ったぞ!前言撤回だ。俺絶対コイツと仲良くできる気がしない。多分喧嘩になるわ。


 この時俺は輝夜がこっちを見ている事に気づいていなかった。

 もし、これに気づいていたらあんなめんどくさい事にはならなかっただろうと、未来の俺は思う。

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