異変

 4月6日。入学式まで後二日の早朝。俺は1人部屋で朝ごはんを前にしながら頭を抱えていた。


 なぜ頭抱えているのか……それはこの一週間の生活と目の前で湯気を立てている朝食が原因だ。


 △▼△▼△


 4月1日午前2時


「うーん……といれ」


 前日結構早めに寝てしまった俺は夜中に目が覚めてしまった。


 そしてムクリの起き上がった俺の前にいたのは――


『出ーてーいーけー』


 ――貞子だった


「……なつかしーな。動物たちの森の完全攻略目指して五徹した時以来だ」(幻覚)


 そう言って俺はスルーした。



『な、なんで……?』


 △▼△▼△


 4月2日


「1人暮らしサイッコー!」


 飯はインスタント。昼間は一日中お菓子片手にゲーム。急に物が落ちたりガタガタいったり、窓に血文字が書かれたりしてるのは困るけど安いアパートなんだからしょうがない。そう思って俺は気にしなかった。


『この子どうなってるの……?』


 △▼△▼△


 4月3日


「これは……ちょっと散らかしすぎか?」


 入居四日目にして俺の部屋はゴミ屋敷一歩手前まで進化を遂げていた。……退化と言うべきかもしれない

 それはともかく、流石にまずいと思った俺はホームセンターに立ち寄り掃除用具を一式買ってきたのだが


「うーん。どこから手をつけたらいいのかわかんね〜。……ま、時間をおけばなんか思いつくでしょ」


 あまりの惨状に現実逃避した。


『親はなんでこの子に一人暮らしを……ネグレクト?』


 △▼△▼△


 4月4日


 掃除しようと思っても、やる気が起きずいつも通りゲームをしていた。

 いや、いつも通りっていうか、なぜか幻聴が聞こえてくる時点で俺の体調はいつも通りじゃないんだけど。とりあえず半日ぶりに飲み物を飲みに行こうと立ち上がって――目の前が真っ暗になり、ゴン!という音と一緒に意識が消えた。


『ああー!まともな食事を摂らないから!』


 △▼△▼△


 4月5日


「んあ?……あさ?」


 柔らかなかな感触と共に起きた俺は――なぜかベットの上にいた。


「?俺床に倒れた気が……というかめっちゃ綺麗になってない!?」


 そう!見るのも嫌になるあの汚部屋が凄まじく綺麗になっていたのだ。まるで入居初日のように。

 しかもそれだけじゃなくテーブルの上には卵焼きが、チョンと置かれていた。


「????……寝てる間に片付けプラス料理したってこと?……いや、そうか。あまりの苦行掃除で記憶が飛んだのか」


 そう思って俺は取り合えず自分を納得させた。


 ちなみに卵焼きはとは思えないほど美味かったっす。なんなら「美味い!」って言っちゃったしね。


『へ、へー。美味しいかぁー。へー』


 △▼△▼△


 そして今日4月6日。俺の目の前には昨日買ってきた食料を使った料理が並んでいた。


「これはおかしいだろ。焼き魚に味噌汁、米にごぼうの胡麻和え!?俺こんな物作れるほどの料理スキルねえよ!?そもそもレシピ見ながら作るつもりだったんだし!」


 流石におかしいと思った俺は必死で頭を回した。なにが原因か。貞子、物の揺れ、窓への血文字、幻聴……………これって幽霊じゃね?(遅い)


「幽霊か……なら除霊しないと」


 そう呟いた俺は、財布を片手に家を出て行った。


『zzzzz……』


 △▼△▼△


 数時間後


「よし!こんなもんでいいだろ」


 そう言った俺の体は僧衣っぽい着物で包まれ、部屋にはお香が焚かれ、塩が積まれ、近所の神社で汲んできた聖水がペットボトルに入っていた。


「んじゃ、始めますか」


「仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無――」と般若心経を唱えながら俺は塩を掴んで――撒いた。そして、さらに撒こうと一掴みした瞬間


「いやー!やめて!それ以上部屋よごさないで!」

「出たな!悪霊!殺すってや……?」


 目の前にポンッと出てきた物に対して懐から取り出した短刀で斬りつけようと抜き放った瞬間、俺はもうめちゃくちゃ混乱した。だって


「び、美少女?」

「はい!?美少女!?」


 そこには銀髪碧眼の美少女が立っていたからだった。

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