高校生活、幽霊と二人暮らし ※更新見通し無し

晶洞 晶

本編

引越し

 

「ここが、縷紅荘ルコウソウ……」


 そう呟いた俺の前には、二階建ての古くも新しくもないアパートが一軒建っていた。


「よし。荷物を運び入れるか」


 そう言って、肩に担いだボストンバックと、キャリーケースを引きずりながら俺は今日から暮らす事になったアパートに足を踏み入れた。


 △▼△▼△


 ある日、いつも通り歯を磨いてそのまま自室に直行しようとしていた俺を父さんが呼び止め、今リビングで向かい合って座っていた。……ちなみに母さんは向こう側。


「さて大樹よ。俺が4月から北海道に転勤になったってのは覚えてるな?」

「もちろん覚えてるよ?なんなら俺が転校したくないって事で一人暮らしを始めるってことも」


 そう。御年36歳の親父は今年の4月から北海道に行くことになり、それに母さんもついていくことになっている。のだが、俺は高校一年生。一応偏差値が平均よりちょっと高い進学校に通っているので、無理に転校させずに一人暮らしさせた方がいいんじゃないか。ということになり、めでたく4月から俺はワンダフルライフを送れる事が決定していた。


「ああ……実はその事なんだが、父さんここ最近色々準備で忙しくてな、すっかり忘れてたんだよ」

「何を?」

「お前の部屋探し」


 …………は?


「えーと……ここは?」

「今月いっぱいで、出なきゃならない」


 今日3月28日


  「家なし高校生活ッ!?」


 まじですかい!?齢16才。高校2年からホームレスとか、俺の人生ハードすぎませんかね!?


「安心しろ。学校から徒歩40分の場所に一部屋だけ、空いてたからそこを借りたぞ」

「本当!?」

「本当よ。お母さんも1時間前に見に行ってきたもの。角部屋でよかったわね」

「おおお……!」


 よかった……ほんっっとうに良かった……ッ!


「…あ、この時期まで残ってたって事は結構家賃高かったりする?」

「いや、そんなことないぞ。(紙幣的に)一回払いだったからな」

「そうなんだ。(年間の家賃を)一回払いできるなら、大丈夫か」


 良かった。結構負担になったんじゃないかって心配だったんだけど、結構安めところが偶然空いてたんだな。


「そんじゃ、俺荷造りしてくるわー」


 そう言って、俺は新生活に胸を膨らませながら自室に戻って行った。


 そして、大樹が去って行った直後あまり喋らなかった母親が「ふぅ…」と力が抜けたように息をついた。


「大丈夫かしら……」

「大丈夫……だと思うぞ」

「ええ。そうよね。いくら生活能力が皆無でも本当に不味かったら人を頼るくらいできるわよね」

「ああ、大丈夫なはずだ。それにあの部屋は訳ありという事で、大家さんが様子を大体一週間に一度のペースでみてくるはずだからな」


 △▼△▼△


 そして今日、3月31日


「結構いい部屋だな。とゆーか、にはもったいないくらいだ」


 部屋の間取りは6畳二間のキッチン風呂付き、という豪華な部屋だった。ちなみに和室だ。


「ここで、暮らすのかー。楽しみだな!……………うん。やる事ないしもう寝るか」


 既に荷解きを終えていた大樹はそのまま持ってきた布団に包まり、眠りについてしまう。大樹が寝た後は部屋に誰もいない訳だから静寂が広がり――


『私も楽しみ』


 ――声が響いた

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