ある秋の日曜日、時刻は10時57分。

 同居人と二人であるチェーン系の焼肉屋の入り口にいた。

 その焼き肉屋の開店時刻は11時。すでに入り口の待合室は、家族連れや恋人連れ。あるいはおひとり様の客で埋まっており、入り口外にも人が集まりつつあった。

「日曜日だから人多いね。予約しておいてよかった。ありがとう」

 同居人の感謝の意に頷いて返す。少し前からこの日は焼肉を食べると決めており、スマートフォンから予約をしていた。それは正解だった。

 やがて11時となりスタッフの挨拶で営業スタートとなる。

 一番に呼ばれたのは自分たちであった。

「すごいね、早くいっぱい食べよう!」

 席に案内され、揚々とメニューの確認を始める。

 焼き肉屋に来るまでの道中、同居人の口数は決して多くなかったが、待ちに待った焼肉にようやくありつけるとあり、いつもの調子を取り戻しつつあった。

 メニューはスタンダードな食べ放題で、ラストオーダーまでは80分。

 二人はどんどん注文をし、どんどん胃に収めていった。

「おいしいー、焼肉最高! やばい、どんどん食べちゃう」

 言葉通りに二人はどんどん焼肉を平らげていった。



 焼肉を食べ終えたのち、別の用事を済ませてから、アパートに帰宅したのは夕方の4時くらいだった。

「お腹痛い……ちょっと休むね」

 そう言って同居人は寝室のベッドで横になる。

 食べすぎと、かねてからの体調不良によるもだった。

 実は先日から同居人の体調は良くなかった。焼肉も別の予定も、ぎりぎりまで中止を視野に入れたが、朝の体調を考慮し決行した。

 焼き肉屋の道中まで、体調不良により同居人の口数は少なかったが、それは予定を完遂するための温存だったのだろう。

「出会って一周年だからね。大事な一日だから」

 それは自分も同意見だった。

 なぜ焼肉だったのかというと、一年前に初対面だった自分たちが、同じチェーンの焼き肉屋で食事をしたこと。そのトレース。

 もう一つの予定というのは、二人で、二人のための指輪を選ぶという重要な案件だったからである。

 体調の懸念はあったものの、焼肉は存分に堪能できた。

 そして指輪も、二人が満足いくものを選ぶことができた。

 同居人と二人で暗くした寝室のベッドで並んで横になりながら体を休めながら、一日を反芻する。


 焼肉はうまかった。

 指輪もいいものになりそうだ。

 今日は最高の一日だった。


「あいたたたたた……腹が痛い」

 同居人の腹をさする。

 幸い痛み止めと胃薬で、腹の調子は夜には安定しつつあった。

 最高の一日になったのは、まぎれもなく同居人のおかげだった。

 

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