金曜日の夜に仕事を終えた同居人とアパートで合流をする。

 自分も一日の仕事を終え、一足先にアパートでシャワーを浴びていた。

「アーおなか減った。もう何か食べないと駄目」

 同居人が盛大に嘆きつつシャワーのためバスルームへ向かう。同居人は最近この地域に引っ越してきた。二人で一緒に暮らすためだ。引っ越しに際して転職もしている。新しい職場にはまだ慣れず気苦労は多いようだ。

 ほどなく同居人がシャワーを済ませる。二人とも腹はぺこぺこだ。

 事前のすり合わせでは今日の夕飯はファミリーレストランで食べると決めていた。

「じゃあ行こう。もう何か食べないと駄目」

 しきりに駄目と繰り返す同居人。相当腹が減っているようだ。頷き自分の車で近くにあるファミリーレストラン──アパートから車で5分もかからない所にあるファミレスのガストに向かった。


「チラシのクーポンあるから色々頼もう」

 少し前にアパートにガストのチラシが入っていた。曰く一部のメニューでは期間限定のフェアとして、値引きが入る。はっきりとお得だった。

 夜八時くらいのガストの人の入りはそれなり。ここは近くに飲食店やスーパーマーケットはあるが基本的に住宅街で、客層も住宅街らしく善良な人々が占める。過ごしやすい空間だった。

「さーて食うぞー!」

 そう勇む同居人と自分が注文したメニューは以下だ。


・山盛りポテトフライ

・唐揚げ五個

・シラス丼

・カキフライ

・ステーキグリル

・金沢カレー(具は全部載せ)

・チキン南蛮とハンバーグ

・鶏のガーリック炒め

・生ビールジョッキ×2(同居人)

・レモンサワー×2(同居人)

・セットドリンクバー(自分)


「おいしー。お腹いっぱい。最高!」

 同居人は酒も入り満悦を極めている。自分もほぼ肉と炭水化物が占める料理を平らげ、お腹いっぱいだ。

「こんな風にいっぱい食べていけたらいいね」

 大いに頷いて答えるが、そのためには二人が互いを尊重して、ずっと仲良く暮らしていくことが必要となる。それはいうほど簡単ではないことを、すでに二人は知っていた。

 アパートへ帰宅しお腹いっぱいのまま二人とも眠った。


 翌日の土曜日。

「お腹いっぱい。朝は食べなくていいかな……」

 そう言う同居人は昨日に比べ体調がすぐれなそうだった。

 曰くエアコンの温度設定の問題で体が冷えすぎた。風邪気味であるとのことだった。

 夜の間にエアコン設定を変えたのは自分だった。エアコンの温度設定はお互いが快適に過ごすための設定はとても難しい。大丈夫と同居人は答えるが、やはり体調は優れないようだった。

 その日は午前中から出かける約束をしていた。今日は家にこもる選択肢もあるが──。

「大丈夫、いけるいける」

 との同居人の回答だった。懸念はあったが二人で出かけることにした。


 一つ目の用事の、メガネスーパーでの同居人の眼鏡のフレーム修正と、二つ目のブックオフで不要な漫画処分の用事を済ませたところで、昼時の時間帯となった。何を食べるか。そもそも同居人の体調がすぐれない。要件だけ済ませて帰る選択肢もあった。

「海宝丸がいいなー。海宝丸で食べたいなー」

 ラーメン等の選択肢もある中、同居人が推したのは、海宝丸という海鮮屋だった。体調の悪さを押して出かけているのなら、せめて食べたいものを食べたほうがいい。毒を食らわば皿までだ。二人でこれまで二度往訪した店で、二人ともいたく気にいっていた。そんな経緯で海宝丸へ向かった。


 ほぼ開店と同時に海宝丸へ到着し居心地いいボックス席に座る。

「さーて食うぞー」

 そう意気込む同居人はまだ体調は悪そうだったが、メニューを選ぶ姿は生き生きとしていた。

 ここで自分たちが頼んだメニューは以下となる。


・生カキ

・なめろう軍艦

・鮭いくら丼

・アラ汁×2

・カサゴの唐揚げ

・酢締め4種握り

・えんがわ軍艦

・うなぎ握り

・シラスといくら盛り合わせ

・アナゴ盛り合わせ

・日本酒Aグラス(同居人)

・日本酒Bグラス(同居人)


 昼間から様々な魚介や酒をたしなんでいるうち、同居人の体調不良もまぎれたようだ。同居人は満悦の境地でこう言った。

「おいしかったー最高!ほんとおいしい。また来ようね」

 頷いて同意する。握りや定食系から、揚げ物一品系とメニューが多様で飽きが来ない。同居人と同居する前からちょくちょく食べていた店だが、その時は定食ものばかり。時々一品をつける程度だった。二人で食べると、あれもこれも食べてみたいと話しながらになる。そして実際に注文する。だからどんどん食べられる。

 本格的に昼時となり、満腹となった二人は混み始めた店を後にした。


 その後は当初予定の通りに、丘陵公園へ向かった。名前の通りに山端の丘のようなところにある広大な公園だ。季節おりおりの花を眺めたり写真を撮ったりする同居人お気に入りの場所。今はコスモスの季節で、そろそろ咲き始めの時期となる。そこで花を見たりカートに乗って童心に帰って二人で楽しんだ。天候も夏の盛りを過ぎほどよく秋めいてきている。公園散策日和でもあった。


 丘陵公園を後にし、ドラッグストアとスーパーマーケットに寄って帰る道すがら、同居人は再び体調を悪くしていった。曰くアルコールで熱っぽさをごまかしていたとのこと。風邪薬や体温計と夕飯の食材を買い、早々にアパートに戻った。


「ごめんね。迷惑かけてる」

 ベッドで布団にくるまりながら同居人が申し訳なさそうな顔をする。迷惑なんてことはなく、むしろ自分がエアコンの設定を適切にやらず、体を冷やしてしまったことが原因だ。夕飯まで眠っていたほうがいいと伝えておく。異なる人生を歩んできた二人が同居するのはとても難しい。きっと二人とも同じことを考えている。


 先日から外食続きで多めにカロリーも摂取している。双方一致の見解で、夕飯は少な目、軽めで済ますこととした。メニューは以下。


・ちくわとチーズとベーコン焼き

・レタスとブロックベーコンの炒め

・ノンアル飲料(二人とも)


「おいしいー、こういうのもいいね。お酒飲まない日もあっていいかな。ノンアルもおいしいしね」

 夕飯までの睡眠で幾何かは体調を回復させた同居人がそう言った。ノンアル飲料もおいしさではアルコール飲料に遜色がない。もともとアルコールをよく飲む同居人も、それほどではない自分も、それは同意見だった。

 夕飯は昨夜や今日の昼のように最高ではないが、たまにはこういう日、こういう飲食があってもいい。そう思った。

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