その日は同居人も自分も休みの日だった。

 そういう日の朝、目を覚ますと僕らはベッドで取り留めない話に興じる。

 そんな行為のことを僕らは『だらだらする』と定義している。


 ひとしきりだらだらした後、僕はコーヒーを淹れて朝食を摂った。同居人の手製のベイクドチーズケーキだ。日にち的にもそろそろ食べたほうがいいらしい。

 アイスコーヒーとスイーツの朝食を終えるころに、遅れて同居人が起きだしてきて、歯磨きなど身支度を整えていく。

 もともと今日は出かける約束をしていた。

「準備OKだよ、行こう」

 という同居人と一緒に部屋を出る。9月になったとはいえまだまだ残暑は厳しい。今日は同居人の車でのお出かけとなる。

 車の中では備え付けのオーディオナビと自分のスマホをブルートゥース接続をし、90年代、00年代に流行った国民的ロックバンドの音楽を聴いたりした。

「この曲知ってる。友達がカラオケで歌ってた」

 同居人とは同世代だけに音楽の話題も合う。まったりとしたドライブだった。


 界隈で唯一のショッピングモールに到着したのが10時ころ。なぜなら専門店街の開店が10時からだ。

 二人で手をつないでウィンドウ・ショッピングなどする。買ったのは、

・ユニクロで靴下

・雑貨屋で寝室に飾る花細工

 くらいのものだったが、まだ早い秋物を物色したり、試着したりして楽しい時間を過ごした。


 11時には同じモール内にある東横に入った。開店が11時。僕たちがこの日一番の客だった。

「何食べようかなー、油淋鶏セットは頼もう」

 そんな風にタッチパネル式タブレットでメニューを物色する。結局自分たちが注文したのは

・先代特製味噌ラーメン(同居人)

・東横JIRO(自分)

・油淋鶏セット(シェア)

 どれもおいしかった。が、同居人からは「最高」の言葉が出そうで出ない。おなかが減っていなかったのか、それとなく聞くと、

「昔食べたイメージと違ってて。いや、おいしいんだけどさ」

 との回答だった。そういう違和感が最高という感想を遠ざけるのかもしれない。


 その後はショッピングモール内の本屋などをのぞいて帰路につく。

 帰り道に夕飯の相談などもするが、何となく似た方向性のメニューで上書きしたかった僕は、鍋を提案した。すると同居人は、

「いいねえ! 実は私もやりたかった」

 昼と重複はするが乾麺を入れて味噌味で食べるのもやりたいと提案すると、二つ返事で同居人の了承を得た。


 食材を原信(地元にチェーン展開するスーパーマーケット)で買い物をしてアパートに帰宅する。軽くシャワーを浴び、一緒に昼寝する。お互いまあまあ寝られたようだ。

 夕方に起きだして、周囲の土手の散歩に誘うが、今日はそれほどいい景色の夕暮れというほどでもなく、ここでも同居人の「最高」は引き出せない。(同居人は夕焼けや朝焼けの景色が好き)


 その後は鍋の支度をする。今日は自分がメインで準備をする。自分の料理スキルは低いので同居人のフォローを受けつつ手早く準備をする。


・鍋にスープを入れる(乾麺のスープ、コチュジャン、鶏がらスープ、すりおろしにんにく、水、を入れて混ぜる ※この時点では熱さない)

・キャベツ、長ネギ、ニンジン、豚バラ、アルトバイエルン、ちくわ、を切って鍋に入れる。

・コンロにかけて鍋を熱してしばらく待つ。

・出来上がりかけに、チーズと生卵を入れる

・さらにぐつらせて完成


 鍋はなかなかいい味だった。量もあり野菜も食べられ、肉の火の通り加減もちょうどよかった。

「んー最高! 味がすごくいい。味付けは君のほうがうまいね!」

 と称賛の言葉を賜るが、教えられたままに作っただけだ。教え方がよかったのだろう。互いにもりもりと食べ、食後のスイーツ(朝に食べたベイクドチーズケーキ)も二人で食べつつ、余は更けていった。


 今日も最高の言葉を聞けて、一安心という感じだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る