第2話

「全く、キェシェルドとこう敵対するとは思ってもいなかったな」

「それにしても何だったんだあの赤い戦闘機は?」

「分からん、我等の国を対立されるのが目的なのは明確だ。キェシェルドだけを狙うのならもう一機落とすはずだ。それをせず、留めたのは我等を嵌めるためだ」

アッサドの偉い方は会議室に集まり、あの赤い戦闘機のこと、これからのことを語っていた。だが、こうなってしまったからにはアッサドはキェシェルドと戦わなくてはならない。しかも隣国なので、いつでも戦闘態勢を取れるような形にしておかないといけない。

「そういえば、秘密裏に進めていた例の量産型のオルヴァはどうなっている?」

「あれならば確かに戦闘機よりも動きは遅くなりますが、キェシェルドを鎮めることはできそうですね」

オルヴァ、それは空を飛ぶ戦闘機、戦車とは違い、人を乗せて地上で戦う謂わばロボットのことだった。だがまだ作ったばかりなので、誰も人を乗せたことはないらしく、誰をその操縦士にするかは決まっていなかった。が、為、アッカド・ナルシーは呼ばれる。

「何でしょうか? 話というのは?」

「秘密裏に進めていたオルヴァの話は聞いているな?」

「ええ、知っています、それが……」

「あれを動かす。が為に君にその操縦士を決めてもらいたいのだ」

アッカドは目を点にして、考え込む。まさか、まだ作られたばかりのロボットに誰かを乗せる……何が起こるかも不明なのに、だが、偉い方は真剣な眼差しでこちらを見ているため、やむを得ず、「分かりました」と敬礼しつつ応えたものの、かなりの重要なことな為に頭を抱えて、その場をあとにすれば、補佐のグレーの髪に青い瞳のフルブ・ナイヨンに情けない顔を見られてしまう。

「どうしたんですか、そんな顔して」

「いいや……とんだことになったなと思っただけだ……」

なるほど、とフルブは思い、これは骨が折れそうだとも言葉、表情で汲み取った。フルブはアッカドの肩を優しく叩く。

「俺も付いているのであまり考え込まないでくださいね」

「……努力する。しかし、秘密裏のロボットの搭乗員を俺が選ぶことになるとは思ってもいなかったがな……」

それを聞いてはフルブは目を点にさせては怪訝そうな顔をに変わる。

「……誰も乗ったこともない試験もない機体に誰を乗せろと言うのです……しかもまだまだ若いものしか居ないというのに……」

「はぁ……若い芽はまだ育てたいというのにな、だが……まぁ、俺の中では一人決まっているがな。まず、確か、オルヴァを作るにあたってあの男を乗せる予定だったはずだ」

「まさか……エドナですか?」

コクリとアッカドは頷く。何故、エドナを乗せる予定だったのかは不明だが、だが、彼用ならば彼しか乗せれないということだ。なので、アッカドは寮へと向かい、彼がいるところの部屋の扉を開けた。

「アッカド隊長、何故、俺のところに?」

「おやおや、偉い方二人もいらして、って俺に用ない感じ?」

「あぁ、だから、聞こえないところまで……と言いたいところだが、君も聞いておいておかないといけないため、そのまま椅子に座っておきたまえ」

二人きりで食堂の給食を持ち、誰もいない個室で食べていたところをアッカドとフルブは失礼して、前の席に座ってそう言う。

「へぇそれはそれは……じゃあ遠慮なくいさせてもらうぜ」

「エドナ、単刀直入に言う。君には戦闘機ではなく、このオルヴァという機体に乗ってもらいたい」

一枚の紙がエドナの目の前に置かれて、それを見れば、エドナはアッカドを見る。

「これは……あの秘密裏に作られていたものですね?」

「ん〜? 俺は知らねぇぞ?」

カドルクは首を傾げて、その紙を手に取り、見れば、目を見開く。戦闘機とは全く違うもので、見たこともないものだったからだ。

「何だこれは!? 戦闘機より遥かに強そうじゃねぇか!」

「声を静めてくれ。これは重要機密事項だ。で、エドナは乗ってくれるのか?」

「はい、そういうことをこれを作った人に言われたので」

すると、不服そうな顔でエドナを見つめる視線があった。カドルクは何やら言いたいことがあるようで、それに感づいたアッカドは「何かね?」と尋ねる。

「一機だけじゃ何が起こるか分かんねぇから俺の作りやがれって言いたい、なんてな」

「お前ってやつは……」

「……カドルク、それは隊長に言うんじゃなくて、これを作った人に言うんだな」

チッ、と舌打ちするカドルクにアッカドは咳払いする。

「だが、お前にも役目はある。先程君の口から出たように、何が起こるか分からないが為に、戦闘機で上からの援護を任せたい、引き受けてくれるか?」

「へいへい、それは喜んで引き受けっけど、さっきの言ったこと、その作った野郎に言っといてくれな」

「……分かった。あと、これは秘密事項だ、口は閉じておくように、では、失礼する」

アッカドとフルブが立ち上がれば、エドナとカドルクも立ち上がり、敬礼した。そして、アッカドとフルブは扉から出ていく。

「本当、貴方って部下思いですね」

「仕方ないだろう、あぁ言わないとカドルクは余計にキレる」

上司が去れば、カドルクはあーあ、とため息を深く吐き、じっとエドナを見つめる。

「エドナは俺に秘密が多いなぁ、妬けてくるぜ」

「……秘密事項を口にするわけ無いだろう」

「それでもだ。なんかあったとき何も知らないんじゃ、守れねぇだろう? だからだ」

「そのとき話せばいい、早くご飯食べないと出遅れるぞ」

あいよ、とカドルクとエドナは時間内に給食を食べ終わるのだった。







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