Vol.2 My Name
朧げながら意識がある。そういえば俺は死んで、女神に気に入られて、異世界に行くんだったっけ。
だんだんと意識がはっきりしていく。若干の日差し、風。そしてピザの匂い。
...ピザ?果たして生前本屋で素通りしていた異世界ものの本にピザのくだりはあっただろうか。まぁ、読んでないのだがら、あったんだろう。...いや、
「あってたまるか!」
風邪でも引いたのか若干高めの声だった。
完全目が覚めたら。ここは異世界ではなかった。いや、俺を基準にすれば十二分に異世界だが。どちらかと言うとアメリカの路地裏みたいなところだ。ついでに言うと、ゴミ箱の上。きったねぇ。
近くに鞄が置いてある。多分あの女神の土産物だろう。
「えぇっ!」
中にはコンペンセイターとパールグリップのついたステンレスのM1911とスペアマガジン2つが入っていた。
「あの女神やばいな。」
日本だと持っているとやばい。と言うかアメリカでも州によっちゃアウトだろ。
とりあえずゴミ箱から降りるとする。1.5mぐらいを飛び降りる。若干高いが余裕だろ「ウッ!」
コケた。転送のせいかバランス感覚が狂っているような気がする。とりあえず立ち直って路地裏を抜けて...
「よぅ、美少女ちゃん。どこへいくんだい?」
「ここは危ないぜ、俺たちが送ってってやるよ」
タンクトップの兄ちゃんとライフジャケットみたいな上着を着た兄ちゃんに絡まれた。って美少女!?
「美少女って、誰のことを言ってんだよ。俺か!?」
「うん、お前。」
タンクトップの方が口を開いた。
「いやぁ、オレっ娘で可愛い娘なんて珍しいですなぁ兄貴。」
これ、まずいのでは。冷静に慌てて振り返ってみた。確かに声が少し高かった。バランス感覚もおかしい。そして肌ももちもちしてそうで視線も若干低い。そしておおよそ男子高校生からはしないであろう柔らかな柔軟剤みたいな香りがする。相手が嘘をつく状況ではない。となると俺は本当に女の子、それも美少女になってしまっているらしい。相手はガチムチグレ男2人。終わった。いや待て、俺は銃を持っている。そしてここがアメリカなら国民には防衛する権利があるはず。答えは...
「おい、これが...」
とりあえずM1911を取り出した。取り出した。取り出したけれど...。
「ケッ、かわい子ちゃんかと思ったらとんだビxチじゃぁねえか。」
当然2人も銃を持っていた。しかもUZIとAKピストルを。
「これが...が...」
撃たない。
「がっ...っ...」
視野がぼやけ、体が硬直する。
「っ...っ...」
2人が近づいてくる。
「......」
終わった。
「クソガキども!ペレットでも食らいなっ!」
ドムッ!ドムッ!
「...?」
気がつくと2人は蜂の巣みたいになっていた。
「ちくしょう!」
「逃げるぞ、ブラザー!」
2人が逃げていった後に赤毛のショートカットの少女がやってきた。
「大丈夫か?」
「......」
「まぁ、ここを出よう。話はあとでにしよう。」
そう言って俺の手を引っ張って表通りまで出た。
「...ありがとう...ございます。」
「いいってもんよ。ところでアナタ名前はなんで言うの?」
「えぇ...」
「あ、先に行った方がいいかな。アタシはアリス。アリス・ダイソン。」
「えっ...シャルロットとか?」
「シャルロット!いい名前ね!」
こうして俺はシャルロットとなった。
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