第2話 ありきたりじゃない転生

拝啓、ポンコツ。

俺は今、空を飛んでいます。

いや、飛ばされてるっていうか…


……俺、雲になってねえ!?

『転生しましたか』

うおっ!?コイツ脳内に直接…!?


『こんにちは、ポンコツです』

ちょっと根に持ってる…?

『持ってません、ともかく状況と状態をお伝え致します。

どうやら煙型の生命体に転生したようですね』


煙型の生命体!?

どうりで雲なのにあんまり千切れないと…いや千切れてはいるけどある程度の距離を保ってる感じ…?


『形を持った灰色の煙…といった所でしょうか?

そしてここは…遙か彼方、この世界の上空のようですね』


おう、そりゃあいいんだけどよ…

俺空に浮かんでるんだけどどうすればいい?


『…………。』

…………。

『頑張ってください』

つまり解決策はねえってことなんだよな?マジでどうすんだよこれ。


『落ち着いて下さい、まだ解決策はあります。

……魔法です』


魔法?

って、なると…ファンタジー系の物語とかでよくある不思議な力の事か。

この世界にもあるんだな、世界って言っても今のところ一面雲しか見えねえけど。


『…マニュアルによりますと魔力と呼ばれるものを操り現象を起こすのが魔法のようですね。

アナタは調べた所魔力により形を保っているタイプのようですし…魔力の感覚を掴むのに最適な身体と言えます』


なるほどな、とりあえず魔力の感覚を掴んで魔法を習得、その魔法でどうにか地上に帰還!

って感じか。


『そうなりますね、それに魔力で形を保っているのであれば…魔力の操作方法を覚えれば姿形の変化もできるのではないでしょうか』


へえ?んじゃますます…覚えるか!

魔力の感覚を……!!!






『あれから日が落ちましたが、調子はどうでしょう?』


ぜ、全然感覚が掴めねぇ…!

なんつーか、文字通り雲を掴もうとしているような…ふわりとした形無いものでお手玉をしようとしている感じっていうか…!

あと心なしか身体が縮んでいるような…?


『当然でしょう、魔力によって構成されている生命体は生きているだけで魔力を消費し…

追加の魔力を摂取できなければ身体の維持もできませんから』


はっ?

『言ってませんでしたか?』

言われてねえよ?

『そうでしたか』


…………。

『……………。』

おいふざけんなよこのままだと死ぬだろ俺!?

つうか魔力なんてどうしろと!?

ここ空の上だぞ!?


『いえ、むしろここならば魔力を好きなだけ摂取できるかと』

………?


『アナタも魔力の塊の煙であるならば…

言い換えれば、煙に魔力がこもるのならば。

周囲の雲にもアナタ程では無いにしても、魔力があっても不思議ではありません』


…なるほど。

って、なったら流れてる最中にぶつかる雲に…と!丁度来た!

これを…吸収するイメージで…!



お、おおおお!?

な、なんか変な感覚っつうか…変なもんが流れてる感じっていうか…!?


『恐らくそれが魔力の感覚なのでしょう、ヒントを得られたのではないでしょうか?

…と、魔力を得たところ悪いですがそれだけではまだ足りませんね。

やはりただ上にあるだけの雲では魔力量は少ないようです』


了解、とりあえず感覚は…糸は掴めた!

後は…魔力を吸収しつつ、感覚を更に鋭くして、覚えて――形にする!

この感覚を――


―――掴んだ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る