第5話・女性は結婚すると体質変化?辰砂姫の闇属性が強まったその結果……月一回から二回の例のアレが
闇の霧筋をまとった辰砂が西洋剣を一回、帝の軍に向かって振り下ろす。
「セシウム! 愛していますぅぅぅぅぅ!」
凄まじい突風の剣波が大地を揺らし、生じた亀裂が帝の軍を容赦なく蹴散らして吹き飛ばしたり。
亀裂の闇底に落下させる。
強弱をつけて剣を振るたびに削れたり亀裂が走る大地、新たな亀裂が発生すると、先の亀裂は閉じて落下した帝軍の悲鳴が大地の下から聞えてきた。
黄金の日本甲冑姿で、金色の盾を持ったセシウムも帝軍に向かって愛の言葉を叫ぶ。
「わたしも、愛していますぅぅぅぅぅ! 辰砂」
セシウムが手にした黄金の盾から灼熱の熱愛
愛を貫く、闇属性の攻撃。
「オレとセシウムの愛を邪魔するヤツは、剣波で斬り刻まれて地獄に堕ちろ! きゅん」
一人だけを強く愛する、光り属性の攻撃。
「二人の愛を邪魔する者は、灼熱の光りに焼かれて天国に蒸発するがいい……わくわく」
時々、攻撃の手を休めた辰砂とセシウムは、駆け寄って武装姿のままキスをして愛を確かめ合う。
「んッんッ……セシウム、好き」
「んッんッ……辰砂、好きです」
キスをしたり、離れたりを繰り返して、戦闘を続けている辰砂とセシウムを少し離れた場所から眺めながら、テ・ルルとアンチモンのおっちゃんも帝の軍を蹴散らしていた。
長銃から発射された、動物の魂を練り固めた魂弾丸が命中した帝軍の兵士たちは人間の魂が抜けて。
代わりに入魂した動物の魂で動物のような行動をした。
小動物のように怯えて逃げ回る兵士。
ニワトリのように、両手をバタバタさせて鳴く兵士。
モグラのように穴を掘って、地中に隠れようとする兵士。
家畜や愛玩動物の魂が入った、兵士たちの頭上には抜けた人間の魂が漂っていた。
新しい魂弾を銃に補充しながら、テ・ルルが言った。
「心配ないデス、抜けた人間の魂は一定の時間が経過すると元の肉体にもどるデス」
唐草模様の風呂敷マント姿のアンチモンは、超絶な超人プロレス技で帝軍の兵士を次々と大地のマットに沈めている。
小一時間後──壊滅状態で、負傷した帝軍兵士たちの呻く声が聞こえていた。
太陽神の黄金武装を解いたセシウム王子と、西洋剣を鞘に収めて闇属性の武装解除した辰砂姫は、勝利の抱擁をして唇を重ねる。
「はぁはぁ……空中を舞った人馬が、地面に激突するのを見ていたら興奮してしまいました──ワクワクでキュンです。んッ……んッ、愛しています王子さま」
「はぁ、わたしも体が熱いですキュンでワクワクです──愛しています姫……んッ」
この時、辰砂は少し疲れた目をしていた。
抱擁をしながらセシウムが、辰砂の背中の中央を上から下に。
指先でスゥゥと撫でると辰砂の口から。
「あふッ」と、奇妙な喘ぎの声が漏れた。
◇◇◇◇◇◇
大国──カエン・ダケ大帝の宮殿。
小心者のカエン大帝は、毛布を頭からかぶって側近からの報告を聞き終えて震えていた。
「オレが送った軍が壊滅? ちくしょう! どうして、あの二人は別れないんだよぅ。ちくしょう」
カエンは、枕の下から画面が割れた古いスマートフォン〔通称・スマホ〕を取り出して眺める。
二度目の異世界転生人生の時に、古美術商が珍品だと言って。宮殿に持ってきたスマホだった。
カエンのチートな転生者能力は、同じ異世界に数回分は転生できる能力だった。
カエンは初代大帝に初回転生してから死亡して、数世代後にまた同名のカエン・ダケとして同じ大帝家系に転生するコトができた。
割れてもう起動しないスマホの画面を撫でながら、カエンが呟く。
「ちくしょう、セシウムの野郎……オレのスマホを割りやがって、ちくしょう……万能アイテムの魔具スマホで、この異世界を支配するオレの計画を邪魔しやがって」
カエンは、魔術師に依頼して購入したスマホに異世界でも使用可能なように。魔力を注がせ、自然充電とインターネット回線が繋がるようにスマホを魔改造した。
「ちくしょう、電話もできるようにして……時々、知らない番号のヤツに異世界からイタズラ電話して楽しんでいたのにな……ちくしょう、月々自動的に引かれていた使用料の二度目の転生寿命がムダになっちまった……ちくしょう」
カエンは二度目の転生人生の時に、女性を思い通りにできる怪しいアプリを発見して、そのアプリを使って辰砂を自分の思い通りにしようと目論み。
邪悪な計画を察知したセシウムにスマホを奪われ、地面に叩きつけられた。
「ちくしょう、画面割られて、魔改造したスマホの魔力が失われたから……今回の三度目転生に寿命持ち越せねぇじゃねぇか。ちくしょう!」
毛布を頭からかぶって、薄暗い部屋で膝抱え座りをしているカエンはブツブツ呟いていた。
「そうだ、あの二人を別れさせるコトに成功したヤツに報酬を出そう……ふふふっ、それがいい、別れろ別れろ」
◇◇◇◇◇◇
数日後──中ノ小国の宮殿近くの町で、奇怪な事件が続発した。
夜、女性が得体が知れない何かに襲われ、意識を失うという事件だった。
襲われるのは決まって若い娘で──夜道を一人で歩いていたり。部屋の窓を開けて一人で就寝していると、狙われて襲われた。
被害にあった若い娘の首筋には、決まって赤い一点の虫に刺されたような痕跡が残り、命に別状は無かったが。
得体が知れない何かに襲われて、意識を失った女性の肌はミイラ色に乾燥していた。
襲われて肌が乾燥した娘は、水を浴びたり飲水をすると元の肌艶にもどった。
ベットで飲水をしながらミイラ肌から、保湿した肌にもどりつつある娘が襲われた当座の様子を語る。
「夜の細い路地道を歩いていたら、いきなり黒い霧のようなモノにまとわれつかれて、耳元に女性の囁き声で『あなたの
被害者の娘は、ゴクゴクと水分補給をしながら話しをつづける。
「どのくらい、意識を失っていたでしょうか……気がつくと乾いたミイラのような姿になっていました。立って歩けたので、そのまま歩いて家に帰りました──ただいまと、家のドアを開けた瞬間に、母親の悲鳴と同時に木製のイスを投げつけられました……あはははっ」
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