第3話・恋愛には必ず邪魔が入るのが世の常……前✕3前世からの因縁

 辰砂姫とセシウム王子の挙式も無事終わり──数日が経過した。


 東丿国と西ノ国の、王と后から結婚祝いだと、中ノ小国と小国の中にある宮殿を新居でもらった。

 辰砂とセシウム王子は連日、宮殿の中でイチャイチャの新婚生活を満喫していた。

 中庭の木陰の東屋で、木製の椅子に座ったセシウムに、身を預けるようなポーズで辰砂はセシウムに甘える。

「はぁぁ……王子さま」

 辰砂姫が、肩に寄せてきた頭を優しく、ナデナデするセシウム王子。

 心から安心して安堵した表情の辰砂が、セシウムの太モモに膝枕をするように頭を乗せると、セシウムは辰砂の髪を撫でながら小声で愛の言葉を囁く。

「好きです姫……心から愛しています」

 姫と王子は時折、キスをしたり互いの体を撫で回して愛を確かめ合っている。


 少し離れた東屋には、東丿国と西ノ国から宮殿に移り住んだ。仙女と導師が緑茶時間ティータイムを楽しんでいた。

 イチャイチャしている新妻と新夫の、姫と王子を眺めながら。

 西洋占い絵札タロットカードをめくっていた仙女が呟く。


「いいんでしょうか……本来なら恋愛は至るまでの過程プロセスを楽しむもの……呪いの力とは言え。いきなり、あんな愛々ラブラブな発展行為……逆に心配になります」

 竹の占いクシをガシャガシャさせる、筮竹ぜいちく占いをしながら導師が言った。

「その部分は、儂も少し心配だが……おっ、姫と王子の今後を示す占いの結果が出た」

 卓上の象牙の牌を、ひっくり返して、 描かれていた模様を確認する導師。


「こちらも、占いの結果が出ました」

 伏せていた絵札をひっくり返す仙女。

「奇妙な結果が出ました『姫と王子に子作りをさせてはならぬ』と出ました」

「こちらの占いも同じだ……『破邪星の姫と王子は子作り禁止』と出た……」

 仙女と導師が同時に言った。

「『姫と王子が子作りをすれば世界に……大いなる幸福が』」

「『姫と王子が子作りをすれば世界に……大いなる災いが』同じ結果で対極の答えが?」

 首を傾げる導師。


「ある者には幸せに映り、別の者には災いに映るという意味でしょうか?」

「どちらにしても、辰砂姫とセシウム王子の子作りは、阻止した方が良さそうじゃ……どうすれば?」

 しばらく思案をしていた導師が、おもむろに口を開く。


「実は西ノ国に、儂が以前召喚した。再転生者の男女がいて、ずっと世話をしてきた……こちらの世界に過去に最初の転生をしてきて、その時に得たチートな能力を私利私欲に使って。自業自得で死んで向こうに帰ったクズで腐った転生者とは違い、私利私欲にチート能力を使わなかった善良な二名じゃ……大福モチの式神体ではなく、ちゃんとした肉体を与えてある」

 一旦、冷めた緑茶で喉を潤した導師は、話しを続ける。

「あの男女を中ノ小国に呼び寄せて、姫と王子に子作りをさせないように監視させよう」

「それは良い考えです……姫と王子の護衛にもなるでしょうから」

 

 ◇◇◇◇◇◇


 数日後──導師に中ノ小国に呼ばれた、男女が宮殿に到着した。

 一人は、高校生年齢の小柄な少女で。迷彩模様のメイド服を着ていて。

 背中に銃身が長い魂銃を背負っていた。

 迷彩メイドの少女が言った。

「『テ・ルル』と言いますデス。転生回数は一回デス、能力は背負った長銃から撃ち出す殺傷能力が無い魂弾と。この手の平にある催眠眼デス」

 テ・ルルが広げた手の平の中央に、ビキッと亀裂が走り一つ目が現れる。


 もう一人の転生召喚された男性は、中年齢の体を鍛えた筋肉おっちゃんで、ピッチピッチのTシャツを着てサングラスをしていた。

「『アンチモン』と言います。転生回数は二回……本名は、田中与太郎。転生能力は転生格闘術、超人的なプロレス技が主体です──唐草模様の風呂敷をマントにすれば、空も飛べます」


 導師は、テ・ルルとアンチモンに呼び寄せた理由を説明した。

「姫と王子が、子作りをしないように見張るのデスか?」

「本来なら、子供を作る行為は未来に命を繋ぐ大切で尊い行為……だが、世界の運命を変えるほどの愛する力を持ってしまった、辰砂姫とセシウム王子には世界の脅威となる」


 サングラス姿で腕組みをして、導師の説明を聞いていたアンチモンが導師に質問する。

「オレたちの護衛って必要ですか? 辰砂姫とセシウム王子には必要がないように思えますが」

「良い質問だ……実は占星盤の占いで、少々厄介な事柄も発生していてな」


「厄介な事柄とは?」

 導師と仙女が机の上に、それぞれが占いで愛用している。西洋占星術盤と東洋占星術盤を出す。

「二つの占い盤に、姫と王子が一緒に居ることを快く思っていない人物が軍を動かす行動を起こすと出ている……大国の者だ」

 

 大国の者と聞いて、すぐさま赤い髪を逆立てた、人物を思い浮かべたアンチモンとテ・ルルが青ざめる。

「まさか大国の『カエン・ダケ大帝』が……でも、どうして?」

 大国は、東ノ国と西ノ国を取り囲むように存在している。

 中ノ小国に攻め込むためには、どうしてもどちらかの国を通過しないといけない。


 テ・ルルが質問する。

「前々から思っていたんデスが……いったいカエン・ダケ大帝って何者なんデスか? 小心者の大帝なのはわかっていますが」

 その質問には、仙女が答える。

「腐れ転生者です……あちらの世界にもどらずに、ずっとこちらの世界で転生を繰り返した、成り上がり者です」

 仙女の言葉を導師が繋ぐ。

「つけ加えると、辰砂姫とセシウム王子とは、三つ前の前世からの因縁がある」

「三つ前の前世からの因縁? デスか」


「カエン・ダケは三つ前の前世の辰砂姫とセシウム王子を、嫉妬から別れさせて二人に悲劇的な最後を迎えさせている……一つ前と二つ前の前世でも、同じように二人を別れさせている」


 アンチモンのおっちゃんが、怒りに拳を握り締める。今にもTシャツが破れそうだった。

「姫と王子は前世の記憶は?」

「二人には生れ変る前の記憶はない……巡り会う宿命さだめが二人を結びつけた……引き裂かれるたびに強くなっていった想いが、世界を変えるほどの強い愛の力となって」


 仙女が机の上に占い絵札を並べながら言った。

「わたしたちは、姫と王子を結婚させてイチャイチャさせておけばら、世界の破滅を少しでも遅らせるコトができると考えて二人を政略結婚させましたが……カエン・ダケ大帝の考えは違っていたようです」


 絵札を一枚めくって仙女が言った。

「大帝の考えは、姫と王子を別れさせてバラバラにした二人を倒してしまおうと……愚かな考えです、恋は障害があるほど燃え上るのを大帝は知らないようです……さらに」

 めくった占い絵札を手にして仙女は言った。


「結婚したコトで辰砂姫の体質に、変化が起こってしまったようです……超人的なパワーの源の闇属性、吸血鬼種の力が覚醒して増してきています。姫は生体エネルギープラーナを求めはじめます」


「次から次へと、複雑で面倒くさい展開デス」

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