第2話・姫と王子をくっつけさせれば世界は安泰?

 東ノ国の仙女と、西ノ国の導師は、離れたそれぞれの地で水晶球を通して会話をしていた。

「やはり、西ノ国の導師も同じコトを考えていましたか……同じような呪いを、セシウム王子にかけるとは」

「それも、東丿国の仙女と同時期に行うとはな……我らも二人の運命の中に組み込まれて、いるようじゃな」


 水晶球の中に映し出される、導師の姿は若々しい青年の姿をしていた。

 仙女と導師の背後には、姫と王子のそれぞれの両親──王と后が並び立っている。


 仙女『東王母とうおうぼ』が、水晶球の中に映る導師『序福じょふく』に言った。

「導師は周囲の者の目には、老人の姿を見せている……なぜですか?」

「若年の姿だと信頼されないのでな……それより、少しそちらの姫で気になっているコトがあるのだが」

「なんですか?」


「辰砂姫のあの超人的な力の源は、闇の属性ではないのか? 姫の片八重歯は吸血種族の証しでは? 仙女の後方に立っている后の口元にも牙のような八重歯が見え隠れしているのだが?」


 導師から指摘された后は、口元を両手で隠すと正体がバレたショックから卒倒して、王に意識を失った体を支えられた。

 今度は仙女が王子の父親──西ノ国の王を指摘する。


「わたしの方も、セシウム王子で気になっているコトがあります。異国人の血が混じった金髪で片目が神秘的な色をしている王子は、太陽神の末裔ではないのですか? 王の顔色が金色なのは目立ち過ぎるのですが? 最初は金粉の化粧をしているのかと思いました」


 正体を指摘された西ノ国の国王は、両手で顔を隠すと恥ずかしそうにどこかへ走り去ってしまった。


 仙女が言った。

「さて、これからどうしますか? 姫と王子の本質を呪いで変えましたが、世界の破滅が少しだけ延びただけです──二人が別々に離れて生活していれば、やがて……世界の破滅も」

「やはり、姫と王子を結婚させるしかないだろう……夫婦になれば、互いのために力を使うコトになって抑止になるかも……たぶん」

「では、わたしたちが仲人になって。二人をくつけまょう……双方の王と妃には文句を言わせません」

「二人を見合いさせる場所は、西ノ国と東丿国の中間にある統治者がいない【中ノ小国】の吊り橋中央の東屋がいいだろう……段取りは我らの方でやろう、見合いさせるのは吉日がいいな」


 こうして、辰砂姫とセシウム王子の見合いは、中ノ小国の渓谷にかけられた揺れる吊り橋中央の東屋で行われた。

 晴天吉日──不安定に揺れる橋の上で初対面の姫と王子は、ドキドキしながら互いを見つめ合った。

 二人はすぐに、相思相愛になった。

「あぁ、心臓がこんなにドキドキしています……わたしの王子さまを見つけました、うふっ……胸キュンです。好きになってしまいました」


「揺れる吊り橋の上でワクワクします……あなたこそ、わたしが探し求めていた理想の女性です……一人の姫を生涯、深く愛します」

 セシウム王子が言った。

「わくわく」

 辰砂姫が答える。

「きゅん……胸キュン」


 まるで、運命で決められていたかのように一目惚れで相思相愛になってしまった。

 戦姫剣姫と悪王子の婚礼は、トントン拍子に決まり。

 数週間後に、中ノ小国の挙式会場で、近隣諸国の国賓を招いて盛大に行われた


 祝福の花火が上がり、祝い唄が披露され。挙式も終盤へと進み、姫と王子が誓いの儀式をする時がやってきた。

 司会進行役の神職者が花嫁と花婿を眺める。神前で華やかな婚礼衣装に身を包み。

 向かい合って互いの顔を見つめている、辰砂とセシウムに神職者が言った。

「それでは、誓いの永遠の愛の接吻キスを……」


 セシウムが辰砂の腰に手を当てて、抱き寄せる。

 辰砂もセシウムの背中に腕を回す、互いに体を密着させると、辰砂とセシウムは目を閉じると、国賓の見ている中で唇を重ねた。

「んッ……王子さま、好きです……んッんッ……セシウム王子を愛します」

「はぁッ……姫、辰砂姫……愛しています」


 姫は王子に顎先をクイッと上に持ち上げられる顎クイをさせられて、さらに深い角度で愛のキスをされた。

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