第1話・戦姫の『辰砂姫』はラブラブな呪いで政略結婚します
「お父さま、お母さま、国境の山賊の城砦を一つ壊滅させてしまいました。山脈の地形をえぐって変えてしまいました……うふっ」
鞘に入った西洋剣を紅色の和装の肩でトントンしながら、後ろ髪を一本編みにした
東洋風異世界の東丿国の、可憐で純真で上品な戦姫で剣姫の、辰砂姫にはある呪いがかけられていた。
「暴れ回ると気持ちが晴々します……胸きゅんです」
王と后は、第二王女、辰砂姫の変貌ぶりに困惑していた。
数週間前の辰砂姫は、男勝りで、粗雑で、荒々しく手に負えない乱暴者だった。
夜になると防具を身につけて、西洋竜の馬に乗って近辺を憂さ晴らしで暴れ回っていた。
「おらおらおら、オレが川の流れを変えてやるぜ!」
超人的なパワーの、剣の一振りで地形を変形させて。
人々を怯えさせている辰砂姫に、遠方から来た一人の仙女がある呪いを姫にかけた。
仙女の力で牢に拘束された、壁から下がっている鎖手錠に手首を拘束された辰砂姫は、目の前に立っている美女仙女に向かって毒づく。
「この手錠を外しやがれ! 仙女ババァ!」
ババァ呼ばわりされて、頬をヒクッヒクッさせながら仙女が穏やかな口調で言った。
「あなたは、このままだと国はおろか、世界さえも滅ぼしてしまいかねない……破邪星の宿命を持っています、あなたに呪いをかけて本質を変換させます」
「なに、ワケのわからねぇこと言ってやがる……なんだ、その器に入った赤い液体は……や、やめろぅ! やめろぅ! うぐッ」
「さあ、呪いの甘い飲み物を飲み干しなさい……あなたは、可憐で純真で上品な姫に生まれ変わるのです」
「グッ……だ、誰が上品な姫なんかに! や、やめろぅ……うぅ、いやぁぁ……うふっ」
こうして、辰砂姫は破壊的な力を保ったまま、可憐で純真で上品な姫へと生まれ変わった。
仙女はさらに辰砂姫の心に『恋に恋して、愛を愛する』心を植えつけると。
庭で小鳥と戯れている、王女を横目で見ながら。
王と后に向かって、朱盃の酒を飲みながら言った。
「辰砂姫の心に愛に没頭する心を植えつけたのは、少しでも世界の破滅を遅らせるためです……占星術では、姫破邪星の宿命星の下に生まれてしまった辰砂姫は、一人でも危険な存在です。幸い王破邪星の下に生まれた王子が同時代に現れていないのが……」
「そんな……まさか、同時代に同じように世界を破滅に導く王子が、西ノ国にいるなんて。しかも辰砂姫と同じ年齢? これは、西ノ国の導師と相談してみなければ」
庭にいた王女が、捕まえて鳥カゴ入れた小鳥を王と后に見せながら、明るい笑顔で言った。
「お父さま、お母さま、捕まえた小鳥を料理人に頼んで焼き鳥にしてもらいましょう。夕食の一品が増えましたわ……きゅん」
◇◇◇◇◇◇
西ノ国の王子『セシウム』は、聡明で気品がある表向きは心優しい王子と、他国から訪れた者たちには評判のイケメン王子だった。
だが、数ヶ月前の王子の本質を知る者は、陰で悪王子とセシウムは言われていた。
西ノ国で魔導や呪術を教示する学校ではセシウムは、二度目以降の転生をしたクズな転生者を式神で再召喚する術にかけては天才だった。
月夜の中庭で、召喚術の師匠導師が見ている前で。
地面に描かれた呪術方陣の中央に竹串を刺して地面に固定された、式神の紙に向かって強く命令するような口調で金髪で、片目が神秘的な色をしているセシウム王子は言った。
「我の声が届いたら、この地に来い! クズで最低な腐れ外道な転生者の魂!」
頭が三角形をした式神の紙がビキッビキッと動いて立ち上がり、等身に膨れ上がる。
のっぺりとした顔で、胸に竹串が刺さった、白い大福人形のような姿で、召喚された転生者の魂はキョロキョロと周囲を見回してから言った。
「ここは? そうか、オレはまた転生したか召喚されたのか……ふふっ、それなら今回もチートな現実改変能力を使って……異世界の女たちを」
「消えろ……外道な腐れ転生者……もう、用済みだ」
セシウムが指を鳴らすと、魂が式神召喚された者の体から竹串が抜けて、悲鳴を発しながら大福人形と竹串が燃え尽きて灰になった。
セシウム王子が厳しい表情で眺めている、導師に向って言った。
「どうですか? 導師……わたしの召喚術は? すごいでしょう。ワクワクするでしょう」
自己満足だけで、師匠に見せつけるためだけに転生者の魂を召喚して、虫けらのように消滅させて薄笑いを浮かべている王子の姿に。
西ノ国の導師は、戦慄を覚えた。
(やはり、この王子は危険だ……王破邪星の生まれの者は、国と世界を滅ぼす。なんとかしなければ)
セシウム王子は、導師の呪術で転生者召喚術の才能はそのままに。
聡明で、気品があり、賢者を尊敬する王子へと本質を変貌させられた。
「導師を尊敬します……ドキドキのわくわくです」
導師は王子の心に、慈愛の心と博愛の心を植えつけようとしたが。
王子の心の強い抵抗力で失敗して、セシウム王子は『一人の女性を一途に愛する』悪王子へと変わった。
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