フィフ・ヴァ・ドワール -4-

 禁忌の魔法。死んだ生命を再度、現界へと蘇らせる蘇生魔法。


 人類史 七回目の行使


 使用者 フィフ・ヴァ・ドワール

 対象者 サフィラ・フラ




 *


 多くの犠牲の上に発動した魔法。


 彼の感情が一つ一つ無理やり剥がれていくのを感じながら、彼は恋人の顔を思い浮かべ魔法を行使し続けた。


 「蘇生」


 彼は魔法の言葉を唱え、力を解き放った。恋人の身体はふたたび動き出し、彼女の目が開いた。


 *


 「……フィフ?」


 恋人の声が聞こえた。

 聞きたかった、もう二度と聞くことが出来ないと思っていた大事な人の声。彼女の声。


 だが、それでも嬉しさは湧き上がらなかった。


 待ち望んでいた声なのに、彼女のために多くの犠牲を強いたほどに愛していたのに。なぜか――喜べなかった。


 確かにおれは、愛していた。でも今は?――直前まで、愛していたことを俺は知っている。なにより自分自身のことだ。

 俺は、彼女を愛していたんじゃないのか?


 「ありがとう、フィフ。私を蘇らせてくれて。でも、どうしたの? あなた、何も感じてないみたい…」


 何も話さない俺のことを心配したのか、彼女は俺に寄ってそう呟いた。ありがとう、か。

 俺は、当たり前のことをしただけだ。俺がしたかった……したかったことをしたはずなのに。


 「そんなことないよ、俺も嬉しいよサフィラ」


 心にもないことを、自身に言い聞かせるように俺は彼女を抱きよせそう言った。



 

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