フィフ・ヴァ・ドワール -4-
禁忌の魔法。死んだ生命を再度、現界へと蘇らせる蘇生魔法。
人類史 七回目の行使
使用者 フィフ・ヴァ・ドワール
対象者 サフィラ・フラ
*
多くの犠牲の上に発動した魔法。
彼の感情が一つ一つ無理やり剥がれていくのを感じながら、彼は恋人の顔を思い浮かべ魔法を行使し続けた。
「蘇生」
彼は魔法の言葉を唱え、力を解き放った。恋人の身体はふたたび動き出し、彼女の目が開いた。
*
「……フィフ?」
恋人の声が聞こえた。
聞きたかった、もう二度と聞くことが出来ないと思っていた大事な人の声。彼女の声。
だが、それでも嬉しさは湧き上がらなかった。
待ち望んでいた声なのに、彼女のために多くの犠牲を強いたほどに愛していたのに。なぜか――喜べなかった。
確かにおれは、愛していた。でも今は?――直前まで、愛していたことを俺は知っている。なにより自分自身のことだ。
俺は、彼女を愛していたんじゃないのか?
「ありがとう、フィフ。私を蘇らせてくれて。でも、どうしたの? あなた、何も感じてないみたい…」
何も話さない俺のことを心配したのか、彼女は俺に寄ってそう呟いた。ありがとう、か。
俺は、当たり前のことをしただけだ。俺がしたかった……したかったことをしたはずなのに。
「そんなことないよ、俺も嬉しいよサフィラ」
心にもないことを、自身に言い聞かせるように俺は彼女を抱きよせそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます