第4話
涼祐とカフェで会ったその夜。
仕事から帰宅した母に、今日カフェで涼祐とバッタリ会った事を話した真唯。
「笹倉くんに?」
「うん。ホラ晃子が働いてる寄り道カフェでね。偶然、バッタリと」
なんといっても涼祐は母の高校時代の後輩である。彼と会った事を黙っておくのもおかしな話だと思って、真唯はこうして話したのだが。
ちなみにカフェで気になる男性客がいてウォッチングしてる事は話していないため、母は娘が葬儀で紹介する前から涼祐を知っていた事も知らない。
だが真唯としては、涼祐と会ったという話を母なら単純にひとつの情報として聞いてくれると予想していたのだが、実際はやけに驚いた表情を浮かべての「......会ったの...笹倉くんと」との言葉だった。真唯は不思議に思いながらも「うん」と返したのだが。
母は次に涼祐とどんな話をしたのか聞いてきた。
「読書の事や笹倉さん自身の事を話した。あ、でも笹倉さん自身の事は私がいろいろ尋ねたから答えてくれただけ。しつこく聞いちゃって笹倉さん気を悪くしたかな」
そう話すと次に母は「いろいろって真唯はどんな事を彼に聞いたの?」と聞いてきたので「地元はこちらですか、とか。あと、お母さんって高校時代どんな先輩でしたか?って事も聞いちゃった」と話した。すると、地元の〜のあたりでは安堵の表情らしきものを見せた母が、高校時代について涼祐に聞いた、のところで明らかに動揺の色を見せた。
「......それで?笹倉くん、なんて言ってた?」と恐る恐るという感じで真唯に尋ねてくる母。
それに対する真唯の返答は。
「みんなの憧れの的だったって話していて。更に自慢のお母さんだねとも言ってくれた」という内容だった。
それを聞いて母は安堵の表情を浮かべた。そんな母を不思議に思いはしたけど、その思考はとりあえず置いて真唯は途中だった夕飯の支度を再開する。とは言っても料理は出来上がってるのであとは皿に盛ってテーブルに並べるだけだ。
洗面所で手洗い、うがいを済ませた母が台所に戻ってきて夕飯の支度を手伝ってくれる。
そんな中で真唯は母からこんな質問をされた。
「今日笹倉くんと話をしてみて真唯自身、彼の事どう思った?」と。
「どうって?」
すかさず真唯は母にそう問い返していた。
「第一印象っていうのかな。安心出来る人だとか、しっかりした人だとか。逆に不安に思う人、だとか」
夕飯の支度も終わり向かい合わせにテーブルに座る二人。いただきますと手を合わせてから母は詳細を説明した。
真唯は味噌汁を口にしながら「安心出来る人だと思った」と答えた(密かに涼祐を推してる事は隠しておくけど)。
「どうしたのお母さん。笹倉さんはお母さんの高校の後輩なんでしょ。わざわざ私に聞かなくてもいい人なのはお母さんが一番よく知ってるじゃない」
「この場合、お母さんじゃなくて娘のあなたが笹倉くんと会ったんだから、どんな印象を抱いたのか聞きたかったの」
母の言い分に、なんかわかりそうでわからない真唯。
ふと、母に聞いてみる。
「もし私が笹倉さんの事を安心出来ない人って答えていたら、お母さんどうするつもりだったの?」
対する母の答えは
「万が一、あなたからそういった返答がなされた場合は、笹倉くんとはもう会うなって言ってるわね」であった。彼女いわく「あなたが安心出来ない相手なら、たとえ後輩だとしても以降は合わせるワケにはいかない」との事。
「私にとって一番なのは太一さんであり、あなたなんだから」
自分を大事にしてくれている母だから本気だ。本気で涼祐と会うなと言われていた。
自分はこれからも涼祐に会いたい。
改めて母に安心出来る人だと答えておいて(実際そうなのだから)よかったと安堵する真唯だった。
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