第21話
大声を上げながらゴブリンに向かって飛び出すと、それを待ってたかのようにゴブリン達が
囲まれた晶は、左に持ってた短い木刀で1匹のゴブリンの頭を殴ると、そのまま右手に持ってた忍者刀で斬り、クルクルと回転し始める。
そして、回転しながら集まったゴブリン達を斬り刻み、何とか10数体のゴブリンを倒し、そのまま駒のように回転した勢いを殺すことなく残りのゴブリンをも斬り刻む。
ゴブリンを一頭残らず斬り倒すと、休む間もなくホブゴブリンの5体が回転したままの晶を倒す為に集まり、そのまま切り刻まれて倒された。
──ホブゴブリンって馬鹿なの⁉
呆気に取られた晶は回転を止め、最後の1匹のホブゴブリンが消えて行くのを見詰めてしまった。
その隙をソルジャーゴブリンは見逃さず、呆けてる晶の前へと踊りだすと右の拳を振り下ろして来た。
驚いた晶だったが、咄嗟にこれを避けて難を逃れ、バックしテップして距離を開ける。
──油断大敵!
と、自分に対して憤り、ソルジャーゴブリンを見上げる。
獲物に逃げられて悔しかったソルジャーゴブリンは、再び右の拳を撃ち降ろすために振り上げるが、動作は遅い。
それを目視で確認した晶は、マニュアル通りに走り出し、ソルジャーゴブリンの左内腿に狙いを定め、右手の忍者刀で袈裟斬りにし、太腿の三分の一程を切り裂くと、そのまま駆け抜けてソルジャーゴブリンの背後へと回る。
「グギャァアアアアアッ!」
ソルジャーゴブリンは痛みで叫び声を発しながら、斬られた脚を庇うように膝を付く。
そこを見逃さず、もう片方の足の腱を斬れば良かったのだが、晶は早く終わらせたいと気が急いでしまい、マニュアルを忘れてソルジャーゴブリンの背中へと駆け上がると、無防備に成っていた首へと忍者刀で振り下ろすが、ソルジャーゴブリンの反撃に合い吹き飛ばされてしまう。
「ッアガ⁉」
吹き飛ばされた晶は、壁に頭を打ち付けて意識を刈り取られてしまった。
太腿の痛みを押して立ち上がったソルジャーゴブリンは、トドメを刺すために晶へと近寄ったが、そのすぐ後に
壁際で倒れる晶の側まで駆け寄ると、首に手をやり脈を確認し、生きてると分かると安堵の溜息を吐く。
そのまま晶を横にして寝かせると、サンタへと目配せしポーションを渡す。
サンタは受け取ったポーションを晶に呑ませると抱き上げてボス部屋から退出した。
それを見届けた玲は、ボス討伐の報酬として現れた宝箱へ向けて歩き出す。
「うーん。惜しかったけど焦っちゃたかな? やっぱりメンタル面を鍛えた方が早いかなぁ」
そう呟くと、玲は宝箱を開けて中身を取り出すと、ボス部屋を後にした。
■ ■■ ■ ■■ ■
晶はそのまま夜更けまで寝込み、目が覚めたのは深夜を過ぎた頃だった。
「ハッ⁉ しまっ⁉……いだっ⁉」
目が覚めた晶は自分が未だに戦闘中だったのを思い出し、焦って起きた瞬間後頭部の痛みで
「いだだだ……だ?」
目に入ってきたのは白いシーツで、痛む頭を片手で擦りながら、周りを確認した。
「私の……部屋、じゃない……か」
自分が修行の為に
──今何時…………。
壁に掛けられた時計を見ると1時だった。 ダンジョンボスの部屋へと入ったのが午前中だったから、随分長く寝ていた事になる。
何故自分は負けたのか、思い出そうとしたが、所々記憶が飛んでいてうまく思い出せなかった。
「いや、記憶出来なかった……だけだ」
自分の力の無さを改めて知り、落ち込む晶だったが、その為に修行に来たのだからと自分を奮い立たせ、ベッドから出る為に立ち上がろうとするが、痛む頭が邪魔をして、そのままベッドの上へと座り込んだ。
「っくそ! こんな傷なんかに!」
──負けられない
そう思って無理矢理立ち上がろうとした時、部屋の扉が開いて
「寝てなさい。 裂傷はないと言っても頭を打ってるのよ? ポーションを呑ませたけど、まだ無理しちゃ駄目。 今は安静にするのが貴女のやるべき事よ?」
そう言われてしまえば、従わざるを得なかった。
だが、悔しさは拭えずに涙が自然と溢れだしてしまう。 その姿を見られたくなくて、晶は布団を被ると声を殺して泣いた。
そんな晶の横に座ると、玲はポンポンと優しく叩き慰める。
「大丈夫大丈夫、焦る事ないのよ? 貴方は決して弱くはないわ。 ただ少し……いえ、凄く? 精神面が弱いだけ」
──ふぐっ⁉
慰めているのかトドメを刺しに来ているのか分からない
「ど、どうしたら私は! 強くなれますかっ⁉」
なるべく平然を装いながら質問すると、良くわからない返事が返ってきた。
「んー。 解剖する?」
──か、解剖?
その答えに、布団を被りながら困惑する晶だった。
巷で有名なペッタンおじさんの秘密の部屋。 深夜にピンポンダッシュ @takoyakikogeta
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