第14話 脚元が見えてなかったらしい
疲れてぐったりしてる先輩のスマホを弄り、先輩の自宅に連絡。
「はい、もしもし 糸盛ですが」
先輩のお父さん?お爺さん?が、電話口に出た。
「私は井道晶と申します、先輩……えっと秀雄先輩の学校の後輩です。 実は……」
ダンジョン一階層であった事を掻い摘んで説明し、迎えに来て貰えないかとお願いした。
「……分かりました、迎えに行きますので渋谷ダンジョンですよね? えっと、何処の交番?」
渋谷ダンジョンには出口が幾つか有って、出口には必ず交番がある。
私の家から自転車に乗って直接向かうと南南西の交番になるが、不審者に出会って、二度と会いたくない私は出入り口を変えて、真逆の北北東の出口から外に出た。
なのでそう伝えて電話を切る。
──先輩には悪い事をしてしまった……。
中学からの知り合いなのと、クラスにも馴染めなかった為に人が恋しくなってて、無意識に甘えてしまっていたのかも知れない。
せっかく私の為に色々してくれてくれてたのに……。
そう考えると、罪悪感で胸が傷んだ。
10数分程で待ってた交番付近にワゴン車が止まる。 助手先には何故か幼馴染のさっちゃんが座ってた。
「あっちゃん! 来たよー!」
「さっちゃん久しぶりー……ん?……来たよ? あれ? 会う約束してたっけ?」
「ん? してないよ?」
「ん? んん?」
何か話が噛み合わないというか、訳が分からないで居ると、ワゴン車のハッチバックが開けられて、どっかで見た事のあるお爺さんが出てきた。
──あれ、何処かで……?
なんか最近見たなーと思い出していると、お昼に食べたたこ焼き屋さんのお店の人だったと思い出す。
その人が何故さっちゃんと一緒に?
私の頭の中でハテナマークが乱立していく。
そんな私を余所にさっちゃんも車から降りてきて、私の隣で舟を漕いでる先輩に話し掛けてた。
「起きてー! 迎えに来たよー!」
さっちゃんは先輩をよく知ってる風だったので、もしかして彼女とか?
そう思ったが何となく聞けないでいると、後ろから私に話しかけてきた人が居たので振り返る。
「やぁ、晶ちゃん久し振りだね。 悪いけど秀雄のバイクがどこに止めてあるか教えてくれるかい?」
その人はさっちゃんのお父さんだった。
──何故おじさんまで此処に? っていうか先輩と知り合い?
困惑気味だったが、取り敢えず止めてある所に案内して、連れて行くと
「お、あったあった……よいしょ」
何とおじさんはバイクを持ち上げると肩に背負って歩き出した。
余りの事に驚いてしまい、先輩との関係性も聞けないまま、車の方へと戻る。
戻ってくると、先輩はまだ寝てるようで、さっちゃんがかなり強引に肩を揺らして叫んでた。
「ちょっと! 本気で起きてお兄ちゃん!」
「うーん……。さち? ……眠い、起きれない……担いでって」
「無茶言わないで! 筋肉達磨みたいなお兄ちゃんなんだから担いで行けないんだよ!」
そう叫んでた。
そこで私は初めてさっちゃんに兄がいた事を知り、先輩がさっちゃんの兄だと知る。
「え、先輩の妹だったのさっちゃん……」
「え? え? あれ? 知らなかったの⁉」
私がそう言うとさっちゃんだけで無く、おじさんもたこ焼き屋のお爺さんも驚いていた。
「あたしと小さい頃遊んでた時、一緒に居たのに憶えてないの⁉」
本当に? と、何度も言われたが、私の記憶では中学の時に知ったとしか言えなかったので、そのまま伝えた。
皆が驚愕の事実を知って固まる中、先輩が目を覚まし、バツが悪そうにボソリと言う。
「因みに幼稚園も小学校も一緒だったし、小学校の運動会の時は五年間ずーっと同じシートの上で昼飯も食ってたぞ……」
「え……」
そう言われればと、過去の記憶に知らない男子が同じ弁当を食べてた記憶が蘇る。
私の運動会には両親は来れず、2年生の頃からさっちゃんのご両親が来てくれていて、お弁当を食べさせて貰ってた。 結構な量のお弁当だったので喜んで食べてた記憶もある。
「あ……もしかして、私以外にも面倒みてる子が居るなんてさっちゃんの両親は凄いなぁって思ってたのが、勘違いだったって事っ⁉」
私がそう言うと、おじさんは苦笑いしてるし、祖父さんは腹抱えて笑ってるし、さっちゃんは先輩を不憫な子として見てるし、中々に衝撃的な後景が広がっていた。
「おまっ……ひど……」
「お兄ちゃん……がんばれ!」
「さち、……黙ってろ」
取り敢えず、色々謎が解けて若干スッキリしたので帰ることにして、私も車に乗せて貰った。
その日は夕御飯を食べていきなさいというので甘えさせて貰い、家の方にも一応連絡だけしといた。
父も母もめっちゃションボリした声をしていたので、後日ケアしなければならないが、まぁ大丈夫だろう。
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