第4話 忍者は索敵能力があるのですよ



 夏休み四日目、只今の時刻午前3時。

 おはよう御座います。

 昨日の人間観察は至って普通の日常でした。

 特に何も特筆すべき事はありません。

 今朝は少しゆっくり目で活動しようかと思い、暇潰しに自分のステータスを眺めていたんですが、少し不可解な数字が増えていたのです。


 ━━━━━━━

 名前 井道いどうあきら

 年齢 16歳

 職業 学生

 メインスキル 忍者Lv2

 サブスキル 体力向上Max

 気配遮断Lv3

 気配察知Lv1

 忍び足Lv2

 短剣術Lv1

 投合Lv1 

 

 称号 体力馬鹿、体力向上を極めし者

 ━━━━━━━

 私のスキルの体力向上以外は軒並みLv1だったのだけど……。


 魔物も1匹も狩って無かったのに、何故かLvが上がってるんです。


 うーん……。考えても分からないですね。 この件は保留にします。


 さて、まだ3時20分ですが、準備だけしときますかね。


 昨日補導された時刻は3時20分でした、それから逆算して3時40分に家を出れば、補導される時間には4時になってる筈。たとえ、4時以外に外に出てても捕まる時間が4時なら大丈夫!


 取り敢えず朝食代わりにCalorie Memberを食べて腹拵えです。

 探索者の味方のCalorie Memberは栄養成分が良く、2本も食べれば1食分のカロリーが補えます。 水分は持ってかれるんで水は必須ですけど。


 リュック良し!兵糧良し!武器良し!防具良し!体調良し!

 さぁ、行きましょう!


 って、玄関開けたら何故か門の前に警官らしき不審者が……。

 



 「……何か家に御用ですか?」

 「井道、如何した? 出掛けるのか?」

 「……いいえ? 外から気配がしたので確認しに出て来ました。 不審者が多いのでフル装備です」

 「ほぉ、そりゃ関心だな。 流石養成学校の生徒だ。 だが、安心して良いぞ? 俺は警官だ。 君の代わりに見守っているからな」


 「こんな所で油売ってないで凶悪犯の取締でもした方が有意義ではないですか?」

 「そっちはそっち専門が居るから大丈夫だ。 まだ4時じゃないし部屋に戻って良いぞ?」

 「…………ちっ」バタンッ!


 ──やはりストーカーの類だろ!

 気配まで殺しやがって!


 流石に気配遮断をしていても、目の前に存在していれば見付けられるのが、気配遮断の悪い所である。


 たった20分なのに、やけに長く感じる……。

 ドアスコープから外を見れば、不審者警官が、ニヤけながらこっち見てやがる……。

 ──くそ……探索者上がりか。厄介な……。


 探索者で活動できる年齢はそう長くない。 高ランクに成れば成るほど短くなる。 大金を掴み安いって見返りはあるので、目指す人は後を絶たないが、それなりのランクに上がらないと稼げない。


 稼げないと歳を取っても肉や毛皮の採取等をして稼ぐ方法もあるけど、腕っ節が強く、外に居る不審者警官みたいな気配察知能力が高いと、警官にも成れる。 潰しが効くというのはそう言う理由です。


 基本的なランクは下から

 P ペーパーって意味で私の様な学生のランクがコレです、仮免許探索者のギルドカードが紙で出来ているかららしいです。呼ばれ方もそのまんまペーパーです。 

 次はUでウッド。 コレもギルドカードが薄く削った木材で出来ているのでそう呼ばれてます。 呼び方もそのままのウッド。

 次がIでアイアン。コレもギルドカードが鉄材で出来ているから。呼ばれ方は鉄級てっきゅう

 基本的にギルドカードの材質で呼ばれてます。

 次が銅で銅級。

 次は銀でシルバーと呼ばれてます。

 最後に金で呼び名はゴールドです。

 紙、木、鉄、銅、銀、金と六通りしかありませんが、それぞれのランクには五段階の格付けがされてまして、PならP+1と読みますが、カードには星のマークが打ち込まれます。

 勿論星の多い方がランクは高くなります。 ランクの上げ方はクエスト達成率と還元率で変わりますが、基準はギルドマスターの裁量次第ですね、多分コネとか? 補導が少ないとか、マナーが良いとかって意味でも星のマークは増えたりしますけど、それで上がるのは主にᏢランクだけです。

 貰った星は酷い行いをすると半分づつ減ってきます。

 星のマークを付けたり消したり出来るスキル持ちがいるみたいで、先輩が月毎に増減してたのでよく知ってます。


 さて、時計の針は4時ですので出掛けようとしたのですが、此処で思わぬ珍客が来てしまいました。


 「自称兄ですか……朝っぱらから何しに来たのですか?」

 「誰が自称兄だこら。 元気にしてたか愚妹」

 「何ですかその具米て、新商品のおにぎりですか?」

 「ハイハイ面白い面白い。 話があるんで部屋に来い」


 「私にはありませんけど?」

 「良いのか? 補導された事バラしても」

 「ほら!兄上? 行きますよ! 何ボっとしてるんです? 帰るんですか? お止めしませんよ?」


 「は?……いや、お前今玄関に……いや、何でもねぇ。 体力馬鹿は脚も速いんだったな……」


 何やらぶつくさ言ってる自称兄は靴を脱ぎ始めた。そんな兄を私は階段の上から見下ろしてる。


 ──相変わらず鈍いわね。


 これで本当に兄妹なのかと、疑うのは仕方ないと思う。



 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る