第4話 04 - でてこないで! -
04 - でてこないで! -
「ん・・・寝ちゃってた・・・またあの夢、・・・昔はほとんど毎日見てたけど、最近はあまり見なかったのに・・・ステーションに降りたからかな・・・ベンダルに襲われて、寄生された時の夢・・・」
僕は鏡の前に立って自分の身体を眺めました、・・・手首と右の足首には金属の枷・・・首にも冷たい首輪、左足の黒い義足・・・
手首の枷は・・・最初は重くて嫌だったな・・・、首輪も、鎖が邪魔だし・・・この服も・・・大嫌い、薄くてサラサラ・・・動きやすくて肌触りがいいっていう人もいるけど、普通の可愛い服を着たいよ。
何年か前、医療映像でこの服を20年着てた人が亡くなって・・・服を脱がせて、・・・その中を映してたけど、・・・皮膚が紫色に変色して、・・・ドロドロ・・・服を剥がす時、粘液みたいなのが糸を引いて・・・網目状に皮下脂肪や血管が黄色く表面に浮き出してた。
少し時間が経つと火傷みたいに爛れていって、水脹れがいっぱい、・・・僕も・・・僕の身体もあんなになってるんだって思ったら・・・気持ち悪くなって吐いちゃった、・・・見るんじゃなかったって後悔して・・・いっぱい泣いたな、・・・あんなの見せられたら、この服絶対脱げないよ・・・鋭利な刃物も通さないように出来てるけど、何かの間違いで切れちゃったら、・・・あぁやだ!、そんなの想像しちゃダメ!、また気分が悪くなって来た・・・。
「おっと・・・おじさんとレストランで流動食じゃない普通の食事したから今日は固形の便が出るだろうな、下剤飲んでおこう、固形物が防護服の中で出ちゃうと気持ち悪いし・・・、それか・・・洗浄の時に一緒にしちゃおうかな」
「わ・・・体が熱い・・・今、・・・虫に体液を注入されたかも、・・・やだ、体が疼いて・・・んっ・・・」
僕は慌てて椅子にかけてあるタオルを掴みベッドに潜り込みました、これから少しの間地獄のような苦しみに襲われるのです、タオルを口の中に押し込み唇や舌を噛み切らないように、そして声が漏れないように・・・身体を横に、お布団のシーツを掴んで、膝を抱えるように丸く包まります。
頭からお布団を被り、震えながら僕の身体の中に居る幼虫が動き回るのに耐えるのです、幼虫は休眠中だけど・・・時々身体の中で暴れるの・・・快楽物質や体液を撒き散らしながら。
胃が刺すように痛い、・・・お腹も・・・子宮の中でも動いてるのが分かる、気持ち悪い!、僕の身体の中で異物が一斉に動き出すおぞましい感覚、・・・お医者様の話だと幼虫が目覚めたらこの程度では済まないって・・・もう嫌だ、どうして僕がこんな目に・・・。
そして一番辛いのは
「#$%+*#!!」
僕のお股の穴の中に根を張っている幼虫が動いて少しだけ外に!、いやだ!、出て来ないで!、・・・防護服を着てるから中がどんなに痛くても、痒くても、奥まで指を入れられないの!、防護服の上から強く押さえて、両足に力を入れてきつく閉じて、・・・それでも指が届かない奥で蠢くの。
シーツを破れるほど強く握りしめても耐えられない、身体が小刻みに震えて・・・、ビクン!ビクン!って何度も痙攣する度に首輪に付いた鎖がチャリ、チャリって音を立てて、涙や鼻水、汗と涎でシーツやタオルに染みが・・・幼虫に寄生されてからもう何度も体験した苦痛、お願い、早く終わって・・・もう耐えられない!、・・・口の中のタオルを強く噛み締めてガタガタと震えながら激しい痛みと気持ち悪さ、・・・それから・・・気持ち良さに耐えるの。
「んぅ!、やぁだぁ!、痛い!、気持ち悪い!、・・・いやぁ!、もう許して!、・・・あぁぁぁっ!・・・」
毎回力尽きて最後は気絶したり、そのまま動けずに泣きながら眠ったり、・・・これを・・・こんな事を僕は死ぬまで繰り返さなきゃいけないの?・・・。
今日は幸い気絶しなかったけど、動けない、身体に力が入らない、涙で片方しか見えない視界がぼやけて・・・。
「ベッドの上で暴れたから眼帯も外れちゃった、・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」
痛くて・・・身持ち悪いのに気持ちよくて、・・・おしっこ漏らしちゃった、防護服の中が気持ち悪い、・・・でも動けない、疲れた・・・もう何度死のうって思ったかな、・・・でも僕が死んだらリンちゃんが絶対傷付くから・・・、僕のたった一人のお友達・・・だからまだ死ねないの。
「・・・朝?・・・じゃないや、・・・真夜中・・・」
「動けるかな・・・あ、・・・動ける・・・んっ・・・やだ・・・まだ身体・・・ビクン!って、・・・もう幼虫、動かないよね・・・あんなの二回も続けてなんて絶対に嫌」
僕は身体をベッドから起こして、落ちた眼帯を拾い上げ・・・うわ・・・背中が汗やおしっこで気持ち悪い、・・・動くたびに「クチャ、クチュ・・・」って、・・・密閉されてるから防護服から外に漏れ出す心配はないけど・・・早く洗浄機に・・・。
「あぅ」
左足がガクンってなって、床に跪いて、・・・義足の調子悪いの忘れてた。
「そうだ、杖がないと・・・僕は・・・歩く事も出来ないんだった、もう何十年にもなるのに・・・ドジだなぁ・・・ははは・・・」
立ち上がると防護服の中で背中からお尻、そして足に向かって流れるドロリとした嫌な感触、僕のおしっこと汗と、・・・愛液、それから・・・想像したくないけど、僕の本当の皮膚が溶けて腐ってドロドロになった膿のようなもの・・・。
「嫌!、汚い・・・汚いよぉ、・・・うぅ・・・早く綺麗にしなきゃ・・・ぐすっ・・・」
酷いだるさの残った身体で洗浄機に辿り着いた僕は横になり、腰についた2個の挿入口に洗浄機のプラグをセットします、・・・あ、音楽が流れてきた、すごいな、これでリラックスさせるんだ・・・マッサージ機能もある・・・。
宿主用の高温殺菌仕様であることを確認してスイッチを入れると片側から洗浄液が防護服に流れ込んで内側に満たされます、そこで僕はいつも身体をモゾモゾと擦り合わせて汚れを落としてるの、だってこうすると綺麗になった気がするから・・・。
ここのホースは透明じゃ無いから気持ち悪くない、さすが高級ホテル、配慮が行き届いてるなぁ、僕の宇宙船のは透明だから汚物や・・・生理の時は血が見えちゃうの・・・、いつものように洗浄と一緒に排泄、・・・ふぅ・・・さっぱりした・・・この最新式の装置は4回も洗浄してくれるんだ・・・いいなぁ、僕のは2回、でも4回もしてたら洗浄液がすぐに無くなっちゃう、ここのに慣れたら宇宙船の奴が物足りなく感じるだろうな・・・。
洗浄で服の内側が綺麗になったから次はシャワー室へ、汗をかいちゃったから頭と身体を洗うの、宇宙船は使える水が限られてるから贅沢に水を流すシャワーは久しぶり、全身を綺麗にします。
そして全自動ドライヤーで髪を乾かした僕は今ベッドに横になってフルーツ味の流動栄養食を飲みながら通信端末で星間放送を見ています、多言語字幕があるから言ってることがわからなくても大丈夫、画面に映っているのは宇宙ステーションじゃない本物の惑星にある陸地に住んでいる人のお宅訪問番組、広々とした草原が広がるお庭、大きなお屋敷、この人凄いお金持ちだぁ・・・、あ、動物も飼ってるのか、可愛いな・・・って、この人レベルスのおじさんじゃん!。
「あー・・・すっごい快適!、身体が綺麗になって、シーツはちょっと汗と涎で濡れちゃったけど、ふかふかのベッド、これが高級ホテルの暮らし!、あぁ、いいなぁ、憧れるなぁ・・・僕みたいに低ランクのハンターじゃどんなに頑張ってお金稼いでもこんな暮らしは出来ない、・・・むぅ・・・世の中不公平・・・」
枕にぽすって顔を埋めて深呼吸・・・洗剤の匂い、いい香り・・・そうだ!、この時間は向こうは・・・朝だね。
「・・・むふふ、リンちゃん驚くかなぁ」
ピッ・・・カイセン・・・セツゾク・・・ヨビダシチュウ・・・
「・・・はい、え、エルちゃん?、ど・・・どうしたのその絵に描いたようなお金持ちっぽい格好!、それにそのお部屋!」
「やぁ、リンちゃん、ご機嫌いかがかな?」
僕はソファにゆったりと座って足を組み、お金持ちが着てそうなホテルに備え付けのバスローブを羽織って・・・片手にはワイングラス
「ご機嫌は・・・いいけど、ってか今寝起きだったけどいっぺんで目が覚めたよ!」
「びっくりした?、実はね・・・」
「へー、そんな事があったんだぁ、・・・でも嫌だな・・・宿主の人にそんな酷いことを、・・・うぅ・・・ごめんね・・・私のせいでエルちゃんが酷い目に・・ぐす・・・」
「わー、もう気にしないでって言ってるのに、・・・悲しませようとして通話したんじゃ無いんだけどなぁ、・・・お陰でボロい宇宙船がピカピカになりそうだよ、とにかくどう?、この超高級ホテル!、高そうなワイン!」
「うん、なんか凄いな、・・・それに浮かれてノリノリではしゃいでるエルちゃんもすごいけど、それにレベルスカンパニーってイシス星の周辺だけじゃなくて別星系でも手広くやってる巨大企業だよね、その社長さんとエルちゃんのお父さんが知り合いだったなんてね・・・」
「僕もびっくりだよ、見た感じ顔はいかついけど優しそうな人だったな、そのおじさんには僕の事であまり迷惑かけたく無いから今回の宇宙船の改修が終わったらそれっきりになるだろうけどね、多分向こうもそんな感じだと思うよ」
「でも困った事があったら頼れって言われたんでしょ、お言葉に甘えて頼っちゃえばいいじゃん」
「そうは言ってもねー、僕が人付き合い苦手なの知ってるでしょ、出来るだけ人と関わりたくないの、今日の豪華なレストランでのお食事だってすっごい緊張したんだから、もうね、住んでる世界が違う!、みたいな?」
「そっかー、私もそんなレストラン連れて行かれたら緊張するもんね、あ、それからね、近いうちにローゼリア星のステーションに来る予定ないかな?、エルちゃん私のお誕生日にプレゼントくれたでしょ、もうすぐエルちゃんのお誕生日だから、うちでパーティしないかってお父さんが・・・」
「そういえばもうすぐだったね、でもその頃は運送のお仕事でまだランサー星系に居るかなぁ、残念だけど・・・おじさんには謝っておいて、近いうちに必ず会いに行くからって・・・」
「そう・・・じゃぁ仕方ないね、プレゼントはその時に渡すよ、前に送ったら事故で届かなかったからね」
「確かにあちこち行ったり来たりしてる宇宙船宛に荷物送るの難しいからね、そうしてくれると嬉しいな、・・・いつもありがとうね、リンちゃん、じゃぁリンちゃんも用事あるだろうからこの辺で通信切るね」
「うん、またね」
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