第22話 話がしたい

 足を止める。

 オレンジや青、カラフルなスプレーで描かれた落書き、コンクリート本来の色を失った外壁。そこは二人横に並んで肩が触れ合うくらいの狭い路地。

 行き止まりではない。けれど、来た道以外どこも瓦礫や蔦などで通れそうになかった。小さな子どもなら通れそうだけど。



「本当にここで合ってるの?」


「………来るぞ」



突如、ストリートチルドレンが壁の上や蔦の影から現れた。



「半信半疑だったけど、まさか本当にここだったとはな」



一人の男の子が僕らの前に立ちはだかった。黙ったまま睨みつけてくる。



「お前らのボスに会いたい」


「そんな奴はいない。ここのリーダーは俺だ。用が済んだなら帰れ」



殴りかかろうとしたエンを制止する。



「話がしたいだけなんだ。お願い出来ないかな」



ボムを全て地面に置き、エンにもそうするよう促す。すると彼は背後にいた子どもに指示を送り、数人がどこかへ姿を消した。



「逃げ道もないし、武器もどっか持って行かれちまった。ボスだってまともに話しの通じる奴じゃねえぞ」



どうやらエンはここのボスと面識があるようだった。



「危険なのはわかってる。でもあっちだって条件は同じはずだ。こちらが先に戦意がないことを証明しないと」


「あっちの方が断然有利だろ。こんだけ子分連れてりゃ」


「ここまで統率が取れてると確かに。だけど、僕らは戦いに来たわけじゃないし、それは今十分伝わったはず。彼らの良心を信じよう」



 小声で会話していると、黒髪をたなびかせながら一人の少女がアサルトライフルを背負って颯爽と現れた。



「なぜ俺を呼び出したエントゥジアズモ」


「よお久しぶりだなスキアー」


「隣の奴、名前は」


「無視かよ」


「僕はミンストレル。君に話しがあって来た、戦うつもりはないよ」


「……エントゥジアズモ《こいつ》よりは話が出来そうだな。お前の話しなら聞いてやってもいい」



前にもこの二人は交渉か何かをしたことがあるのだろうか。エンの表情からして、恐らく決別したんだろうな。エンは血の気が多いし、彼女は無愛想みたいだから。



「最近僕を調べさせるよう子ども達を使って調査か何かをしてるの?」


「新人プレイヤーが来たことはニトロから聞いた。だからどんな奴か、どう倒すか朔を練るために探った。それだけ」


「そうなんだ、答えてくれてありがとう」



話は終わりか、と言って踵を返そうとする彼女の方に触れる。



「ちょっと待って。どうして子ども達にやらせたの?」



エンに止められたけど、そのまま彼女に詰め寄る。

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