第23話 恩人
僕らが買い出しに行くのに使ってる道はあまり治安がいいとは言えない。子ども達を快く思わない大人だって沢山いる」
お前には関係ないと睨みつけられた。
「君の身の安全もあるけど、同じ危険があるなら君自身が行動すべきだ。こんな幼い子ども達を支配して、自分が怪我を負わないために利用して危険に晒すなんて、君は何とも思わないの?」
彼女が「それは…」と同様した瞬間、ガラス片が頬を掠った。
「大丈夫かッ。どこから飛んできた」
同時にマンホールの蓋が開き、そこから子ども達が這い上がって来た。目にもとまらぬ速さで武器を構え、僕らを何重にも囲う。
「大丈夫」
回りを囲む子ども達が持つ武器ひとつひとつの殺傷能力は低いから、攻撃されても何とかかわせば大怪我になることは避けられそうだ。
彼女が動揺したままということは、これは彼らの意思で?
「……そうか」
「なんかいい案でも思いついたのかよ」
丸腰なことに不安と苛立ちがあるのか、エンは少しだけ声を荒げて僕に尋ねた。
「違う。エン、今から何があっても攻撃してはだめだ」
「はぁ?」
包囲網の一人、震えながら刃を握る女の子の手からそっと武器を抜き取る。
「君たちにとって彼女は師歯医者なんかじゃなくて、きっと恩人なんだね」
女の子から取り上げた武器を置き、優しく抱きしめる。
大丈夫、僕らは彼女を殺さない、彼女はいなくならない、と安心させるように背中を優しくたたく。
女の子は静かに泣き出し、周りもそれを見て堰を切ったように泣き出した。しゃくりあげる子ども達の頭を撫でると、わらわらと髪の毛が抜け落ちた。この子たちの現状はどれほど過酷なものなのだろうか。
「わかったような口をきくな」
再びガラスの破片が、今度は腕に突き刺さる。飛んできた方角を見上げると、壁の上に先程他の子どもに指示を出していた男の子がいた。
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