第19話 エンの仲間

 そんな僕らを静かに見守ってくれているアジトの人たち。



「エンの仲間を紹介してほしいな」


「そうだな。おいお前らこっち来てくれ」



最初にやって来たのはカジノにいた、エゴイストさんだ。



「日中会ってるけど、一応な。こいつはエゴイスト、アジトでは最年長だ」


「よろしく。エンと君以外ここには住人しかいないから安心してよ」



次にエンはメガネをかけた華奢な青年に視線を向けた。



「で、こいつがクレバー。武器のカスタマイズの天才」


「褒めたってフィナンシェぐらいしか出ないぞ」



苦笑した彼は真面目そうで、エンやエゴイストさんに比べると小柄だ。



「こいつがさっき話したミンストレルだ。信用出来ると思ったから連れて来た。今日から俺たちの仲間だから色々勝手がわからねえことは教えてやってくれ」


「よろしくお願いします。エゴイストさん、クレバーさん」


「そのエゴイストさんって呼び方、やめてくれる?。一気に老けた感じがしていい気がしないんだよね」



笑顔だけど目が笑っていない状態でバッサリとそう告げてくるものだから、少しだけ怖かった。



「ごめんなさい…」


「怯えないで?。ほらほら、こっちのクレバーも呼び捨てでいいって言ってるよ?」


「何も言ってないけど。まあ自由に呼んでくれて構わないよ」



 信頼し合える仲間に囲まれて、エンは幸せだろうな。この世界に連れて来られる条件が何かはまだわからないけれど、僕と彼は似ても似つかない。彼はキッと現実世界でも人から慕われて、愛されるような人間な気がする。



「何だか憧れるなあ」


「何に?」


「こういう人たちに出会えたこと。僕にはなかったから羨ましいよ」



何言ってんだ、といった表情で不思議想に見られる。



「お前もそこにいるじゃん」



ぼくが要領を得られず首を傾げていると、クレバー君がため息をついた。



「この単細胞の代わりに言うと、君だって僕らに出会えてるってこと。憧れた、羨ましいと思ったそれをもう手に入れられてるってこと」



エゴイストさんが僕の方に手を置いて目じりを下げた。



「付き合いの長さはこれから埋めて行けばいい」



エンとクレバー君もその言葉に頷いて、目頭が熱くなるのを感じた。

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