第17話 君の虜に

「大丈夫?」


「ああ、ごめん」



自分のことを考えてくれていなかったことに怒っているようだ。



「ごめんね。君のことは多分、知っているよ。アイロニーだよね」



 ロコが教えてくれたプレイヤー情報に確かこの子のようなプレイヤーがいたはずだ。確か男を虜にするというプレイヤーで、所持していた武器はポイズンだった気がする。

 このままだと多分、殺される。甘い言葉を吐いて蠱惑的な瞳をしているけど殺気を隠せていない。形勢逆転しないと、ここで死んだらきっとエンを悲しませてしまう。



「えっ」



 彼女の足を掬うように抱きかかえ、先程までいたカウンター席へそっと座らせる。少しだけ肋骨が痛んだけど、今はそれどころではない。



「な、何するのよ」


「ごめんなさい。僕よりきっと彼らの方が君の望むように動いてくれるよ」



悔しそうな表情。だけど一瞬、今にも泣き出しそうな顔に見えた。自分を否定されたように感じちゃったのかな。傷つけてしまっただろうか。



「きれいだよ」


「なによ急に。気が変わったの?」


「いや。ただ、殺気がなければ僕はあのまま君の虜になっていたから」



驚いたような顔をする彼女を他所に、店主にリンゴジュースを頼んで足早に元の席に戻る。運ばれてきたグラスを火照る頬に当てた。



「何言ってるんだろう、僕」



そこへ鼻歌を歌いながらエンが戻って来た。



「どうしたんだミンストレル。顔赤いぞ」


「今そこに触れないで。お願い」


「お、おう?。あ、アイロニーがいるな。あいつのどこら辺がいいのか俺にはさっぱりだ」



増々顔が赤くなってエンに熱でもあるのかと心配されてしまった。思ったよりエンが鈍感で助かった。

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